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2008年06月16日

企業動向

ケーススタディ 2010年末に80%水性転換 トヨタUグループ

国内最大級の規模を有するユー・ボディアンドペインティング(UBP)は2010年までにVOC排出量を2000年度比で30%削減する"水性化計画"を発表した。この4月から補修塗料の水性シフトを進めるため、日本ペイントe3(イーキューブ)「オーデベース」を導入した他、隠ぺい性の高い「レアル」システムに使用塗料を切り替えた。トヨタ系ディーラーは水性指向を鮮明にしているが、同社のように企業ポリシーとして環境優先を具体化したケースは少なく「環境保全なくして企業の存立はありえない」(宇都宮社長)とトップポリシーが貫かれている。

「水性シフトは環境に対する企業ポリシーの最優先課題として取り組む。コストは次のテーマ」(宇都宮社長)と言い切る。 トヨタ自動車は昨年、オールトヨタで2010年までに30%のVOC削減を目指すと宣言。関西ペイントと日本ペイント製の水性ベースコート「TOYOTA Waterborne Paint」として純正品化、系列カーディーラーの水性シフトを支援していく体制を整えた。 トヨタUグループはこれに先行し、3年前に水性導入を決定、VOC排出削減計画を作成した上で今回の水性塗料「オーデベース」での補修を開始した。既に工場のISO14001の認証も取得済みで、VOC削減ばかりでなく、トータルな環境負荷の低減に向けた活動を本格化する。

UBPは5月12日、関係者約100名が出席し、水性塗装披露会を開催した。説明に当たった同社取締役BP部長の箱山藤二氏は「BP作業に伴う環境対応として現状考えられる対策のベストのものをチョイスした」と胸を張った。

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水性のデモンストレーション

事実、工場天井には外光を取り入れ、照明器具はハロゲンライトを採用。これにより昼間は照明の電力を減らせるばかりでなく、ボディの色合わせに適した自然光に近い状態にもっていけると話す。

乾燥ヒーターには熱の立ち上がりの速いカーボンファイバータイプを採用しているため、ヒーターの耐久性向上に加え、エネルギー消費を遠赤外タイプに比べ減らせる。 これらによって同社の想定するところによると、年間で120トンのCO2削減につながるという。 この他使用溶剤のリサイクル、雨水を車の洗浄に再利用、フロン回収など、きめ細かい配慮がされている。

今回の目玉は水性対応のブース(特許)にある。ブース本体はANDEX社のプッシュプルブース。技術革新はブースに脱着できる温風と湿度コントロール付きエアブロー。 「水性ベースコートは外気温の影響を受ける。例えば外気の湿度35%であればそれに適合したブロー量で処理する」と箱山氏は解説。つまりエアブローを管理できるシステムが構築されているのだ。通常の水性ブースではブース内に設置されたエアブローの吐出口から経験と勘でブローされるが、これではどうしても過剰なブローを浴びせることになる。当然エネルギー消費も増えてしまう。

UBPの特許ブースは、温風と湿度を管理できる2本での脱着式ブロー装置がセットされている。実車によるデモンストレーションを見学して分かることは、ブロック塗装の乾燥に非常に威力を発揮している点。水性ベースを捨て吹きした後、2回塗りでほぼ隠ぺいした。「仕上がり感はメタリック、マイカとも溶剤より上回る」(担当者)とコメントする。

UBPには溶剤系のブースが4基あるが、水性ブースは1日3台ペースで溶剤ブースの8台に比べて生産性が悪いことも事実。この課題については「品質を確保しつつ1日5台までのペースに当面持っていきたい。スプレーマンのスキルアップ、段取りなど総合的に改善していけばこの目標達成はたいして難しくない」(箱山氏)と話す。その次の目標は溶剤並みへの移行とキッパリ。 VOC削減計画では昨年4月に低溶剤型「レアル」を導入したことによって28%のVOC削減を見込み、カラーベースの水性シフトによって2010年までのVOC排出30%削減どころか「40%削減が見通せるようになっている」(同)と削減ペースが加速すると予想。ちなみに今年3月の時点で水性化率は18%。これを4月より毎年5%ずつ上げていく。

