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2008年05月13日
ケーススタディ 色彩から塗膜へ作り込む FANTASY誕生、研修+カラーショールーム 明豊(茨城県)
明豊は全国のオートサプライヤーに先駆けてPTC(ペイント・トレーニング・センター)を開設し、12年間にわたり研修を軸にしたコンサルティングセールスを実践してきた。営業マン自身がスプレーマンであるばかりでなく、ボディーショップ経営に関するノウハウを保有するプロ集団でもある。顧客の依頼を受けBP工場を設計し経営指導しているケースもまれではない。明豊に聞けば分かるといった信頼関係を構築している。
同社の主力は自動車補修用を扱うオートサプライヤーだが、工業用、建築用の比率も高い。このため本社PTCは開かれた研修センターとしての機能を果たしてきた。
工業用ユーザーの試作品作りや建築用向けでの各種研修、ユーザーへの塗り板サンプル、更には生活者を対象とした工作教室など、PTCは自動車補修だけにとどまらない活用スペースとなっている。このためネットや車雑誌を見て知った顧客が二輪をPTCに持ち込んで指導を受け、自分でカスタマイズするケースもある。
成熟市場を超えて
大きな転機は日産の集中購買であった。自動車補修や建築用市場の成熟化に加え、新しいチャンネルの出現は同社の方向性の根本的転換を迫るものであった。「事業そのものの新しい枠組となるコンセプトを作る必要があった」とふり返る。
ヒントになったのがカラービジネス。塗料はひとつの材料に過ぎないが、色彩から見直すとハードウェアからソフトウェアとしての可能性が拓けてくる。しかも色彩は一般消費者である生活者までを包含できる魅力ある商材と思えた。ここから逆転の発想がスタートする。色彩を軸にした事業の再構築に着手することになる。
金子社長は業界内のカラーショップ、ショールームはもちろんのこと、異業種の各種ショールームを視察し続ける。これと同時に社員から色彩事業へのコンセンサスを得て、全社的なプロジェクトとして推進。社員からの意見が出される一方、カラーコンサルタントとしての自主研修もスタート。
「私自身もそうですが、色彩は元気にしてくれる要素がある。というのは色について意見や主張のない人はいないし、イメージを大きく膨らませてくれるものなので、脱線することもありますが、ミーティングが活性化します」と金子社長。
カラーショールームを創るだけでは面白くない。ここでまた金子社長の「他人と同じことをしたくない」魂がうごめき出す。同社の根幹にあるPTCとカラーショールームとのドッキングが方向として定まる。
いわば必然的な流れともいえるが、開かれた研修の実績がなければできない発想だ。今でこそオートサプライヤーが自前の研修機能を保有することが当たり前になっているが、それはあくまでも自動車補修のための施設との考えから脱していない。
「色を売るビジネスを想定したときの最大の弱点は、色彩はモノではなくサービスでそれ自体ではお金を取れないところだと思う。訴求力や付加価値につながる要素を色彩は持っているが、それを具体化する技術やプロセスを基盤にしないとビジネスとして成立しない」と金子社長はいう。
そこでPTCとFANTASYとを連動させることによって、顧客のイメージを吸収しつつ色を体感できるプロセスを導入するのがポイントとの発想が生まれる。シミュレーションのレベルではなく、新しい技術を駆使した実験・テストやサンプル作りができれば、顧客と一緒になった作品が作り込める。今風にいえば"見える化"を実現するということになる。
PTCとカラーの融合
まずFANTASYを見てみよう。ショールームは建物としては何の変哲もない2階建て。旧事務所をリフォームした。リフォームのポイントは3つある。カラーショールームの独自性から塗料の陳列は一切せず、接客できるオープンスペースを広く確保。また2階スペースをすべて研修ルームに変えた。そして建物外装を塗装サンプルに。屋根には遮熱塗料を採用した他、外壁には装飾仕上塗材、自然石調仕上塗材を使い、エレガントな雰囲気をかもし出す。駐車スペースには路面遮熱塗料を施工し、内装の一部にはインテリアペイントといった具合。建物そのものを実物スケールのサンプルとした。
