2016/10/27 09:02

職人不足は宿命ではない(建築塗料・塗装特集2016秋より)

KMユナイテッド CEO 竹延幸雄

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女性、外国人、高齢者など多様な人材を雇用・育成して活かし、企業価値向上につなげるダイバーシティ経営。その成功事例として注目が集まっている大阪市の塗装会社KMユナイテッド。建設業の職人不足の根本的な解決を目指す先に行きついた経営手法だという。竹延幸雄CEO(写真)に話を聞いた。

ダイバーシティ経営の成功例として注目されています。


「たまたま当社の経営手法がそれに合致したというだけで、私自身その言葉も知らなかったくらいです。世の中では人手不足が叫ばれている一方で、性別や国籍、学歴、家庭環境など働きたくても働けない就労弱者がたくさんいるという矛盾があります。建設業で深刻化している職人不足と就労弱者の受け入れとをマッチングできないか。それを原点に起業(4年前)しました」

そもそも職人不足はなぜ起きていると。


「人の採用と育成は産業や企業を超えて経営の根幹であり、どの会社もそのことに心血を注いでいます。ところが建設業は電話一本で職人を融通するという便利な慣習に浸かり、建設業の経営の根幹であるはずの職人の採用と育成を放棄してきました。そのことが不安定で魅力のない労働環境を生み、極端に人の集まらない職場になった原因です。元来建設業には経験や学歴を問わず多様な働き手を受け入れるという懐の深さがあります。やる気はあるのに働きたくても働けない、そんな人たちを受け入れ、活躍できる環境を整えることが職人不足解消の大きな足がかりになると思います」

環境の整備で必要なことは。


「まずは正社員化です。日給月給制や社会保険にすら入っていない状況では誰も安心して働けません。それと選択制の週休2日、時短勤務可能といった働き方の柔軟性です。例えば育児や介護、あるいはそこから開放されたときなどそれぞれに合わせた働き方を用意しておくことで生活設計とのバランスがとれます。職人の世界は朝が早いので早朝から子供さんを預かるキッズルームも社内に整備しました。もちろんその分固定費はかさみます。従って未経験者でも早期に稼げる職人に育てること、そして付加価値の高い仕事を創出していくことが重要になります」

現在の人員体制を教えて下さい。


「社員数は31名でこのうち女性職人は7名、外国人職人は2名、今春も職人として10名の新入社員が入りました。その他には親会社である㈱竹延をリタイアした熟練職人を迎えて指導員として活躍してもらっています」

未経験者を早期に稼げる職人にするには。


「作業を専門特化させることです。具体的には養生、パテ、研ぎといった塗装の前工程に特化し、『この領域だけではベテラン塗装職人すら追い抜いてしまおう』というモチベーションで同一作業を繰り返し鍛錬する。働くことへの飢えと認められたいという欲求からくる集中力は驚くものがあり、1年半もすれば前工程に関しては経験10年以上のベテランの腕を越えてしまう。従来よりも生産性が高まるので前工程だけに特化した請負業態として成り立ち、経営的なベースになるとともに、そこで育まれた職人たちの腕と自信が次のステップ、即ち付加価値の高い新たな仕事への意欲につながります」

具体的に言いますと。


「特殊意匠仕上げや漆喰・珪藻土などの左官仕事、耐火被覆といった領域です。これらは仕事量の変動が激しいので経営的なリスクから特に職人が枯渇しています。必然的に付加価値の高い仕事となり、それらへの対応力をつけ吸収することで利益率の高い経営を目指せます」

高度なスキルが求められます。


「例えば特殊意匠仕上げではアイカ工業さんとコラボレーションし、ジョリパットの見本板をつくる工場で当社の職人が技能を修得させてもらっています。ここで訓練した入社2年目の女性職人が、京都の高級ホテルの新築工事でアンティコスタッコの壁を仕上げました。単価は通常の塗装工事の20倍です。このことは竹延のベテラン職人を大いに刺激、自分たちも修得したいとの意欲を引き出し、目に見えた相乗効果をもたらしています」

先日発表した新工法も高付加価値化の一環ですか。


「塗装で磁気タイルの意匠と耐久性を実現する新工法『KEPT』です。打診検査の義務化で維持コストが上がり磁器タイルが敬遠される中で、それに代わるものとして開発しました。既に大手ゼネコンの現場で採用され高い評価をいただくとともに、ディベロッパーからの引き合いも活発です。重たいタイルに代わって繊細な塗装技能が求められる領域で、女性職人などまさに当社のスタッフが活躍できる場です。この新工法を始め、特殊意匠仕上げや左官、更に新たな高付加価値施工への参入を見据え、このほど自前で研修施設を開設しました」

未経験者を早期に戦力にする。職人不足への大きなヒントです。


「安心して働ける就労条件と訓練システム、そして活躍できる場の提供を通じて会社や仕事へのロイヤルティを育める環境をいかに整えるか、それに尽きると思います。それによって潜在能力は桁違いのスピードで引き出され、まさに人材から人財に昇華、最重要の経営資源に育ちます。人の採用と育成はやはり経営の根幹。職人不足は宿命ではありません」

ありがとうございました。


KMユナイテッド:人材開発を主目的に平成25年1月、大手塗装会社・竹延(本社・大阪市)の関連会社として設立。今期売上見通し3億2,000万円のうち前工程特化の請負工事48%、高付加価値工事45%、その他7%。高付加価値工事の比率が急速に高まっている。今年3月、経済産業大臣表彰の「新ダイバーシティ経営100選」に建設専門工事業として初めて選出された。