Web特集
2005年04月19日
シリーズ: 揺れるライン塗装
揺れるライン塗装 No.123 中林塗装工業 空調設備の導入で高品質を達成 小物から大型被塗物まで幅広い対応
足元の景気は踊り場を脱した感のある経済市況だが、この3月期の上場企業の業績は概ね好業績の見通しだ。マクロ的には調整局面は収束に向かいつつあるようだが中小企業にとってはこれからが正念場といえる。
ここ数年、工業塗装のジョブコータ-は廃業するところが増えている。その一方で生産効率・品質の向上に向けた積極投資を行い、生き残りをかける企業と非常に対照的な動きとなってきている。
中林塗装工業は旧来の工場の手狭に加え、生産性のアップと高品質塗装を目的に旧工場の隣接地に敷地面積300坪、2階建ての新工場を建設。ひと月のテストランを経て、この2月から本格稼働に入った。
新工場は1階が前処理ラインと塗装ラインのワーク着荷とアッセンブルに当てられている。2階が塗装ラインとなっており、溶剤系塗装、粉体塗装に対応。粉体塗装ブースを中心に据え、移動式にしてその前後で溶剤塗装の下塗り、上塗りを行う仕組みだ。
「今回、設備に相当の金額(2億円)を費やした。特に2階の塗装エリアは給気装置2台により温度・湿度が自動調節出来る集中制御にするとともに、人が持ち込むゴミ・ブツを避けるためエアーシャワーによる除塵などクラス10万に近いクリーンルームにした」と中林雅好社長は高品質塗装を強調する。
また1階の前処理においてもリン酸亜鉛皮膜処理の他、アルミダイキャストに対応するためノンクロムの処理装置も設けるなど環境への配慮とともに幅広い対応力を持ったライン構成にしている。「小さなものから大きなものまで何でもこなせるようにしてある。また素材も鉄、アルミとユーザーニーズに対応出来る処理装置を整えることで、従来以上の受注幅を広げていく」(同氏)考えを示す。
コーディネートした販売店の竹田明社長(タケダ化成品)は「不良を出さない、高品質塗装に対応出来るラインになったと思う」とコメントする。
旧ラインの長尺ライン(W900mm×L5500mm×H2000mm)と小物ライン(W600mm×D800mm×H1800mm)、その他大物への手吹き塗装、更に前処理もクロム処理(デップ方式)、リン酸亜鉛処理(デップ方式)などの旧設備をそのまま生かし、かつ今回の新ラインと合わせ大幅な生産能力のアップを実現した。
粉体と溶剤の効率ライン
同社の主な被塗物はハウスメーカーのサッシやバルコニーといった建材を主体に、室内階段の手摺及び配電盤。またアルミダイキャストはアルミ建材、窓の手摺の部品、医療機器、ハカリなどさまざまなものに対応している。「ここ数年、粉体塗装のニーズが高まってきている。環境問題に加え、溶剤系塗装よりもトータルコストで安く仕上がることがユーザーも分かってきた。当社では溶剤系塗装と粉体塗装の比率は半々になっている」と中林社長は現状を説明する。
同社では受注に際し粉体塗装を提案する。「昨今はメーカーの標準色であれば1袋からでも対応してもらえるようになった。また粉体の平均単価も下がり、被塗物の平米単価は溶剤も粉体も変わらないところまで来た」ことから塗膜性能に優れる粉体塗装を推奨しているという。
新工場の前処理ラインは全長130m。予備脱脂·本脱脂·水洗·水洗·表面調整·リン酸亜鉛皮膜·水洗·水洗·水切り乾燥の工程。ラインスピードは1.6~1.8m/min。またアルミダイキャストに対応し、最後の水洗の後にノンクロムの処理装置を設けノンクロム·水洗·水洗·水切り乾燥としている。
前処理剤はすべてケミスター製。ノンクロム剤はフッ素の水溶性化合物をメーンとするAL―202Dを採用。
塗装ラインは1階で被塗物を前処理ラインから移し変え(着荷)、2階の塗装室に進む。溶剤系下塗りブース(1レシプロ2ガン・2基)―(補正)―粉体塗装ブース―(後補正)―溶剤上塗りブース(1レシプロ4ガン・2基)と設置されており、粉体塗装ブースは移動式で溶剤塗装と粉体塗装が切替方式で運転出来る仕組み。そして焼付乾燥後1階に下って脱荷の工程。乾燥炉は断気5m、炉内68m、断気5mの山型炉。
ライン全長は220m。焼付温度は溶剤系が160℃×20分、粉体系が180℃×20分に設定。ラインスピード1.6~1.8m/minに設定している。
溶剤塗装のオートガンは霧化/パターンの単独制御によって多彩な被塗物形状に適したランズバーグ・インダストリー社製の静電塗装機RAジェントマークガンを採用。塗料供給装置はフラッシャブルギアポンプ。
粉体塗装機は1レシプロ3ガンを対面に設置。機器は同社ゲマ社製の最新式のOptiTronicガンコントローラにOptiGun(コロナタイプ)を装備したもの。数値化された電流、電圧制御で塗料セーブと塗装品質の向上に向けたシリーズ。板ものに対する1ガン当たりの吐出量は表面が160g/min、裏面が80g/min。
更にブースは樹脂パネルのプラスチックブースで、回収はブース底面から塗料を吸引し集塵機を通してホッパーに戻すシンプルなもの。塗料の使用効率は約90%。色替え時間は2人で約1時間弱。「予算的に厳しく、高速色替えブースは導入出来なかったが、旧ラインの粉体塗装ブースとこの新ラインの2ブースで効率的に塗装していく」考えを示す。1日の色替え頻度は多くて2~3回程度という。
またワーク形状の認識装置(64光軸光電管)を導入することで、無駄吹きを極力排除し廃棄塗料を抑えている。
現場の知恵が活力を生む
旧工場は長尺もの対応としたのに対し、新工場の処理最大寸法はW1000mm×L2000mm×H1500~1800mmであることから使い分けて効率生産を行っていく方向だ。「受け入れられるものは何でも受けていくスタンスであるが、常に厳しい品質のものを手掛けていくようにしている。高品質のものを手掛けることで現場のレベルが高まる。これをやって行かないと手間の安いものだけになってしまう」と中林社長。
同社では板金後パテ付けをする製品も多いという。パテ付けすることにより付加価値は高まる。「コストダウンの要請が高まるなかで、素材が粗くなると負担作業が増えてくる。必然的に最終工程で手直しするケースが多くなる」と手間作業のかかるものを受注することで付加価値を上げていく考え。
またアルミダイキャスト製品は発泡の問題を抱えている。脱気する方法として前処理の水切り乾燥の温度を焼付乾燥の温度より高く設定することで発泡を抑えるなど「現場のなかから出てきた知恵」(中林社長)を大事にしていくことで品質の向上、生産性の向上につながる。「目に見えない工夫かもしれないが、現場の知恵を生かすことが我々塗装専業者の生き残る道ではないか」という。
これまで粉体塗装と溶剤系塗装をメーンに行うなかで、粉体塗装の認知の低さを痛感してきた。「10年、20年前の粉体塗装をイメージしているユーザーが多い。特に単価について高いと思っているユーザーにはトータルコストメリットを説明している」と粉体塗装の普及にも一役買っている。
今後、環境問題から粉体塗装のニーズは高まってくる。同社としては更なる塗装ノウハウを蓄積し、現場の知恵を生かしつつ高品質塗装への対応を強化していく考えだ。