Web特集
2005年03月02日
シリーズ: 揺れるライン塗装
揺れるライン塗装 No.122 江戸崎共栄工業 粉体と水性で効率生産を達成 究極のエコファクトリー目指し
昨年の10~12月期の実質国内生産(GDP)は前年比率で0.5%減となり、3四半期連続のマイナス成長となった。景気の踊り場を懸念する声は依然強いものの輸出は好調。また機械受注もこの第3四半期は前年比6.0%増と2期ぶりに増加した。各産業界、低価格化が進行し利益なき繁忙が続くなか、生き残りをかけた投資を行い、合理化、効率化に懸命だ。
この1~2年、スチール家具メーカーはVOC規制やシックスクール、シックハウスへの対応からF☆☆☆☆の認定を得るためホルムアルデヒドフリーの塗装仕様に変更。従来の溶剤系塗装から粉体塗装に切り替えている。
平成3年に江戸崎共栄工業は内田洋行のスチール家具、OA関連家具の製造会社として設立。環境に恵まれた霞ヶ浦(江戸崎町)に面し、12万3,000m2の敷地に工場棟(1万3,000m2)と厚生棟(6,400m2)を擁し、"ウチダエコ・リゾートファクトリー"として人と環境をテーマにモノ作りに取り組んできた。2001年に茨城県リサイクル優良事業所に認定。2002年には同県の地球に優しい企業賞を受賞するなど環境との共生のモデル工場として見学者も多い。
工場環境への取り組みは「当時は作業環境の改善から入り、塗料・接着剤の脱有機溶剤化、脱危険物化を目指した。また資源の有効活用を考え、塗料はリサイクルして再利用出来るシステムを導入。更に、霞ヶ浦に面していることから外部排水・廃液ゼロの工場にする必要があった」と同社取締役工場長・別府公氏は当時を振り返る。工場建設には100億円強の投資が行われた。
塗装は従来の溶剤系塗装に替わり粉体塗装を採用するとともに、水性リサイクルシステム(日本ペイント・RWBシステム)を導入した。「水性塗装は吹付プロセスで製品に付着しなかった塗料は回収。ろ過装置によって水と分離し、成分調整を行い再利用する。分離した水は工場内の浄化装置を経由し、循環させて再利用する完全クローズドシステム」と説明する。
また廃液は加熱された回転ドラムによって水分を瞬間蒸発(ドラムドライヤー)させ、工場廃液ゼロにする仕組み。「1カ月の産廃量はドラム缶1本程度」と大幅な産廃物の減容化を達成した。
回収効率90%以上の粉体
工場は鋼板のカットから組み立てまでの一貫生産ラインとなっている。
前処理ライン(30m)はアルカリ脱脂→脱脂→第1水洗→第2水洗→第3水洗→表面調整→皮膜化成(リン酸亜鉛鉄)→第4水洗→第5水洗→第6水洗→第7水洗→第8水洗→水切り乾燥(160℃×15分)の工程。また第7水洗の水を脱脂に、第8水洗の水を第3水洗、表面調整に持っていく向洗多様式を採用し水の節約に努めている。
前処理後、被塗物は粉体塗装と水性リサイクルシステムに分離される。それとは別に袖机の引戸や引き出しなどの凹凸形状のものは電着ライン(88トン浴槽・グレー)で仕上げている。
粉体塗装は箱物の淡彩色を中心に26色に対応している。そのうちの半分の13色がメーン色となっている。内面用と外面用の2ブースに補正ブースを直列に設置。内面塗装は塗装ロボット(川崎製)に追随型の3軸ロボット(1レシプロ5ガン)で塗装を行っている。採用しているガンはコロナ帯電方式。1ガン当たりの吐出量は100~130g/min。平均膜厚40μm。非回収。
また外面は1レシプロ6ガン(コロナガン)を対面に設置し、低面は固定ガンを配置して塗装を行っている。1ガン当たりの吐出量は箱型の開口部側が90g/min、背面側が120g/minに設定。
この外面用ブースは全量回収しており、回収装置にマルチサイクロンを採用。回収装置の下部の回収タンクは入れ替え可能な構造になっている。また定量供給装置はジャストフィード(日本パーカライジング製)を採用。「現状の回収効率は90%強。色替え頻度は1週間に3~4回程度で、色替えに伴う清掃時間は1人で約30分」と生産部生産課長・鈴木博司氏は説明する。
