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2010年08月27日
EVインパクト クルマ造りが変わる
次世代エコカー競争が激化している。エンジンとモーターとの組み合わせで走行するハイブリッド車(HV)から、電池とモーターで走る電気自動車(EV)、家庭電源から充電できる電池で動くモーターとエンジンの両方を備えているプラグインハイブリッド車(PHV)の時代が近づいているためだ。
HVで先行したトヨタ、ホンダに対し、日産のEV「リーフ」、三菱自動車のEV「アイミーブ」に消費者の注目が集まっている。電気を使う車の方がエコ度が高いというわけだ。
特にリーマンショック後、環境戦争が加速し、EVやPHVに追い風が吹いている。米国のグリーンニューディール(グリーン革命)では、2015年までにEV・PHV100万台を市場に導入する計画。このため充電設備網(インフラ)整備の動きが活発化している。
トヨタがEV・PHVで出遅れたイメージを受けているのは、トヨタハイブリッドシステム(THS)を軸として次のPHVに備えるロードマップ(工程表)を作成していたからだ。つまり09年に次世代PHVをリース販売で市場投入するスケジュールで環境先進性は確保できると踏んでいた。
ところが一気にEVに勢いがつき、日産や三菱は世界的な消費者のグリーン指向により活気づいている。
2009年8月―。日産自動車はEV「LEAF(リーフ)」をお披露目した。日産が総力を挙げて開発した5人乗りのセダン。カルロス・ゴーン社長は「今後ルノー・日産アライアンスはゼロエミッション(排ガスゼロ)車に5,000億円以上を投資、開発要員2,000人を投入」と謳いあげた。日産とルノーでそれぞれ4車種のEVを商品化すると発表した。
まず今年後半に投入する「リーフ」を見ると、初のEVの割に従来の車のイメージを変えるものではなく、むしろ平凡なデザインといった印象。これは奇をてらうことなくグローバル市場を狙う世界戦略車だからだろう。
ポイントは専用のプラットホーム(車台)を新たにEV用に設計した点にある。「いちから積み上げて造った」(日産自動車企画・先行技術開発本部・鈴木伸典氏)。
EVの場合、リチウムイオン電池をプラットホームのどこに収納するかがクルマの居住性を左右する。極力小型化できれば広い居住空間を確保できる。
リチウムイオン電池は日産とNECグループとの合弁会社オートモーティブエナジーサプライが開発。その特徴は薄いラミネート型の円筒形で、角型に比べて格段にコンパクトかつ放熱性に優れるという。「リーフではラミネート構造セルをバッテリー・モジュールに格納し、モジュールを組み合わせてバッテリーパックを形成して搭載している」(同)。
EV専用プラットホームの形状は、高性能小型パワートレインをフロントに集約し、薄型リチウムイオン電池を床下にレイアウト。そしてバッテリー、インバータフレームを活用した高剛性車体となっている。モーターとインバータはフロント部に搭載することで広い居住空間を確保。「静かで軽快な走りを体験できる」(同)。
鈴木氏はEVにおけるバッテリーの役割を次のように強調する。「バッテリーはエネルギーの貯蔵だけでなく、パワージェネレータの役割も担っている。このためバッテリーの性能は航続距離、加速、居住性などEVの主要価値を決定づけるもの」。
これまでのエンジン駆動のクルマは燃料タンクでエネルギーを貯蔵し、エンジンを動力とし、変速はトランスミッション。これに対しEVはバッテリーからモーター・インバータによる駆動となる。
日産が電池の開発に着手したのは1992年。三菱と並んで長期間開発に取り組んできた。当初は基礎研究のひとつのテーマとしてリチウムイオン電池の開発に着手。そのリチウムイオン電池は1991年にソニーが世界で初めて開発し、オーディオ機器に導入した。日産は自動車の製品化に向け研究開発を進めた。90年代後半の日産危機を経て、ゴーン社長が就任するや電池開発が全社的に認知された。
1997年にトヨタはHVプリウスを発売。このクルマのヒットによって電動部品の使用量が急激に増え、電池の電気の出し入れをコントロールするインバータも小型化が進み、EVなどエコカーの基幹部品も高密度化される。
日産のラミネート型のリチウムイオン電池は他社に先行した。そのメリットは部品が軽量化でき、モジュール化で点数を削れて安くできる。更に設計上レイアウトしやすく、正極がマンガン系で安全性が高い。
「ラミネートイオン電池の開発は1992年より着手。他社に先駆けました。リチウム筒型に比べ、ラミネート型は出力で2倍、エネルギーも2倍にパワーアップ。サイズは2分の1にコンパクト化。特に安定した結晶構造を持つ材料を使用し、ラミネート型なので高い冷却性がある」(同)。ラミネート型は鉛電池の8分の1、研究スタート時の2分の1に小型化。ガソリン車同等の室内広さを実現した。
リーフは短距離であれば家庭で充電できる。単相200V(‐20A)で8時間充電。急速充電は3相200Vで30分。これは充電ネットワークのインフラとして整備されることが前提。EVの普及による交通システムの最適化を目指し「ヨコハマモビリティ"プロジェクトZERO"」がスタート。また世界50のパートナーとグローバルパートナーシップをスタートする。
EVがもたらすものについて鈴木氏は「クルマの造りが変わる」と指摘。エレクトロニクス部品が主体になり、構造のモジュール化が加速する。現状のガソリン車のエレクトロニクス部品が30%に対し、EVは70%超。こうしたことでコスト低減に大きな可能性があるという。
またクルマの魅力が変わり、EVは新たなドライブの楽しさも生み出す。ゼロエミッションによる高いエネルギー効率と安い燃料コスト。胸のすくような加速感とスムーズな発進。エンジン音のない静かさ。そして毎朝自宅で充電満タンにできる利便性。
そしてクルマを取り巻く産業も変化を迫られる。EVが作り出すビジネスチャンスとして電力マネージメントの分野がある。事前エネルギー利用の拡大や、スマートハウス、バッテリーの2次利用。日産はバッテリーのレンタルによるリサイクルシステム構築を考えている。充電インフラに関してはサービス産業(コンビニエンスストアなど)とのシナジーを狙う。EV部品分野ではパワーエレクトロニクス部品の拡大やインフラ関連機器、そしてカーシェアリングや公共交通との連携による新モビリティービジネスが誕生してくる。
「EV時代はクルマそのものが情報を作り出すことになる」と鈴木氏。乗車時はもちろんのこと、クルマに乗車していないときでも24時間ITがサポートする。充電完了通知、航続可能範囲、タイマーエアコン、充電ステーションの位置、トリップ清算などをITで支援する。クルマ自体が24時間の通信モジュールとなる。
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