インタビュー
2009年12月21日
いいいろの日特集2009特別対談 色彩パワー賢く上手に使う
日産自動車
デザイン本部カラーデザイン部部長 牧野克己
秋山氏「今日は仕事を終えてからの対談に来ていただきありがとうございます。牧野さんはプロダクツ(製品)の代表ともいえるクルマのカラーデザイン、私はどちらかといえばインテリアカラーの領域を主としている者ですから、こうした機会は本当に貴重だと思います」
牧野氏「あるセミナーでご一緒させていただいたのをきっかけに、秋山さんの色彩にかける情熱に感染させられました(笑)。確かに領域は違っていますが、根っこは同じなのでお話できることを楽しみにしていました」
秋山氏「牧野さんの属するクルマのカラーデザインの世界からお話していただけますか」
牧野氏「クルマにとってカラーはエモーションを喚起する要素として重要なものです。色彩は必ず見るものですから。フォルムとカラーは一体のものとなって、そのクルマの個性やアイデンティティが決まります。私が関わったマーチの例でいいますと、2002年に開発された現行マーチでは女性の顧客をターゲットとしたカラーデザイン戦略がとられ、カラーのネーミングに食材の名前を取り入れました。パプリカオレンジなど5色、女性のカジュアルなライフスタイル志向を訴求するためです」
秋山氏「ひとりの消費者としてマーチのカラーには驚かされました。プロダクツのカラーがファッションカラーとシンクロナイズしてきたと感じましたね。それとカラートレンドの読みはさすがに深く、カーメーカーさんの情報収集力にはかなわないと思いました」
牧野氏「ファッションと異なるのはクルマ独特のフォルム。フォルムがカラーをきれいに見せるため、丸みのあるマーチではメタリック3色とソリッド2色に設定しました。マーチは毎年のようにカラーを更新し、02年から08年までで30色が設定色。こんな車種は他にはないと思います」
牧野氏「06年にオートカラー・アウォードでグランプリを受賞したマーチは、チャイナブルーの外装色に対し、内装はアイスブルーでした。かつてダークブルーはありましたが、現在はマーチ以外あまりありません。まずブルーを使うことを決めていましたが、非常にチャレンジングなことで、成功するかどうか不安もありました。お客様から支持いただけたのでデザイナー冥利に尽きるといったところです」
秋山氏「ブルーは見せ方に工夫されたということですね。私自身デザインしていてブルーを使うケースが良くがあります。また、お客様の要望としてもブルーは根強くあります。インテリアの色彩では、彩度のコントロールが鍵になります」
牧野氏「もともとキューブでエアーブルーのカラーが投入されていました。とてもいい色なのですが、少し大人しい。もっとお客様から見てハッとして一度見たら忘れられないカラーにしたいと考えたのです。チャイナブルーはクールの中にも温かみを持たせ、親しみを出すため少しグリーン寄りのカラーにしました。アイスブルーもファッショナブルで華やかで明るいブルーを開発したいとの思いでした」
秋山氏「MPC(色彩のプロ集団)を設立したのですが、その主旨はもっと色彩のパワーを産業界ばかりでなく、社会に役立てたい、そのためのささやかな一歩にしたいとの思いからでした。色彩のプロを目指す人たちにとって、現実は厳しいものがあります。カラー検定の資格を苦労してとっても、職場などで役立てている人は本当に少ないのが実態です。そのため色彩プロの資格として、色彩の知識ではなく、それを生かす能力を身につけてもらうことが必要だと考えました。マーケティングやプロモーションやコミュニケーションの力ですね。これだったら私たちの経験したノウハウが役立つと思ったのです」
牧野氏「私も美大を出て始めはクルマのフォルムのデザインをやりたいと思い日産に入社しました。でもカラーデザインをやってみて、つくづく奥深い世界だと実感しています。個人的な意見ですが、カラーというのは対費用効果の面ですごいパワーを持っています。街づくり、景観形成などにカラースキームがもっと活用されるべきだし、日本人の感性を生かした街づくりには色彩が絶対に欠かせないと感じています」
秋山氏「少しオーバーな言い方かもしれませんが、カラーデザインは人の幸せにつながる仕事だと思っています。クライアントばかりでなく、一般の方もお子さんも、色彩の話をするときは心がウキウキしますし、自分の色彩を実現したときは必ず感動が生まれます。MPCでは育成とともに交流を通じて新しい形のカラー情報の発信、更には創造的な役割を果たせたらいいなと思っています」
牧野氏「色彩の力を広げることで生活をイキイキさせることができると思います。お互いにがんばっていきましょう」
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