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2007年06月04日

企業動向  技術

鋼橋の旧多層膜、一度に除去 山一化学土木研究所

国内にある約5万鋼橋(総延長3,000km)の一般塗装系から重防食塗装系への転換で、最大のネックとなる旧塗膜の除去・回収に画期的工法が開発され注目されている。山一化学工業(本社・東京、社長・川口徹氏)が(独)土木研究所と共同開発し、共同特許を出願した「インバイロワン工法」はブラスト工法などの機械的工法や従来型剥離剤使用に比べ作業性・コストの面で格段に優れるばかりではなく、周辺環境並びに作業者への安全性が高く、「塗布して翌日除去作業を行う標準工法も可能」と発注者側の評価が高い。このため両者は完全責任施工体制を構築し、今年度から本格的な展開に踏み出した。なお同工法に対し平成18年第8回国土技術開発賞最優秀賞(国土交通大臣賞)が授与されている。

インバイロワン工法の原点となった特殊剥離剤は山一化学が溶剤メーカーとしてのノウハウを活用し20年近く前に技術が確立されていた。しかし市場背景から商品として育成されず、実質的にはお蔵入りとなっていた。 局面が大きく変わったのは数年前。(独)土木研究所が広く「良い技術」を公募し、共同研究が平成14年から16年までの3年間実施され、商品として甦った。土木研究所側も独立行政法人化を機に民間にある良い技術を育成するスタンスにあり、山一化学側との共同研究がスタートし、画期的工法として確立。昨年1年間は全国の鋼橋の現場で試験的に検証を進めてきた。その結果、旧塗膜の除去工法として従来工法に比べ大きなメリットがあることが実証された。

現在、全国には約7万の鋼橋が存在し、うち約5万の鋼橋がLCC(ライフサイクルコスト)の観点から、一般塗装系から重防食塗装系に転換を図り、耐久性を向上させて社会基盤を維持する方向にある。ここで立ちはだかるのが旧塗膜の問題。一般塗装系の場合、新設時に鉛系錆止めペイントまたは薄膜ジンクリッチペイントの下塗り、上塗りにはフタル酸系または塩化ゴム系の塗料が採用され、その後1回目の塗り替えに際しては下塗りに鉛系錆止めペイントまたは変性エポキシ塗料、上塗りにはフタル酸系または塩化ゴム系塗料の仕様であった。

一般塗装系の塗膜の寿命は約10数年で、しかも鉛や六価クロムなどの有害物質を含むが、橋梁を管理する国や自治体は鋼橋塗装のLCC低減のため重防食塗装系に切り替えたい意向。 このため旧塗膜の除去・回収を効率的に行え、かつ環境負荷の少ない工法開発への期待が強まってきた。除去工法としては機械的工法と剥離工法があるが、いずれも課題を抱えている。

ブラスト工法は除去は容易な反面、大型装置を設置する必要があり、騒音や塗膜ダストの飛散、大量の産廃の発生などの課題がある。ウォータージェット工法も排水処理に課題がある。ディスクサンダー工法は作業効率が悪く大面積に適さない。 従来型剥離剤工法は旧塗膜を1層ずつしか除去できず、生産性が低いのに加え、作業者への皮膚腐食性など健康・安全面の課題や、主成分の環境毒性も指摘されている。 インバイロワン工法は一度の塗布で塗装面の最下層まで剥離が可能。高級アルコール系の剥離剤が塗膜にゆっくりと浸透し塗膜を軟化させるため、多層膜に対しても一度で剥離できる。実験では約24時間でジンクリッチペイントまで到達、塩化ゴム系塗料との界面を軟化させ付着力をなくしてしまった。 しかも皮膚腐食性が小さく揮発性も低いので、作業環境の溶剤濃度を低く抑えられる。旧塗膜は湿潤シート状に軟化し、回収が容易。環境性能では生分解性が高く、作業中や作業後に飛散しても負荷は非常に小さいメリットがある。PRTR法や労働安全衛生法に該当しない。今後、低温時(冬期)適性の改善、マニュアル作成などを急ぐ。

山一化学と土木研究所は共同でインバイロワン工法の普及に乗り出している。両者の研修を受けた工事会社に同工法の実施権を許諾していく完全責任施工体制を構築し、品質の高い工法としてのスタンスを守りつつ、普及していく方針。材料のみのオープン販売はしない。

20070516-1-1.jpg1m2につき1kgの剥離剤を塗布

20070516-1-2.jpg塗布直後、液だれ、ムラがない

20070516-1-3.jpg塗布24時間後、多くの塗膜が剥がれ落ちる


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