インタビュー
2008年11月20日
長期的メンテシステム構築が鍵 長寿命化へ向けた塗料・塗装の役割 独立行政法人建築研究所 材料研究グループ長 建築生産研究グループ長 本橋健司氏(建築特集2008〈2〉から)
独立行政法人建築研究所
材料研究グループ長・建築生産研究グループ長 本橋健司氏
例えば、土木分野の橋梁はどのように維持するかというと、塗装で維持保全しているわけです。定期的に劣化診断をして塗替えを行うことで鋼構造物は維持できるという考えが浸透しています。そういう意味で塗装は重要視されています。住宅建物の場合も同じです。建物を長く持たせようとした場合、例えば鉄骨系の工業化住宅では防錆塗装が命なわけです。あるいはコンクリートの住宅にしても、塗装メンテナンスをきちんとしていれば躯体は長く持ちます。それがまず塗装の考え方です。
200年住宅というのは良質なものを長く使うという考え方なので、塗装が200年住宅を支えるためにどうするかというと、塗装が200年は持たないとしても一定の時期に適切な塗替えを続けていくことが大切になってきます。
ペインテナンスキャンペーンでの啓蒙活動や高耐候性塗料の開発・普及などを続けていけばよいと思います。ただ、建物の長寿命化のためには将来的な観点からの塗替え・維持保全を確実に実施する保証体制などのシステムを構築することがより一層重要です。取り組むこととしてはそこの部分をどう形として構築するかに尽きます。
まず、200年住宅の考えから言うと、質の良い住宅を作り、長く大切に使おうということです。最初から35年持てばよいとか、間取りの変更もできなくて1世代しか住めない安い建売住宅のような汎用的な建物ですとS&Bとなり資源のムダになってしまいます。そのため、塗装の面でも安い塗装を何回も塗り替えるのではなく、質の良い塗装、付加価値の高い塗装が必要です。優れたカラーデザインや街並み形成に調和している塗装、また例えば光触媒や太陽光高反射塗料のような機能的塗装で仕上げることで施主が住宅に愛着を持ちメンテナンスがしたくなるモチベーションを与えます。そういう愛着を持たせるためのプレゼンに注力してほしいですね。我々としても技術基準は作りますが、決めるのは施主ですからそこへのアプローチが大切です。
塗装の1つのメリットは塗替えが容易ということです。デザインも可変的ですし、新しいイメージを作りやすいわけです。自分の家の表情にも愛着が持てるはずです。『塗り替えれば建物が長持ちして得だ』という技術面だけでなく、愛着を持たせるような動機付けが必要だと思います。建物への愛着から自然とメンテナンスへとつなげていけばよいのです。
200年住宅というのは、フッ素樹脂塗料や無機系塗料などを改良して50年持つようにすればよいという単純な話ではないのです。もちろん耐候性が優れているに越したことはないですが、それよりも補修システムが構築されること。そして、そこには施主も関わっていけるシステムが必要になってきます。劣化診断だけでなく上述したような愛着が持てる提案をする必要があります。言うことは簡単で実現させることは大変だとは思うのですが、ただ実現できればそれが200年住宅を支える塗装の根幹になると思います。
技術的にみると、消費者へのサポート深めなければなりません。悪徳業者から守るという意味でも、統一的な技術者がいるわけではないので、ユーザーが安心して選べるシステムが必要です。例えばデータを出して、保証することはできないにしても、50年・100年後までの長期的なシステムをサジェッション(提案)していくことが必要です。今はまだそうした信頼性のあるシステムがないですから、逆に言えば、今後そうしたシステムができれば市場での役割は大きくなると思います。まさに200年住宅の考えです。
躯体を長持ちさせるためには、外壁・外皮、つまり塗装やタイルやモルタルの保全の仕方で決まります。ただ、その場合下地が健全であることが前提なので、仕上げの立場から塗装業者さんは下地の状態を見極めなければならないです。塗装というのはどの塗料を塗るかも大切ですが、一番大切なのは塗る前の錆落としやケレンなどの下地調整です。その次に大切なのが適切な塗布量で施工するという基本的なことです。設計士などは塗料のグレードを気にしますが、それよりも下地処理の影響は大きいです。
街並みでみてみると、自治体の組合がまとまっているところでは、地域の街並みをきれいにしようとする動きもあります。地域で付加価値を高めるという考え方です。この場合は個人個人ばらばらでは難しくて体制が必要となります。長寿命化というのは技術的に保全システムを構築すればいいのですが、ただそれだけでなくプラスアルファの提案、その1つとしてデザインからアプローチすることにももっと目を向けると新たな広がりが見えると思います。ただアプローチする先が意思統一していることが必要ですね。今後、景観法が普及して街並み意識が高まってくると、デザインからのアプローチが活躍する場が増えてくると思います。住環境をよくするためには塗料・塗装が1つの大きな要因になってくるはずです。
« 前のインタビュー | インタビュー一覧 | から) ">次のインタビュー »