2017/03/17 16:44
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模索するディーラー Hotspot・沖縄レポート

沖縄マーケットの塗料の市場規模は約70億円(商業統計)と決して大きいとはいえない。しかし、戦後の米軍基地による影響で独自のペイント文化が育成され、更に台風など厳しい劣化環境対策がメンテナンスへの関心の高さにつながるなど、塗料需要のHotspotなのだ。その一方で課題もある。需要依存型のこれまでの市場対応では限界があり、自らが需要創造していく方向への模索が続いている。



沖縄の塗料関連需要のピークは平成14年の116億円、塗料ディーラー数で46社店。現状は約70億円、22社と激減している。とはいえ、ここ10年余り、塗料ディーラーの増減はなく、売上的には横ばい基調となっている。しかし経営の内実を見ていくと、決して楽観できる状況にはない。「ディーラー間の業績格差が広がりつつある」(某ディーラー)という。
沖縄の塗料需要の構造は、建築汎用と自動車補修用を中核に船舶用が一部あり、工業用はほとんどない。極端に汎用に偏った形態に特色がある。しかも建築汎用の需要は景気変動の影響が少ない。これは沖縄の風土によるものといえる。台風の上陸で塩水による劣化が激しく、建物でも車輌でも台風一過は水洗いするのが習慣となっている。「クルマは塩害ですぐ錆びてくる」(タクシードライバー)状況。


沖縄の建物は集合住宅や公共建築物までがっしりとした鉄骨入りのコンクリート造りが主流。マンションの外装もタイル張り仕上げは少ない。タイルのシーリングが劣化するためだ。従って外装は塗装仕上げがほとんど。
また、鉄部の腐食対策も重要だ。塩害によって鉄部は常にメンテナンスが必要になる。公的な統計はないが、錆止めペイントの需要は国内でも有数の地域となっている。
一方、沖縄には独特のペイント文化が根付いた。戦後、米軍の進駐で米国流ライフスタイルが浸透した。基地の施設は定期的に塗り替えられ、基地の住宅では家族でペイントを塗る姿が見られたため沖縄の人たちも自然とペイントが身近なものとなる。
県民1人あたりの塗料需要は国内トップクラス。工業用需要がほとんどなく、建築汎用が70~80%占めていることを考えると生活に根付いたペイント需要がある。ランダムに那覇市民20人に聞いたところ、80%近い人が塗装した経験があるとの回答だった。

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コンクリート造りの頑丈な建物が多い


塗料流通から見ると、県内に22社の塗料ディーラーが存在し、従業員数は約140人程度。船便のため1カ月の在庫が必要不可欠となり、各社店ともにストックヤードを確保。またこれも沖縄の特色の1つだが、各社店は調色機能を保有し、専任の調色技能士を配置する。在庫・保管に加え、流通加工機能のメインである調色を装備し、流通の役割をベーシックに果たしている。
一見安定した需要であるマーケットのように映るが、変化は目立つ。公共事業の抑制などによる塗装工事量の減少、リフォーム業と塗装業の競合など塗装市場の変動が激しくなってきている。塗料ディーラー間の消長も目立つ。
最大の課題は潜在需要の喚起にある。今ある需要への対応だけでは成長を見込めない。いかにマーケットを深耕するかが共通テーマといえる。模索する塗料ディーラーのトップに聞いた。

改修分野で伸ばす
共和ペイント

20170301-6-2.JPG共和ペイント(本社・糸満市)は改修に対応した防水材や注入材など、塗料周辺の商材を広く扱うことで企業成長につなげている。従業員数も県内トップクラスの29名を擁し、積極的な展開が目立つ。
「ここ10年余り人づくりに集中してきた。材料供給だけでは限界がある。取引先に役立つサービスを徹底するため、社員のノウハウを高める必要があった。特に説明能力のアップに加え、時間厳守をポイントに置いている」(社長・玉城利勝氏)とコメント。
同社の活力は若い人材にある。20~30代の社員が目立ち、フットワークがいい。「若いだけでは顧客からは認めてもらえない。商売の心を持って接しなくてはならない」(同)
商売の心の意味合いは、接客対応に集約される。人としてのマナーを大切にし、お客から求められる人材になってほしいと玉城社長はいう。そのため業務のチェックを徹底。それが客と約束を守るための時間厳守となってフィードバックされる。
同社は改修全般をカバーするばかりでなく、車輌や重防食分野を強化していく方向だ。クライアントとの信頼関係をベースに更なる成長を目指す。

