2017/03/15 13:50

塗装の技術革新、科学的アプローチ ダイハツ、トヨタの研究開発

自動車メーカーはCO2排出量削減に向け塗装工程の省工程・省エネ化の取り組みを加速させている。ダイハツ工業はメタリック塗装の彩度や明度に影響を及ぼすアルミフレークの配向挙動を可視化することに世界で初めて成功した。また、トヨタ自動車は従来のベンチュリー式からサイクロン式集塵装置を備えた塗装ブースを開発し、エネルギー使用量40%削減を達成した。既に堤工場の量産ラインに導入しており、他の量産ラインへの展開も見据える。自動車製造において、最もCO2排出量が多いとされる塗装工程の省工程・省エネ化は待ったなしの状況だ。

2月17日、日本塗装技術協会主催の講演会には約110名が集まった。演題では自動車の塗装に関する内容が並び、中でもダイハツ工業とトヨタ自動車の自動車メーカーによる塗装技術の取り組みに関心が集まった。

世界初、塗膜形成過程の観察に成功
ダイハツ

ダイハツ工業では2013年発売の軽自動車「タント」以降、新車種のフェンダーやバックドアに樹脂外板を積極的に採用している。ただ、ボディの鋼板と樹脂外板では塗装仕様や乾燥条件が異なるため塗装の色合わせが難しく、樹脂外板の割合が増えるほどその難易度は上がっていく。
同社によると「生産準備の膨大な工数によって色合わせを達成していた。塗装生産準備においてメタリック塗装の色合わせは最大のボトルネック」との課題を指摘。
メタリック塗色は含有する光輝材、主にアルミフレークの配向による影響が大きい。そこで同社ではその挙動のメカニズムを知ることでトライ&エラーでかかる色合わせ工数が低減できると想定し、アルミフレークの状態変化の可視化を目指した。
可視化するため、「非常に強力なX線を使うため短時間で鮮明な画像が得られる」ことから大型放射光施設「SPring-8」(兵庫県)を利用し放射光による観察を行った。その結果、塗膜断面方向の塗膜形成過程を世界で初めて観測することに成功、アルミフレーク動的挙動を可視化した。
実験結果からは①塗装直後では塗料の溶剤濃度や溶剤の揮発速度に関わらず、アルミフレークの配向に大きな違いはない②溶剤濃度が高いまたは揮発速度が遅い塗料はアルミフレークの配向に対して、溶剤揮発に伴う膜厚収縮の影響を強く受けることが判明した。
この実証からメタリック塗装の色合わせの課題がすぐに解決できたわけではないものの、「色がばらつくメカニズムの一端が可視化できたことは有意義」との見方を示す。今後は時間ごとの分解能を向上し塗着初期のアルミフレークの動きを明確化し、配向メカニズムの解明を進めることで、塗装生産準備のやり直し低減などを目指す。

ミスト捕集率97%、新塗装ブース
トヨタ

トヨタ自動車ではCO2排出量が最も多い塗装工程、そのうち52%を占める中上塗りブースでのエネルギー削減を目指し、新塗装ブースを開発した。
従来、塗装ブース床下のアンダーセクションと称するピット内の装置で塗料ミストを回収していたが、新開発ブースではサイクロン式集塵装置を横に設置することでピットレスのコンパクト化を実現。同時に塗装ブース内の気流を安定化させるなどして圧力損失を減らす設計を導入。
開発前に掲げた塗料ミストの集塵効率の目標は97%以上。サイクロン集塵装置では処理粒径が50μm以上であることから、目標数値を達成するためには20μm~50μmの小粒径の塗料ミストを捕集する必要があった。
サイクロン集塵装置の原理としては遠心力で塗料ミストを壁に衝突させて捕集するが、遠心力が小さい小粒径だと衝突せずに飛んでいってしまう。そこで、スプレーで水滴を噴射させ小粒径の塗料ミストを粗大化して捕集する設計とした。
理論計算やシミュレーション、小型実験装置を用いて設備条件を決めた。安定した旋回気流が形成されることから螺旋ガイドを備えた上部排気の配置とした。
その結果、新開発した塗装ブースでは目標の集塵効率を達成。効果としてエネルギー使用量40%削減、設備の高さでも40%抑えている。約1年前に堤工場の量産ラインへ導入しており、今後の量産ラインへも展開していきCO2削減を図っていく方針だ。
自動車分野に限らずどのメーカーでも塗装工程の省エネ化は重要課題になっており、アプローチとしては前処理、塗装、焼付乾燥の装置改造といったハード面に加えて、省工程や生産性向上などソフト面があるため多岐にわたっている。
その際、これまでの経験則に基づいたものだけでなく、科学的な実証をもとに新たなアプローチが課題解決に重要となっている。

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