2016/10/20 12:51

専門工事業が工事管理すべき(重防食塗料特集2016より)

日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会 会長 奈良間力

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社会インフラの老朽化対策が急がれているが、橋梁塗り替え工事への落とし込みは進んでいない。橋梁補修における塗装工事の現状や担い手(人材)確保の問題、水性塗装の課題などを橋塗協の奈良間会長に聞いた。



橋梁塗装工事の発注動向は。


「国内の橋梁は老朽化が進んでおり、70万ある橋梁のメンテナンスは喫緊の課題だ。そのため国のメンテナンス予算は補正予算も含めて増額の方向にあり、インフラ整備全体としてのボリュームはあると認識しています。ただ問題は塗装工事(単体)としてどれだけ出ているかが重要。こうした趨勢にも関わらず、直近では我々塗装工事専門業者の直轄受注の動き自体は低調と言えます。塗装工事自体がないのではなく、工事がまとめ発注という形で大型化しているわけです。要するに分離発注がなされていない」

塗装専業者が元請として受注できにくくなっているのですか。


「そうです。ゼネコンを含めたインフラ関係会社からの下請工事としてはそこそこ動いていると言えますが、いわゆる塗装工事として見た場合には非常に低調な状況です。この状況を改善すべく、当協会としては国交省に塗装工事の分離発注を陳情しています。行政の方向が、塗装工事が主たる工事でも補修工事として大口化・長期化する発注となれば、専門工事業としての存立が難しくなる。それによりこれからの担い手不足や人材の育成・技術の継承が困難となるからです」

分離発注の必要性とは。


「まず塗装が軽く見られているように感じる。本来、塗装は専門性を要するもので、特に鋼橋で用いられる重防食塗装は技術的・機材的に高度なレベルが求められます。対して、ゼネコンにしても鋼橋の防錆管理に関して深く理解している方がどれほどいるのか。この実態のもとで鋼橋の防錆管理がなされている現状に歯がゆい思いがあります。本来、専門工事業者である我々が、塗膜診断や的確な素地調整を含めた塗装工事を管理することが必要であり、それが橋梁の長寿命化にも寄与すると申し上げたい。我々が培ってきた経験やノウハウが生かされなければならないが、補修工事の中で塗装が軽視される傾向が見られる現状ではそれを十分に発揮できていない」
「一方で、これまで我々が技術的な提案が十分できていたのかという自戒の念はあります。これまで以上に国交省、都道府県、各自治体、道路会社などの技術的会合に当協会も積極的に参加して素地調整や水性塗装などについて業界の立場から意見主張しています」

施主の水性化への関心具合は。


「首都高速道路は危険物となる有機溶剤を含まない水性塗装に大きな関心を持っており、現在水性化検討に関する関連委員会には当協会も参画し方向性や問題点などを協議しています」

施工上の課題とは。


「技術革新や技術発展の過程では、従来のやり方の方が勝手がいいというのは大勢としてあります。水性塗料は温度、湿度の影響を受けやすいので、そのコントロールは必要です。ただ、塗ること自体は慣れで改善もできるし、水性に適した機材や塗料も開発・改良されてくるでしょう。当然、こうした課題には我々も取り組んでいかなければならないが、合わせて塗料メーカーとの協働がないと成り立たない。ぜひ今後を見据えて製販装が密になって取り組んでいく必要があるでしょう」
「現状の慣れていない段階では工数は増えてしまい、塗料単価も上がる。そこの原価アップ分を発注者側にどこまで理解してもらえるかが普及への現実的な課題になると思います」

工事単価の適正化ですね。


「これは水性塗装の普及だけでなく担い手の問題にも関係してきます。昔は職人の収入も良くそれも若い人にとっては大きな魅力だった。それが今は十分魅力ある世界を作りきれているかと問われれば、不十分と言わざるを得ない。給料面だけでなく、社会保険や福利厚生などの基本を業界として整備しなければならない。そこを真剣に取り組んでいる会社が最終的には存続し得る条件を満たすと思います」

橋塗協として担い手確保に対する取り組みは。


「国交省に対して工事発注の平準化を陳情しています。今は平準的に仕事が出ておらず、それが我々の悩みの種となっている。公共工事の流れで言うと、4月に予算検討に入って6月、7月にようやく発注が出始める。後半は秋頃に固まって工事が出てくるのが毎年の流れであって、結果として一番の仕事量のピークが年度末の3月頃になっているのが実態。真冬の工事は乾燥スピードなど施工条件も最適とは言えず、作業環境としても厳しい。その時期に工事が立て込むのは施工の効率を低下させることになる。年間を通した計画ある発注が重要であり、それには工事発注の平準化が必要だと感じている」

例えば1つの物件を受注し仕事をする中で次はいつ取れるか分からない。


「そういうケースが圧倒的です。会社としては仕事が取れていないときでも従業員を雇用しなければならない。仕事を確保するために労働が流動化し、それが建設業界での多重構造化を生んでいる。しかし、企業体として雇用問題を整備しなければならない。技術者育成、社会保険など課題はあり、仕事がないときでも雇用できる体力が求められている」
「それが一番端的に現れるのがオリンピックです。建設工事自体は2018年がピーク、塗装工事は2019年にも発注されてくるでしょう。それまでにいかに担い手を確保できるか。できなければ受注したくても受注できず、市場から退場させられてしまう。更にオリンピック終了後は塗装需要が大きく減る。そこが怖い。我々はオリンピック前後ではふるいにかけられます。それぐらいの危機感を持っています。当協会としても課題解決に向けた活動に取り組んでいきます」

ありがとうございました。