インタビュー
2009年12月21日
カラーマーケティングは経済的効果が高い(いいいろの日特集2009から)
静岡文化芸術大学
デザイン学部メディア造形学科長 宮内博実
端的に言うと、モノやサービスを売るためのカラーデザイン戦略のことです。
近年の消費不況は、不景気で所得が下がったということもありますが、それ以上に企業はこれまで良いモノをどんどんつくって供給してきたので、物質的にも機能的にももう充分、今のストックで何の問題もないという局面に来ていることが本質的な要因ではないでしょうか。機能へのニーズが飽和状態の中では色で差別化していく以外にないのです。
フォルムの変更は金型から起こさねばならず、コストに直結してプライスにも反映してしまう。それに比べれば色はほとんどコストやプライスに影響しない上、可変性への自由度も高い。色を戦略的に使っていくことは他の方法に比べて費用対効果が高いのです。それと成熟した経済の中で人の消費行動が感性的な価値軸に移行している点も見逃せません。モノやサービスを売っていくためには、人が感覚的に好き嫌いや良い悪いを判断している感性の部分にいかにすり合わせていくかが重要で、感性的な要素そのものである色は訴求効果が高い。
以前、ある大手小売企業の要請で売り場の商品陳列の配色を指導したところ、期間中の売り上げが前年比で180%伸びたことがありました。色は無意識のうちに確実に人の心理状態に影響を与え、消費行動をもデザインするパワーがあることを実証しています。この事例を踏まえ、その企業に対して仕入れの段階から色の戦略を組み入れるべきとの提言を行いましたが、利益優先志向で受け入れませんでした。この消費行動への認識のズレがその後の業績悪化につながっていったのではないかと思います。その対極がユニクロのカラー戦略で、ご存知のように大成功を納めています。色を戦略的に活用できるか否かが業績を大きく左右する時代になっているのです。
自動車でも住宅でも食品でも、誰にどんな目的で、どのようなイメージや満足感を売りたいかなど、商品を生み出すときには必ずコンセプトが立案されます。色や色の組み合わせは無限にありますが、コンセプトに合う色となるとそんなにあるものではない。コンセプトがきちんと固まれば色は自然と導出されてくるのです。
自然にというのは論理的に導き出す手法があるということです。例えば、次に出すクルマはクールなイメージを売りたいとのコンセプトが固まったとします。その外板色にピンクや黄色をチョイスしたとするとこれは明らかにおかしい。このように人は日常の感覚、つまり感性である程度色とイメージとのマッチングを判断している。ただしそれをマーケティングの領域で活用していくためには、どういう属性の人が、どの商品を対象としたとき、どういう色に反応するかあるいは反応しないか、またそのときの満足度や不満足度などさまざまな要素を融合させながら感性という概念的なものを定量化していく必要があります。
私は前職の日本カラーデザイン研究所の頃から30年以上にわたって"色の経済的な効果への活用"を一貫して研究し、企業などへの商品戦略の立案や具体的なカラーデザイン提案を通じて実証、論理を構築してきました。長年にわたるデータの蓄積と実務の中での経験値が背景にあります。カラーマーケティングとは心理学であり統計学であり、ターゲット論、ライフスタイル論でもあるのです。
感性マーケティングが注目され、色や配色が商品戦略上重要であると書かれた本はたくさんありますが、重要であると触れているだけで実際の手法について書かれた本はありません。しかしこれからのデザインはこの要素が最も求められます。これまでの経験や実績を踏まえて論理的で科学的な感性脳の育成に努めています。
●プロフィール
1972年、武蔵野大学造形学部基礎デザイン学科卒業。日本カラーデザイン研究所、札幌市立高等専門学校教授を経て05年から静岡文化芸術大学デザイン学部メディア造形学科長となり、現職。都市計画から原子力発電所などの施設、自動車、家電、建材、食品パッケージ、化粧品、ストッキングなどさまざまなジャンルにおけるカラーデザインの提案と商品立案を手掛ける。これまでの実績はアイテムにして500品目、2,000社のクライアントを数える。札幌の景観色70色を策定。著書に「毎日が楽しくなる色の取扱説明書」(かんき出版、2006)
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