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2008年07月09日
付加価値ビジネスモデルを模索 高コスト時代、実態収益は水面下
塗料原料の樹脂、顔料、添加剤、容器などの値上がり状況は過去に経験したことのない水準に達している。「かつてのオイルショックを上回り、その要因が複雑になっているので、そう簡単には収まりそうにない」(メーカー)と高コスト時代を前提にした発言が出るようになっている。
原材料コストアップはバラツキはあるが過去1年間で20‐30%幅になり、これに対し値上げ幅加重平均は約0.7%程度と推測されており、実に20%以上をメーカー・ディーラーが吸収していることがうかがえる。それでも海外収益でカバーできるメーカーは吸収余力があるものの、国内市場中心のメーカーは営業利益で水面下に没してしまったケースも目立つ。
平成19年度の塗料出荷は出荷数量が前年度比0.7%増の207万3,355トン、金額ベースでは3.7%増の7,758億8,400万円と一見堅調な数字のようだが、受入やその他出荷を除いた純出荷ベースでは190万7,960トン、7,112億4,700万円で、それぞれ前年度比0.8%減、2.6%増と需要全般は縮小基調にあることが分かる。
原油高を契機として工業用ユーザーの生産拠点の海外シフトが電気機械分野で一段と加速しており、工業用塗料需要の減少に加え、1年余り前にやや盛り上がってきた工場向け塗り床用塗料の出荷にブレーキがかかるなど、コスト高騰の連鎖は塗料需要にダイレクトに響いている。
とりわけ需要の後退が顕著なのは建築汎用市場。「値上げどころか値下げ圧力に押し切られているのが実態。ユーザーは従来の取引関係を無視して1円でも安い塗料をインターネットで探している。採算的に厳しい価格と知りつつも、客を失う方が恐い」(神奈川県内のディーラー)と市況の軟化は採算のボーダーラインに近づいた。
最近のメーカー戦略で目立つのは高級グレード製品へのシフト。汎用化した製品では収益を確保できないとの危機感から。いわばプレミアムペイントで利幅を確保する狙い。しかし汎用市場全体がコストに敏感になっている中で、単価的にも高い高級塗料を売り切るには従来の販売スタイルでは難しい。
「施工原価を占める塗料・副資材コストは6‐7%。これが10%になっても他のコストを抑制すればカバーすることはできるはず。高品質にして長寿命化し、環境や安心を買いたいとのユーザーは少なくない」(メーカーの営業担当)という。プレミアム化と同時にメーカーの指名活動が強化されているが、以前とスタンスが大きく異なっている点がある。
指名活動といってもゼネコンや管理会社などが介在した場合、"コストありき"の壁があり、物件を受注しても施工管理コストを含めれば赤字となってしまうのが実態。そこで施主ダイレクトの指名活動に注力している。
マンションオーナー、アパートオーナー、商業ビルオーナー、更には生活者である戸建オーナーがターゲットになってきている。こうしたダイレクトマーケティングでは製品や技術サービス以上にブランド力が試される。
つまり価値に敏感である分、信用や安心を買いたいというのが施主マインド。「業界向けブランドでは意味がない。社会に通用するブランド構築がテーマになる。ブランド競争は消費財では当たり前の世界だが、ようやくこの業界でも切実なテーマになりつつある」(メーカー営業担当)。
建築用と並んでシュリンクしているのが自動車補修用塗料。国内新車販売の頭打ちに加え、保有台数の初の減、直接的には事故車の減少といったトリプル苦の中でじわじわとパイが減り続け、歯止めがかからない。
市場シグナルは事故需要からの脱却を発信しているのだが、硬直した市場構造は旧態依然としたまま。汎用で最も収益性の高かった自動車補修用塗料もジリジリと儲からない世界になってきた。改めて市場コンセプトを180度変える必要性に迫られている。
高コスト時代に対応した塗料産業の在り方がクローズアップ。高付加価値化は高級グレードシフトだけではできないことは明らか。むしろ製品開発から販売・流通、そして塗装までのトータルな価値連鎖(バリュー・チェーン)を構築し、市場のモチベーションを高めるコンセプトを提供できるビジネスモデルを創造する必要に迫られてきた。
最大のテーマは、末端の生活者の価値観から出発したビジネスモデル構築が必要になる。この模索は既に始まっている。塗料ディーラーがモノとしての塗料の販売からペイントカラーをコンセプトとした提案営業の場としてカラーショップを作るケースや塗装業者が集客やコンサルタントできるスペースとしてショールームを開設するなど、新しいビジネスモデルに向けた対応は行動の時期に入っている。
しかしこうした新たな挑戦は個別・分散的な動きのため、生活者や社会に対するアピール度は今一歩。もっとムーブメントとして結束させる核がないと雲散霧消してしまいかねない。高コスト時代を前提としたビジネスモデルが不発に終われば塗料産業として総崩れは避けられないだろう。(芹沢)
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