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インタビュー

2008年04月08日

最終消費者に「塗膜」を売る

ヤブタ塗料
社長 薮田勉 氏

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創業100年を迎えた老舗塗料ディーラーのヤブタ塗料(神奈川県小田原市)。閉塞感が高まる塗料流通の中にあって、「真の顧客は消費者」との視点に立ち新たな展開に乗り出した。販売の基軸は半製品の塗料でも、加工サービスの塗装でもなく、完成品としての「塗膜」。「塗膜業界を確立することで産業のボトムアップが図られる」と提唱する薮田勉社長に聞いた。
「塗膜業界の確立」を提唱されていますが。

ご存知のように塗料は半製品であり、塗装という加工作業を経て初めて完成品としての『塗膜』になる。つまり塗膜こそが、我々の業界が対外的に提示できる完成品なわけだが、そのことを明示してこなかったため、世間一般では『塗膜=完成品』との認識はない。完成品を持ち得ない業界であったため、いつまで経っても最終製品に対するいち素材、あるいは加工サービスといった従属的な立場から抜け出せない。付加価値の高い業界へと変革するためには、塗膜こそが完成品との認識を強く持ち、行動していくことが必要ではないかとの考えだ。

また自動車業界、家電業界、化粧品業界のように、造る人、売る人、加工する人、その他業界に従事するすべての人を包含する用語として完成品の呼称を用いるのが一般的。そういった意味でも『塗膜業界』と呼称するのが最適ではないか。

そのような考えにいたった動機を教えて下さい。

今から5- 6年前になるが、中小企業支援法の活用を思い立ち、革新性が求められることから『塗膜販売業の確立』を事業テーマに申請を行った。このとき、塗膜という用語について深く再考したのがきっかけ。『塗膜=完成品を売る』との発想に立ったとき、色彩や機能などその商品パフォーマンスを求めている『真の顧客は消費者』であるということを改めて確認することができた。それと同時に自社のやれること、やるべきことが明確になり、それまで自分の商売に対して抱えていたジレンマが一気に氷解した。塗料販売業に従事して30年以上になるが、ユーザーペースでの仕事に振り回され、与信や回収を心配し、利益率の低い商売に甘んじている。実態としては家業の域から脱せず、ビジネスとして成立していないとのジレンマを絶えず抱えていた。塗膜販売のスタンスに立つことでそれらが一気にクリアになり、ビジネスとしての将来展望を持てるようになった。

塗料販売業の業態変革ということですか。

従来の製・販・装の枠組みの中では中間業者の域を出ることができなかったが、『塗膜商品』を『最終消費者』に提供するとの視点に立つと、その担い手としてのポジションが浮かび上がってくる。というのも塗料販売店は立場上、多くのメーカーの製品情報を持ち、一方で建築から工業用にいたる幅広い業者との取引がある。更に仕事の経験で培った塗膜設計(仕様作成)力が備わっており、しかも公平な見地で仕様を組むことができる。つまり最終消費者にとっては半製品でしかない『塗料』と、加工作業の『塗装』を最適な『塗膜商品』にして提供するオーガナイザーとして最も適した業態。加えて、長年にわたり地域で"看板"を張ってきた信用力は、対消費者市場を開拓していく上で大きな財産に転嫁することができる。

事業としてはどのように落とし込んでいるのですか。

具体的には現在、住宅の塗替えビジネスの確立に注力している。当社の提供する『塗膜商品』が消費者の財産である住宅を保護し、色彩や機能などのパフォーマンスを通じて資産価値を高めるとの方向性。事業としてはまだ緒についたばかりで自慢できるほどの成果は上がっていないが、営業から施工(管理)、アフターにいたる一連のプロセスに関してさまざまなトライアルを行い、ノウハウを蓄積している段階。商圏の市場性から換算して、年間200棟の受注を当面の目標として活動している。

消費者に直に向き合い、塗膜という名の完成品(最終製品)を販売する以上、品質の担保は避けて通れない問題。このため、事業を立ち上げるに際して保証システムを確立し、最長10年間の塗膜保証体制を構築した。最終製品を販売するには、単に川下に進出するというだけでなく、相応のリスクも負わなければならないということだ。また、取引先との軋轢もないわけではなかった。しかし塗料販売業の将来ビジョンのもと強い信念を貫き、現在ではイコールパートナーとして当社物件の施工部門を担ってくれる取引先も増加している。

塗替えビジネスでの勝算は。

住宅ストック市場は工業塗装需要のように海外移行による空洞化はない。加えて、『200年住宅構想』に見られるように、住宅の長寿命化は社会的なテーマとして今後ますます重要視され、それに伴って塗膜ビジネスのポテンシャルは間違いなく高まる。当然、競争も激しくなるだろう。先ほども述べたように、消費者にとって最適な塗膜を提供し得るオーガナイザーとしてのポジションを鮮明にするとともに、消費者の育成と言ってはおこがましいが、塗膜の価値を認識してもらうための啓蒙活動にも力を注ぎ、差別化を図っていく。現在、平塚営業所内に一般消費者を対象とした研修施設を設けて定期的な講習会を開催。ここでは塗替えリフォームの基本的な情報提供とともに、実際の塗装体験などを通じて塗膜プロセスの価値を理解してもらうよう努めている。

今後の展開については。

完成品としての塗膜への認識を浸透させることで産業の社会的ステイタス向上につながるとの考えから、『塗膜』・『塗膜業界』という言葉を普及させたい。当社だけでは限界があるが、そうした考えに共鳴してくれる業界企業、全国の同業者と意識の共有化、更にはネットワーク化を図って高めあっていきたい。

ありがとうございました。

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