しかしFANTASYの仕掛けはもっとすごい。凸状の円形カラーサンプルがそのひとつ。立体的にすることで色変化が体感できるばかりか、裏面に付けた磁石で脱着が可能。カラーは色相配列されマンセル値が付けられ、90枚のカラーサンプルを遊び感覚で組み合わせることができる。
この形状に決まるまで担当者は知恵を絞ったという。サイズひとつにしても大きくもなく小さくもない水準はどこにあるのかなど苦心したという。また外光やスポットライトなどの当たり方で色の見え方に変化が起きるため、凸面の形状も工夫のしどころ。結局直径10数センチの手のひら大に決定。小学生でも扱えるサイズだ。
「色彩の魅力をダイレクトに伝えるためのツールとして活用していきたい。デモンストレーションの場を選ばないので自由度が高い。地元の小学生などの社会勉強の一環として活用できると思う。色の組み合わせによってイメージの変化が実感できるツールにしたい」(下妻営業所長・袖山弘氏)。
もうひとつ注目される仕掛けは、塗板見本へのこだわりにある。ここでも徹底した体感型のプレゼンが真骨頂。デジカメで撮った住宅写真を取り込みカラーシミュレーションするだけでは実際の塗ったものとのギャップが大きく、顧客に不満が残る。色相が決まればパターンや明度や彩度による差、ツヤの有無などのサンプルで確認し、色の質感にまで落とし込む。一見すると手間がかかるようだが、「自分の家を塗り替える楽しさはこのプロセスにあるのですから、絶対手を抜くことはできない」と袖山氏はいう。
既にFANTASYでは地元のディスプレイ業者からの利用の打診、工業用ユーザーとの新製品作りでの協力関係、更にはドア板のカラーリングなどスタンバイが始まった。「色に関わらない職業はないのですから、色彩を通じた新しい関係を創造することでビジネスチャンスは限りなく広がる」(金子社長)と期待する。
PTCには水性塗料対応の塗装ブースを設置。エアブローが循環する。またカーボンブローヒーターなど乾燥機もエコ対応に抜かりはない。ピットも広く、塗装研修が余裕をもって行えるスペースを確保。専用のラウンジも用意した。
PTCの隠し味はその佇まい。外装にピンク系の淡彩をカラーリング。これには社内で議論があったという。研修施設の従来のイメージとかけ離れていたため。こだわったのは袖山氏。「FANTASYと一体感を持たせるためには譲れない一線でした」と苦笑する。天井リフトやサロンのドアをイエローとしたのは「非日常性を演出したかった」と袖山氏。遊び心も注入されている。
4月からスタートしたスケジュールには水性塗料の研修の他、色を楽しむセミナーなどの企画が満載。「私共からの発信に加え、利用する人たちの意見から新しい利用価値につなげたい。BPの組合からは会合の場としての利用申し込みがきている」(金子社長)。色彩をもの作りにまで具体化できる施設として変幻自在な活用法が生まれてきそうだ。
専用ロゴのFANTASY(ファンタジー)には、夢を売り、顧客の"こうあったらいいな"を実現したいとの思いを込めている。モノではなく顧客との交流から生まれる"共感"を共有化するビジネスの在り方を目指す。
◇企業プロフィール
昭和52年2月/水戸市千波町で「明豊物産」として設立
56年8月/水戸市笠原町に移転
57年4月/塗料部の営業開始
58年11月/下妻営業所開設
平成元年2月/明豊に社名変更
8年3月/本社を水戸市小吹町に移転。PTC(ペイント・トレーニング・センター)を開設。
13年10月/ホームページ開設
17年12月/楽天市場において「ネットショップ明豊」の営業開始
20年4月/下妻PTC開設、Color Showroom FANTASY営業開始
◇拠点概要
<本社営業所>
敷地/2,320m2、建物/805(PTC含む)=事務所・ショールーム・作業場・倉庫・研修室×3など
本社PTC設備:プッシュプル塗装ブース×1基、ピット式集塵機×1基、塗料専用ミキシングマシーン×4台、調色用デジタル計量機×8台、各種専用工具完備
<下妻営業所>
敷地/1,650㎡、建物/295㎡(PTC含む)=事務所・ショールーム・作業場・倉庫・研修室
下妻PTC設備:プッシュプル塗装ブース×1基、ピット式集塵機×1基、塗料専用ミキシングマシーン×2台、調色用デジタル計量機×2台、各種専用工具完備
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