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温度・湿度を管理したエアブロー

これに伴って来年6月以降、既存のブースの水性ブース転換を進める計画。水性化の第5ブースに加え、第2ブースを2010年6月、同7月に第3ブース、8月に第4ブース、9月に第1ブースと工事を進める予定。計画通り工事が終了すると、2010年11月の段階で水性化率は80%に達する。これは全国にあるBPの最高水準の水性シフトとなる。 UBPは長野トヨタ自動車が全額出資の子会社だが、中古車再生センターをかねており、トヨタ車以外の全車種が入庫する。BPの月間処理量は300‐350台。コスト問題について箱山氏は「塗料性能が向上しているので、トータルコストを抑えることが可能になる。ただし水性は乾燥性から作業性にネックがある。これとあわせて考えると5%ほどの材料コストのアップになる」と打ち明ける。

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水性シフトを説明する箱山部長

同社は今回のカラーベースの水性シフトに次いでクリヤー、プラサフの水性化に着手。「トータルに水性化していきたい」(同)。昨年は低溶剤タイプの導入でPRTR物質を対前年比で1トン削減、水性導入で更に1トンの上乗せを見込んでいる。 披露会に出席した日本ペイントAR事業本部長の小原孝文氏は「環境経営を実践されエコファクトリーに向けた努力に敬意を表するとともに、当社としても生産性や収益改善のための全面的なご支援をしていきたい」と話した。

コストより環境優先 トヨタUグループ社長 宇都宮元氏


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水性導入の決定はいつですか。

自動車メーカーにおいて塗装工場のウェイトが高く、そこで溶剤系塗料が使われてきた。トヨタではベースコートの水性化は終了したが、アフター市場での対応に追われているのが実態。なんとか手を打たなくてはと3年前にGOサインを出した。


3年前はVOC規制以前の段階ですね。

今年1月、トヨタ自動車の渡辺社長に(水性シフト)を話したところ大変ビックリされていた。というのは新車の塗装ラインの水性化で苦労されていたので、そんな簡単なものではないよ、だがやるならトヨタとしても全面的に協力すると言われた。実行しなければコトは始まらない。


水性シフトのスケジュールは。

昨年4月、ハイソリッドタイプである『レアル』を導入、6月には水性ベースを導入し同時に社員トレーニングをスタート。そしてこの4月から水性を使った補修を始めている。


日本ペイント製を採用した理由は。

まず日ペさんの全面的協力が得られ、ヨーロッパ型の水性に比べ溶剤分が少ない点を評価。7月に水性ブースが完成したので、テストランを兼ね実際に使ってみて、通常の溶剤タイプは1日8台ペースで処理できるのに対し、慣れもあるでしょうが水性は1日3台ペース。当面は1日5台にまで生産性を引き上げるのが目標。


コスト要因への対応は。

塗料コストを含めすべてのコストがアップするが、工場全体の生産性改善の努力の他、溶剤を使わなくなった分のコスト軽減など、コスト吸収をしていきたい。特に今回導入したブースは世界的にも最高水準の性能があり、データを集積していけばソリューションにつながると期待している。

<企業プロフィール>

UBPは長野トヨタ自動車を中核とするトヨタUグループ傘下の自動車板金塗装・自動車架装・ボディ製作・自動車点検整備・中古車洗浄作業の専門会社として2000年(平成12年)5月12日に創業。
◇代表取締役社長:宇都宮元氏
◇工場総面積:26,236m2(7,936坪)
◇建物面積:延6,482m2(1,969坪)
=BP2,858m2、ボディ607m2、新車点検527m2、中古車商品化1,640m2、洗車場850m2
◇人員:BPグループ34名、ボディグループ8名、新車点検グループ9名、商品化グループ13名、総務1名、計65名
◇所在地:長野県須坂市大字日滝字虫送3350―5(日滝原産業団地)


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