インタビュー
2010年06月15日
品質極め、グローバルカシューへ
カシュー
代表取締役 清水 龍
氏
急速なグローバル展開に伴うひずみが国内の社内体制に出て、これを抜本的に解決していく中で世界的な危機に直面したのですから、大変は大変でした。しかし気持ちをすぐに切り替え、非常事態を宣言し、抱えていた膿を一気に出し切るチャンスと考えました。
当然のことですが、マンパワーを高めることが第一。危機を直視し課題を洗い出し乗り切るとともに、次の成長を見据えるための人材、これこそが生命線。そのため思い切った人事を下しました。一言でいえば若手の抜擢です。従来の枠組みやノウハウでは世界的危機は乗り切れませんから。役員レベルから管理職まで若手を中心とした編成にしました。
モノづくりの原点への回帰。基本のキから見直す作業プロセスを実施に移しました。顧客の立場から開発、生産、販売、在庫のサプライチェーンをチェックし、ムダやロスを極力排除するよう指示。モノづくりのABCが慣れによってぼけていた感は無きにしも非ずですから。危機という背景があったので、全社的に緊張感を持ってやれたと自負しています。改めてはっきりしたことは、業務プロセスのパイプの目詰まりがなくなって、クリアになったということです。
例えば携帯電話向けのプラスチック塗料では当社は後発ですから、他社と同じスタンスでは参入できない。そこで他社にはなかったソフトデザインセンターを立ち上げました。塗料を売るスタンスではなく、デザインを売る方向を鮮明にし、ユーザーに密着しようとしたわけです。ご存知のように携帯電話などモバイル製品のライフサイクルは3カ月から6カ月と非常に早い。しかもカラーデザインは機能と同等の商品価値を持ち、売行きを大きく左右しますので、ユーザーのデザイン指向が強い。そこで先行したカラーデザインのプレゼンテーション、カラーデザインの発信基地となるソフトデザインセンターを設立しました。
当社が想定していた以上の反響がありました。ソフトデザインセンターはデザイン提案ばかりでなく、サンプルカラー、塗り板見本の作成、供給まで一貫した形でユーザーに密着できますから、モノづくりの原点を体現したものと言えます。品質への信頼性にもつながり、大手ユーザーのデザイナーがソフトデザインセンターに長期滞在するケースも出て、効果は大きかったですね。
目標は品質不良ゼロ、これはエンドレスのテーマですが、常に掲げるべき目標だと思います。このためすべてのプロセスでダブルチェック体制を敷き、起こりうる問題を想定してチェックするようにしました。しかし形を作っても魂を入れなければ破綻してしまいますので、チェックの見える化を図っています。これでかなり品質精度は向上しました。また品質テーマはコストにも直接間接に関わってきます。品質のベストプラクシスを追求していくと、ムダなコスト、排除できるコストも浮かび上がってきます。
今年2月、カシュー韓国を設立。提携関係にあった現地塗料メーカーへの出資比率を51%とし、子会社化しました。また今年11月をめどにタイにJVを立ち上げる予定です。また巨大市場である中国では完全現地化の方向で動いています。09年の海外売上比率は48%程度ですから、逆転することは確実で、今後とも海外事業の一段の加速を図りたいと考えています。
携帯電話・モバイル製品のシェアでトップを目指すと同時に、家電製品、自動車関連のプラスチック塗料の分野でも当社独自の存在感を発揮していきます。これを実現するのが品質をキーとしたモノづくりの原点からの改革と位置付けています。
大宮工場は塗料、久喜工場は樹脂の生産と明確に分担しており、大宮工場の生産ラインの更新を進めてきたところです。大宮工場には最新の自動調色ラインを導入し、プラスチック塗料専用プラントの体制。これら生産の再編とともに、品質の統合も実施してきました。大阪工場は分室としてリニューアル。重要なのは海外生産品質と国内生産とを同じレベルにし、更にそれを維持するコントロール力。この役割が国内体制の在り方を変えていくテコになっています。いわば内外事業を円滑にするための体制にしなくてはならないと考え、次の手を打っていきたい。
携帯電話に特化して10年。ここでのノウハウを今後に生かせるかが鍵。競合を上回る品質づくりしかない。世界トップの携帯電話向けプラスチック塗料メーカーと分かりやすい目標を絶対に達成します。
プロフィール
社長就任以来、トップ自らが営業の先頭に立ってきた。厳しい市場の現実こそが社内改革のバネになると考えるからだ。同時に若手の登用をはじめとする従来の枠にとらわれない人事を実施し、マンパワーに新鮮な風を吹き込む。ポスト・リーマンショックの今年度からが正念場との覚悟を見せる。
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