2017/02/28 09:27
,

酸化チタンに健康リスク低減求める 厚労省 関係団体に通達 

厚生労働省は昨年12月、リスク評価を行った酸化チタンを含む3物質において健康障害防止措置を直ちに検討するとして、関係諸団体に健康リスクの低減に取り組む旨の通達を出した。酸化チタンは塗料の白色顔料として多用されている主要原料のため業界に与える影響は大きく、法制化を含めた今後の動向に警戒感が強まる。

日本塗料工業会は1月25日、昨年12月に厚生労働省から「リスク評価結果に基づく労働者の健康障害防止対策の徹底について」と題した通達を受けたことを公表。厚生労働省は化学物質のリスク評価検討委員会において、酸化チタン(ナノ粒子を除く)、2-ブロモプロパン、ノルマル-ブチル-2(3-エポキシプロピルエーテル)の3物質のリスク評価を行い、報告書を取りまとめたことを伝えた。加えて当該3物質に対し、今後の詳細リスクの結果を待たず事業者に作業者の健康リスク低減に取り組むことを求めている。
健康リスク低減への取り組みとして求めるのは、労働安全衛生規則(安衛則)第576条、577条、593条、594条の規則に基づく措置。
具体的には、原因除去のための代替物の使用や作業方法などの改善、発散源を密閉する設備の設置、局所排気装置または全体換気装置の設置、作業者に対する保護衣・保護眼鏡・呼吸用保護具などの着用、不浸透性の保護衣・保護手袋などの着用が盛り込まれる。


しかし、法規制と異なる形で国が事業者に対し健康リスクの低減を求める事態に、企業の自主的取り組みを促すベストミックスを見据えたものか、法制化に備えた注意喚起を意味するものなのか、業界関係者は戸惑いを見せる。
これについて厚生労働省は「健康障害防止措置の検討を行う予定にあるが、公表した事実以外に申し上げられない」と特化則を含む法制化の可能性について言及はなかった。
そもそも厚生労働省が酸化チタンのリスク評価のためばく露作業報告対象物質に指定したのは平成21年にさかのぼる。
酸化チタンに対してヒトに対する発がん性が疑われるとする「2B」グレードと評価する国際がん研究機関(IARC)や、疫学研究からの証拠が限定的であり、動物実験からの証拠が十分でない。もしくは疫学研究からの証拠はないが、動物実験からの証拠が十分とする第2群Bに評価する日本産業衛生学会など、国内外の各機関の評価を背景に国としてもリスク評価を進めてきた経緯がある。


その結果、昨年12月に酸化チタンのリスク評価書をとりまとめ、急性毒性、皮膚刺激性、皮膚感作性、生殖毒性、遺伝毒性などについては「なし」あるいは「判断できない」としたものの、発がん性に対してはラットによる全身吸入ばく露実験を通じ「ヒトに対する発ガン性が疑われる」と結論づけた。
しかし、これに対して酸化チタンメーカーで組織する日本酸化チタン工業会は反発。早い段階から評価機関によって発がん性リスクの判断が異なることや、ラット試験の信憑性及びヒトとの因果関係を示す証拠が不十分であることなど、工業生産されて約100年の実績を有する酸化チタンの実用安全性を訴求しており、今後の検討会に議論の場を移すこととなる。



塗料・塗装への影響は

現在、酸化チタンは国内で年間約20万トン生産されており、そのうち塗料に使用されている割合は約4割に達する。白色顔料として屋内外のあらゆる分野の塗料に使われており、他の規制対象物質のような代替物質がない点からも影響は大きい。
それでは国は、塗料、塗装のどのような作業において、酸化チタンの影響が健康に及ぶとしているのか。それを示すものとして、リスク評価書では吸入ばく露の実態調査の概要と結果を記載している。
平成22年度に対象事業場を選定し、酸化チタンの「袋詰め」「分取・微調整」「梱包」「充填」「投入」「塗装」各作業の吸入ばく露調査を実施。その結果、①酸化チタンを塗料として使用する粉体塗装の作業②酸化チタンを製造する事業場で臨時に行われた篩い分けの作業の2点で高いばく露量が見られたとしている。また、ばく露防止対策として局所排気装置が設置されていないところや、呼吸用保護具が使用されていない状況なども認められたとしている。
加えて平成22年度から27年度に実施した個人ばく露の最大値は、酸化チタンの粉体塗装をしている作業で3.1mg/?(吸入性粉じん)と報告した。


吸入性粉じんのばく露量の指標となる二次評価値(1mg/?)を上回った作業内容として、①粉体塗料塗装作業(105分)、清掃1回(約10分)、モップ(乾式)、圧縮エアー清掃②粉体塗料(白)補充作業(10分)③酸化チタンが含有されている白系の塗料を用いた金属製品の粉体塗装。加えて色替え時に床、作業衣などの清掃(エアー吹き)を実施(2.5時間程度)の3作業を挙げており、粉体塗装の工程で酸化チタンのばく露量が高いとの測定結果を示した。
今後、使用範囲や数値基準を含め、健康障害防止措置の検討結果を待つ形となるが、メーカーサイドでは酸化チタンの代替物質による塗料開発は現実不可能としており、塗装作業における健康安全対策が一段と厳しくなることが予想される。

関連記事

powered by weblio