インタビュー
2009年08月31日
色を通じて多様な価値を提供したい
日産自動車
デザイン本部カラーデザイン部部長 牧野克己
氏
まず車両のコンセプトがあって、それを受けてカラーデザインのコンセプトを作ります。具体的な色の発想はケース・バイ・ケースですね。ここまでこういった方向でやってきたから、今度は角度を変えてとか、もっと新しい軸を入れようなど。色域を広くしたり、インパクトのあるものにしたりして、色のイメージを決め提案していきます。
日産のカラーデザイン戦略の基本は、国や地理的背景など異なるお客様の嗜好やニーズを踏まえ、カラーや素材のバリエーションを展開します。かつオリジナル性を高く保ち、製品ライフサイクル期間中、魅力を常に新鮮に保ち強めることを目指しています。
まずカラーデザインを具体化する上で重要なのは、社会動向や環境的課題を把握しながら、更に人々の求める将来のライフスタイルやデザイントレンドの考察を行って絞り込んでいくことです。このため多量の情報の収集と分析が大切なことはもちろんですが、デザイナー自らがイマジネーションを働かせ、どのようなライフスタイルやデザインイメージが重要であるかを可視化することがポイント。また当然、販売データなど過去の事例の傾向の連続性からもカラートレンドを把握します。
デザイナーにはカラーのみを考えるのではなく、常にフォルムとの関係をどうするのかを考えるように助言しています。塗色の素材感や質感によってフォルムの持つイメージが変わってくるので、どのようにイメージでフォルムを見せたいのかが重要なポイントになります。また逆にフォルムによって色の見え方、透明感、輝きが変化しますから、あらゆる角度、あらゆる光や照明下での変化を踏まえ検討を重ねて車体色を開発します。内装は上質な仕立てと調和のとれた空間コーディネートを通じ、新鮮で魅力的なデザインを創造することに重きを置いています。日産では車種ごとに車両コンセプトを明確に表現する車体色や内装コーディネーションを開発しています。
日産はコンパクトカーからスポーツカーまで多くの車種をラインアップしていますが、それぞれのクルマのコンセプトにふさわしい個性的なカラーの開発、カラーバリエーションの展開をしています。お客様に選ぶ楽しさや満足感を提供するという一貫性を大切にしています。単純に同じ色を多くの商品に展開するような一貫性は取っていません。車種横断的に一貫性のある共通の雰囲気を創出するため、車種ごとに他社車にない個性のある色を設定します。例えると、家族のように一人一人は違う顔や個性でありながら、家族としての共通性を持つようなことを目指しています。
カラーデザインは競争力そのものです。しかもカラーや素材の変更は投資コストが小さいわりに大きなイメージ変更が可能となり、高い投資対効果(ROI)も期待できます。このためフォルムに比べ短期間のサイクルでカラーデザインの変更を行い、常に製品に新しいイメージを与え、幅広いお客様の需要や他車との差別化につなげていきます。また特に女性のお客様は色に対して高い感性を持つ傾向があるので、色を訴求することはとても重要です。
1回目(2003年)はパプリカオレンジ(外装)×シナモン(内装)、2回目(2006年)はチャイナブルー(外装)×アイスブルー(内装)が受賞カラーになりました。そして3回目(2007年)はサクラ(外装)×カカオ(内装)で、カラーデザインを高く評価していただきました。
2002年に発表した3代目マーチのターゲットユーザーは女性です。開発当初からカラーを最も重要なセールスポイントに決め、12色の車体色シリーズを展開しました。また初めから毎年カラーを変更する計画をもち、カラフルで親しみやすいイメージを定着させました。02年は"ランチの食材"をテーマとしたカラーコンセプトで、若い女性のカジュアルなライフスタイルやデザイン志向に訴求する5色で訴求しました。03年と04年にはランチの後のチョコレートやフルーツの"デザート"をテーマにつなぎ、05年には"イブニングカクテル"をテーマに発展させてストーリーを作ってきました。02年から08年まで継続的に投入した新色数は、延べ30色に達しています。
近年ピンク系の色の人気がコンパクトクラスや軽クラスで非常に高くなっています。主な購買層が女性であり、日本の女性は購買動機の中でカラーの優先度が高いことが理由です。大人でも"かわいい"や単純に"きれい"なものを受け入れる文化的側面が影響していると思います。他の国では今までピンクはほとんど受け入れられていないので、日本の女性ユーザーはとても個性的と言えるでしょう。
◇プロフィール
1981年に日産自動車に入社。94年-96年、北米Nissan Design International(現Nissann Design America)に出向。2000年よりカラーデザイングループチーフデザイナー。日産のグローバルレベルのカラーデザイン開発を統括。2003年、カラーデザイン部長に就任。
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