更に補正ブースは内面のコーナー部の付き回りを補正する目的で行われている。同粉体塗装の現場は1人。粉体塗装のラインスピードは3.5m/min。焼付温度は180℃×20分。1カ月の粉体塗料代は400~500万円。粉体塗装ブースは日本ペイントのNPCブースシステム。
水性で高い生産性実現
一方の水性リサイクルシステムは国内1号機とあって、安定化するまでに時間を要したようだ。「当時、欧州では実績が出ており、現物を見にいって決めた」経緯がある。しかし環境が異なるなかで水性塗料の管理に苦労した。「特別に空調はしていないので、雰囲気(環境)によって塗料のタレ、ワキが発生し、タレ・ワキ限界の調整に手間取った」(別府工場長)と打ち明ける。
また当時は水性塗料対応の機器が揃っておらず、ギアポンプで塗料を送ると1週間で使えなくなる他、ボルテージブロックの問題など手探りで一つ一つ解決していく悪戦苦闘の連続。
続けて「当社は標準色のペールグレーが80%を占めることから頻繁な色替えが少なくて済む。指定色もオーバースプレーしたものはリサイクルして利用する仕組みが組みやすい。その辺も考慮し水性リサイクルシステムを採用した」と導入の事情を説明する。
現状の水性リサイクルシステムは箱物専用塗装室と板物専用塗装室からなり、箱物は内面塗装と外板部、天部・低部塗装の3ゾーンに分かれる。内面の塗装は塗装ロボット4台にエアレススプレーガンを装着して塗装。外板部3面は1レシプロ4ガン(エアー静電ガン)3基で塗装を行っており、天部及び低部はレシプロ塗装機4ガンと2ガン(いずれもエアースプレーガン)を装備して行っている。また板物の塗装室は1レシプロ4ガン2基に補正を加えて仕上げている。なおラインスピードは3.5m/min、セッティング時間約15分、焼付温度160℃×20分に設定している。1カ月の塗料代は約600万円。
単色のリサイクル条件はブース水量15㎥、URモジュール4本×2セット、濃縮頻度1回/7日間、濃縮時間100時間/1回。
塗料粘度は20~25秒、平均膜厚20~25μm。「一昨年、塗料を水性リサイクル用に開発したオーデリサイクルS551に切り替えた。これによってワキの発生が減った」と鈴木氏。現在の水性静電塗装システムはノードソンのIso-Floボルテージブロックシステム。
メタリックの水性リサイクルも視野に
稼働して14年を経過するが、試行錯誤の経験がノウハウとなり、ここ数年は高い塗装品質が確保されている。「現状の不良率は粉体塗装が1.0~1.5%、水性塗装が2.0~3.0%の幅にあり、今後水性塗料の不良率を2.0%以下にするのが目標」と鈴木氏。また水性塗装の塗着効率は約50%程度。この塗着効率を高めていくのが最大の課題という。
また塗装技術の高度化とともに、意匠性のニーズも高まっており、特にシルバーメタリックのニーズが強い様子。「粉体塗装でメタリック塗装を行っているが、出来るなら水性メタリックのリサイクル化を実現させたい」(別府工場長)と検討に入っているという。
現在、粉体塗装と水性塗装の比率は2対1と水性塗装の比率が高まっている。コスト的には水性塗装の方が安く上がるようだ。「粉体は一部吹き捨てで塗装をしていることから廃粉が生じる。また指定色は納期に時間がかかる。更に不良対策からコンタミの問題が付いて回る。それに対し、水性リサイクルは配管の中の残留物しか捨てるものがないし、自社で調色が行えるので対応も早い」と水性のメリットに軍配を上げる。同社のコスト比較では㎡当たりの生産コストは水性塗装の方が20%ほど安くなるとの見解。
これは同社のノウハウの蓄積が寄与している実績だが、VOC規制が本格化するなかで、示唆に富んだ見解である。
(青木)