再出発で挑戦
浜崎ペイント

20170301-6-3.JPG2年前に社長に就任し、事業の再構築に全力投球する。「10年余り塗料商売とは離れていたので、なかなか感覚を取り戻せなくて。でも心機一転し、ゼロからやり直したい」と社長の浜崎清美氏。
浜崎ペイント(本社・那覇市)は会社分裂によりメインの特約関係が変わり、関西ペイントと日本ペイントに移行。この2年間は客を引き止めることに注力してきた。それもほぼ一段落し、攻勢をかけたい意向だ。
「関ペ、日ペという2大メーカーの特約店となった意味合いを生かしていきたい。従来の事業の枠組みにとらわれることなく、一般の消費者までをカバーできるビジネスに改める」(同)と前向きだ。事務所スペースの一角をショールーム化し、塗装教室を開いたりイベント企画で集客していく。「ペイントカラーの魅力を発信できるショップにしていきたい」との構想を抱く。

商売の基本大切に
新田ペイント

20170301-6-4.JPG新田ペイント(本社・宜野湾市)は"住まいの快適空間を創造する"をコンセプトに生活者を視野に入れる。与信問題から客先を大きく変更し、塗装業者中心からリフォーム業者へシフト。その結果、収益面を含め安定化を実現する。次のステップは地域密着にある。
「ペイントショップとしての知名度はあるものの、塗り替えやリフォーム需要ばかりに傾倒している体質では本当のペイントの価値は訴求できない。ペイントカラーと生活シーンとの接点づくりをする必要がある」と社長の新田宗則氏。
そこで対人サービス力の向上がテーマとなる。「材料や施工に関するノウハウは専門店として当たり前のサービス。どのような生活をしたいのか、どのような空間を求めているのかを基点としたサービスを創造する必要がある」(同)。それには調色機能を色彩提案していくツールにしなくてはならない。「モノ売りからコト売りへの転換がないと将来が見えてこない」と次世代に向けた業態を模索する。

カラービジネス着手へ
アクタス産業

20170301-6-5.JPG新卒採用を継続してきた。大卒や専門学校を中心にリクルート。その中でビジネスの将来性や魅力をどう伝えるかを工夫する。「優秀な人材を採るには見せ方、採り方が大事。塗料事業は社会を支える仕事という認識を持ってもらえるように事業形態を変えていきたい。方向性としてカラー事業を含め創造性のある仕事の面をアピールし、働きがいを見出せる職場環境づくりが必要だろう」(代表取締役・砂川豊蔵氏)。
同社はこれまでも幹線道路沿いにカラーショップを出店しカラービジネスを具体化したものの、半年余りで撤退、その要因のひとつがカラービジネスの未成熟にあったと判断する。「その時の状況と様変わりしている。DIYブームを見ていると、女性の力がそこに感じられる。生活を変える力としてカラービジネスが成り立つ時代が近づいていると感じている」(同)。
今後、いちから人材を育成し、独自のスタイルでカラービジネスに再び挑戦したい意向だ。

業態を変えたい
仲里ペイント

20170301-6-6.JPGある日突然、父親である社長から「会社のことはお前に任せる。口は一切出さない」と言われたという。当惑する反面、ペンキの世界で育ってきた感覚もあり奮い立つ。9年ほど前のことだ。しかし、社員との間の意識のズレはすぐに表面化し、大きな壁に直面する。
「ルーティンで仕事をしている中で新しい仕事の仕方を提案しても反発されてしまい、事業の方向性が見えなくなった」(代表取締役・新里亜也子氏)と振り返る。
課題ばかりが山積する中で、重要だったのは顧客との関係強化。「ただ商材を供給するだけでは差別化は難しい。顧客の仕事につながるサービスなり、提案が不可欠。そのために顧客の先にある生活者の動向まで見据えなくてはならない」といった思いは、ルーティンに慣れた社員には通用しなかった。
現在、その当時の社員で残ったのは1人。孤軍奮闘が続いたが、女性中心に採用を進めるとともに、会社の体質を転換してきた。「塗料という商材の持っている創造性を引き出したビジネスにしていきたい。カラーバリエーションばかりではなく、モルタル造形などの要素を加え、デザイン性のある表現力を発揮し、付加価値をつける仕事がディーラーの役割ではないでしょうか」(同)と考えている。

県内シェアトップ
エスケー化研

20170301-6-7.JPG沖縄マーケットにおける塗料メーカーの勢力図はエスケー化研の強さが目立つ。県内の建築汎用シェアの50%以上を押さえ、ダントツのトップ。設計指定活動を積極的に行っており、他メーカーとの差は大きい。「競合メーカーの駐在員が1~3名に対し、エスケー化研は11名を投入しており、人員からして違う。我々ディーラーフォローも他社は九州からサポートでカバーする態勢に対し、現地完結型でスピーディ」(某ディーラー)。
先日19年ぶりに開かれた大塚刷毛製造主催「沖縄マルテーフェア」に来た塗装業者は「メーカーの中で沖縄の事情を最もよく知っているのがエスケー化研」と対応を評価していた。

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