社会インフラ保全特集 社会資本を守る塗料・塗装の役割

海洋プロジェクトをリードする

中国塗料

中国塗料が海洋構造物の重防食分野に本格進出したのは2006年で、この分野の海外大手塗料メーカーに比べて大きく後れを取っていた。後発メーカーとしての新規参入には2つの大きな壁が立ちはだかっていた。

ひとつは技術的ハードルの高さ、そしてもうひとつは石油会社(メジャー)などのスペック認証制度。海洋構造物の建造はスペック認証と実績がものを言う世界。しかし、厚い壁は思わぬところから開ける。

ベネチアの冠水を防げ!

イタリア・ベネチアの冠水を防ぐ防潮堤建設プロジェクトで、中国塗料の防汚塗料「バイオクリン」が正式採用されたのだ。世界遺産都市ベネチアは冠水の被害を度々受けてきた。そこでイタリア政府は1980年代末より約7,000億円規模のプロジェクトをスタート。アドリア海とベネチア・ラグーンを隔てる砂州の間に1.6kmもの防潮ゲート(図参照)の建設を計画。しかも景観保全のため固定式の陸橋方式ではなく、通常は海底に沈め、必要時に空気を注入し浮上させるシステムを採用することになった。

「バイオクリン」が塗装されるのは78基の鋼製フラップゲート式可動堰。塗装システムには高い防食性能と防汚性能、そして環境負荷を最小に抑えることが要求される。

5年ごとにドライドックで検査、補修を行う船舶に比べ、常時海水にさらされ、かつ15年以上もの連続操業が要求される環境下での防食には船舶用塗料とは異なる塗料技術が要求される。現状、海洋構造物特有の性能を満たすことのできる塗料メーカーは欧米を中心に6社程度に限られ、そこに中国塗料が割って入った格好だ。海洋構造物の国際スタンダードは北海を囲むヨーロッパの海洋先進国が牽引している。同社は関門を突破するため「NORSOK M-501」「ISO20340」といった塗膜の防食性と耐久性を評価する規格をクリア。更に欧州石油メジャーのスペック認証を得るなど下地づくりに努めてきた。

一方、防汚塗料に要求される性能も船舶用とは異なる。船底用防汚塗料のスペックでは船舶が平均10〜20ノット(5.1〜10.3m/秒)のスピードで走行することを前提に防汚性を設定するのに対し、静置される海洋構造物は1ノット(0.5m/秒)程度の自然界海流で5年間の防汚性能発揮が条件となる。

ブレークスルー技術

中国塗料のブレークスルー(技術革新)は、シリコンエラストマー技術にある。一般的な船底防汚塗料では防汚剤と特殊ポリマー技術が骨格となるが、ベネチアの近海は漁業が盛んなところでもあるために汚染防止のための防汚剤を使用できない。

開発された「バイオクリン」は、表面自由エネルギーの低いシリコーン系合成樹脂を複数の特殊な表面調整剤で変性することで表面構造を疎水-親水のミクロ相分離構造とすることに成功。いわばイルカやウナギに見られる魚体表皮に類似したぬるぬる・ツルツルした表面を形成する。

ベネチアの通称「モーゼ・プロジェクト」は「バイオクリン」に注目。10年以上塗料メーカー各社のシステムを試験した結果、「バイオクリン」の防汚性と保全性が高く評価され公式に採用されることになった。

このニュースは世界中を駆け巡る。中国塗料にはいろいろな分野・企業からのオファーが入るようになる。福島や千葉、長崎に設置された洋上風力で次々と採用され、次世代再生可能エネルギーといわれる海流発電、潮流発電、波力発電でも採用の可能性が高まっている。更にこの技術は近いうちに発生するといわれている東南海地震の津波対策でも重要な役割を担うだろう。

「バイオクリン」とともにコンクリート防食用としてエポキシ樹脂塗料「コンテクト」が世界から注目されている。湿潤面用・水中塗装用の2バージョンがあり、水中塗装タイプはオンリーワン製品だ。

海洋プロジェクトは世界で目白押し、同社はこの分野での主導権を狙う。

主な実績

  • イタリア・ベネチア「MOSEプロジェクト」78基の鋼製浮上式水門
  • ロシア・サハリン「LNG-2プロジェクト」850mのLNG積み出し用桟橋
  • ベトナム「日越友好橋(ニャッタン橋)」全長1,500mの斜張橋
  • 日本「羽田空港D滑走路」世界初の人工島と桟橋のハイブリッド滑走路
  • ラオス「ナムトゥン2水力発電」1,080MWラオス最大の水力発電
  • ロシア「浮きドックさくら」日本政府によるロシア退役原潜解体協力事業
  • 日本・洋上風力発電 福島復興「浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業」

企業プロフィール

中国塗料は1917年(大正6年)創業、船舶塗料では世界トップメーカーの1社という地位にある他、工業用の分野においても独自スタンスを有している。企業ポリシーは「自然と人との調和を目指すリーディングカンパニー」。
 売上の約70%を占める船舶用塗料は塗料分野でも最も早くグローバル化。同社のサービスネットワークは30カ国以上・約80拠点を有し、船舶用の他、海上コンテナ用、プラント用、木質建材用のサプライチェーンを整備。自社生産拠点はヨーロッパ(オランダ)、アジア(中国の上海・広東、日本、韓国、シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア)、アメリカに有している。

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