Web特集
2005年05月19日
シリーズ: 揺れるライン塗装
揺れるライン塗装 No.124 横浜樹脂コート パウダーコーティングで事業拡大 廃工場を取得し、ノウハウを生かす
景気は穏やかな回復傾向にあるというものの依然原油は高止まり、鋼材を始めとする汎用樹脂など素材の値上げが後を絶たず、先行き不透明感は拭えない。中小、零細規模の企業にとって、会社の構造的な問題を含めこれからが正念場といえる。
中小企業(製造業)の生き残りは自社のノウハウに更に磨きをかける(深耕)か、業際でノウハウを生かしたビジネスモデルを築くか、または業界内でのM&Aによるコアビジネスの拡大と選択肢は限られる。
横浜樹脂コートは相模原に次いで二本松(福島県安達郡岩代町)に自社工場を立ち上げた。廃業もしくは倒産企業の工場を買い上げ、自社工場にしたケースだ。これで同社は従来の本社工場と福浦(横浜市)工場、今回のYSパウダーコーティング(相模原)、YNパウダーコーティング(二本松)と合わせて4工場を所有する。
二本松のYNパウダーコーティングはもともと塗装工場に資金を投じて工場を取得。既存設備の前処理、乾燥炉、水処理はそのまま利用するとともに、溶剤塗装の3ステージを粉体塗装と後補正に改造。新たに色替え対応の粉体塗装装置を導入した。3,000坪の土地に敷地面積1,000坪とかなり余裕のある工場となっている。
「東北地域でパウダーコーティングが出来るところは少ない。特にこの郡山周辺は板金加工業者が多いので今後VOC規制など環境問題から、従来の溶剤塗装からパウダーコーティングへの切り替えが進むと思う。その切り替え需要の仕事を受注していく」と三浦雅和常務取締役。3月に立ち上がって稼働率は数十%に過ぎないが、あくまでも独立採算が基本だ。
色替えが容易なC―MCBを採用
同工場は前処理ラインと塗装ラインが分離されており、前処理工程は予備脱脂、本脱脂(アルカリ脱脂)、水洗、水洗、表面調整、化成(リン酸亜鉛処理)、水洗、湯洗というもの。シャワー式が多いなかでここではディッピング方式による。1浴槽5トン。水切り乾燥は金庫炉で130℃×10分に設定。「塗装する前処理はバッチ式で連続運転が出来ないので生産性が下がる。今後の稼働率を見ながら一貫ラインにしたい」(同氏)とコメントする。
また、水処理は周辺に住居、田畑があることから管理が厳しく、「この周辺は上水を利用しており、廃水処理装置がないと稼働出来ない。従って管理も定期的にキチンと行う必要がある」と角田實夫技術部長はいう。廃水処理は原水槽、反応槽、PH調整、凝集槽、濾過槽、汚泥槽、フィルタープレス、スラッジの工程。
前処理が終わると被塗物を乗せ変えて粉体塗装ライン(全長150m)に進む。粉体塗装ブースは多くの実績をもつ日本パーカライジング・アイオニクス事業部の色替えブース・コンパクトマルチカラーブース(C―MCB)を導入。1レシプロ4ガンを対面に設置。
ワーク最大寸法は800mm(D)×4,000mm(L)×2,000mm(H)まで対応可能。更に補正ゾーンが1面。1ガン当たりの吐出量は80~90g/minに設定している。また多品種・小ロット・多色に対応した手吹きブース(非回収)も合わせて設置した。
現状の被塗物はアルミサッシ、天井メッシュ及び金属塗装をメーンにしており、「色替え時間は1人で約15~20分。この3月の稼働に合わせて採用した人員なので、慣れてくると10分くらいで出来る」(角田技術部長)と判断している。ブース壁面は塩ビ系の樹脂パネルであることから清掃がしやすく、かつ安全性を考慮したもの。またサイクロン式塗料回収装置による塗料の使用効率は85~90%と高いレベルにある。
更に同アイオニクスが誇るコロナガンPulse Powerに関しては「メッシュのような付き回りの悪い被塗物でもキチンと塗料が回り込んでいる。また帯電性がいいのか少量吐出でもいいレベルに仕上がる」(角田技術部長)と塗料の付き回り性と塗料消費量の低減を強調する。
その他、塗料の無駄吹きを極力抑えるためエリアセンサーを装備し自動吹付制御をしている。
焼付乾燥炉は既設のキャメル式連続焼付炉を利用しており、焼付温度は180℃×20分に設定。稼働してひと月足らずではあるが塗料使用量(ポリエステル系粉体塗料)は1トン/月。
粉体塗装での差別化に自信
また同工場にはこれまで福浦工場で行っていた粉体塗装による熱転写装置を移設し、対応を進めていく。「粉体塗装された塗装面に木目、御影石、大理石調などの自由な模様を熱転写する技術。高付加価値製品として取り組んできたが、福浦工場が手狭になったことから、YNパウダーコーティングで加工をしていく」(三浦常務)方針だ。
同品は特殊フィルム上に印刷された模様をアルミサッシ建材や鉄、ステンレスなどの表面に施された粉体塗膜のなかに転写する技術で、高品位塗装が行え、模様の再現性が高いといった特長を持つ。
これまで大手ユーザーとタイアップする格好で事業化を進めてきたが、「量産ものに関しては再現性が高いことから評価を得ているものの、小ロットになると貼りものとのコスト競争になり、合わないケースがある」という。生産性を考慮しパウダーの改良と提案営業でユーザー獲得を進める意向。
現状の8人の社員は全員地元での採用。全く塗装の未経験者だ。「1週間ほど福浦工場で研修を行っただけ、基本的には現場に入れて稼働させながら塗装技術を習得させていく考え。幸いパウダーコーティングはガンにしても原理が分かれば操作は難しくはない。後は管理教育をキチンと行っていく」と現場主義を強調する。
同社は従来の熱硬化性のパウダーコーティングの他にナイロン粉体塗装、EVA粉体塗装、ポリエチレン粉体塗装及びフッ素粉体塗装を手掛ける。更に再生ペットボトルを原料とするPET POWDER粉体塗装も行うなど粉体塗装に特化していく。(青木)