2017/01/27 15:19

ペイントショップの理想像追求 脱・従来型ビジネスに確信 タカラ塗料

塗料販売店の新たな挑戦が始まっている。大阪市のタカラ塗料(大野一馬社長)は従来ビジネスへの限界感からB to Cビジネスへと舵を切る中で、塗料を魅力化する演出や楽しみ方の提供に発想を集中、独自の提案スタイルでペイントファンを広げている。店の外観もヨーロッパにある本格的なペイントショップのたたずまいにリニューアル、新たな塗料店像へ向けアクセルを踏みこむ。

昨年11月、店舗の外観を大胆にリニューアルした(写真下)。イメージしたのは「ロンドンに古くからあるペイントショップ」(大野氏)。深みのある渋いグリーンの外壁、アンティークゴールドのショップサイン、窓回りや天端のモールディング、エイジング加工、ロートアイアンの看板など随所にこだわりを見せるたたずまいは存在感抜群。「通りがかる人が思わず立ち寄りたくなるペイントショップ」は、新たな塗料販売店像を追求する同社の象徴でもある。

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店舗全景。停まっているのはDIY塗装車


モノ売りからコト売りに発想転換

同社は昭和24年に大野社長の祖父が創業した塗料販売店。周辺には中小零細の町工場が集積しており、それらへの販売で経営を成り立たせていた。大野社長が後継者として家業に入り、祖父が他界した後の平成19年に社長に就任したが、景気停滞の波で周辺の町工場が廃業や移転などで減少、従来型の商売の限界が見え始めていた。
そこからビジネスの在り方をシフトさせていく。単なる商材としての塗料からその価値を売る方向、いわばモノ売りからコト売りへの発想の転換だ。


その1つのコンセプトが「調色屋」。祖父に叩き込まれた調色技能を武器に日塗工番号・マンセル値による調色を1kgから受け付けるビジネスをネットでスタート。「お客様は塗料そのものではなく『色』を必要としている」との発想に立ったもので、新たな塗料ビジネスとして経営の1つの柱になるとともに「塗料の価値、魅力を売る」というコンセプトを方向付けた。
その方針のもとオリジナル商品の開発にも積極的に取り組む。
「刷毛とローラーで車を全塗装しよう!」と、塗料とツールをセットにして愛車のDIY塗装キットを発売した。プロ(板金塗装業者)がスプレーテクニックを駆使して仕上げる車の全塗装を、素人に刷毛とローラーでやってもらおうという型破りな発想は業界でも注目された。「本当に売れるの?」という外野の声をよそに2年ほどの間に1セット数万円の商品が3,000セット以上を売り上げ同社の看板商品に育った。『クルマをもっとカジュアルに楽しみたい』という消費者のニーズに響いた。


一方、DIYでモノや部屋のデコレーションを楽しむスタイルが女性を中心に広がってきていることを背景に、そこへ向けたオリジナル商品のラインアップも同時進行で進めた。
女性の間で人気が定着してきた「チョークボードペイント(13色)」を始め、オリジナルのゴールド色、アイアンテイスト、エイジングセットなどをラインアップ。アンティークやビンテージテイストを表現できる塗料として人気が高まっている。
塗料のパフォーマンスもさることながら秀逸なのはそのパッケージデザイン。塗料としてではなくインテリア小物として買い求める人がいるほどの完成度の高さで、自社サイトや店頭の他、インテリア雑貨やDIYショップ、アンティークショップなどからの取り扱い希望も寄せられ全国的な広がりを見せている。
「塗料をモノとしてではなくコトとして売ろうとした場合、その動機を引き出す魅力をいかに演出するかがポイント。思わず手に取りたくなる商品パッケージ、立ち寄りたくなるショップづくり、やってみたくなる塗料の使い方提案などすべてがそこにフォーカスしています。そして何よりも私たち自身がそのビジネスを楽しみ、魅力を感じていることが市場に伝わっているのだと思う」と脱・従来型ビジネス、理想のペイントショップへの手応えをつかんでいる。


女性が働きたくなる職場

同社の人員は大野社長を含めて現在7名。そのうちの5名は若い女性だ。1人で切り盛りしていたころに比べると社内はとても賑やかになった。
大野社長が目指したペイントショップにはどうしても若い女性の感性が必要だった。"こんなお店にしたい"という思いを記した募集チラシを用意し、自ら手配りで近隣にまいた。配布した800枚に対し10名もの応募があり、目指す方向の正しさを再確認できた。
そのうちの1人を採用。働き始めてから間もなく『タカラ塗料で働かせてほしい』と友人を2人連れてきた。彼女たちにはタカラ塗料での仕事がとても魅力的に映ったのだ。


アンティーク小物や木工作品などのサンプル作り、店作りのDIY作業、ワークショップのインストラクター、そして個人ブログの開設と更新などの表現ワークが女性スタッフの主な仕事。クリエイティブな内容の仕事は楽しく、年季の入った職人風の前掛け姿で働くさまも彼女たちの目には魅力的に映る。女性スタッフの存在や働き方もまたタカラ塗料のブランディング戦略なのだ。醸し出された雰囲気が好感されファンが広がるループ。
「塗料にはまだまだ潜在的な魅力が詰まっています。それを引き出し、ハンドリングして市場に投げかけていくのがペイントショップの仕事。こんなにクリエイティブで面白い仕事はない」(大野社長)と閉塞感は微塵もない。

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スタッフ。年季の入った前掛けがキマっている。右が大野社長。

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