Web特集
2005年06月02日
自動車補修用塗料特集 首都圏決戦の鍵 サバイバル状況強まる
各社とも「水性を看板にハイソリッドシステム(低VOCタイプ)で市場浸透を図る」点では共通している。まだ市場全般として水性化ニーズが出ていないということがその根拠。大型BP工場の大半も「中長期的には水性シフトはスケジュール化していきたいが、具体的になっているわけでない」とコメントする。末端のBPからは「仕事がほしい」との声一色の状況にある。
しかし、各メーカーが「水性化元年」としてスタートを切っているのには大きな理由が2つある。
第一はハイソリッドシステムを中間ステージとして水性にシフトという段取りの不透明性にある。特に大手自動車メーカーの環境戦略はグループを巻き込んだものとなっており、「一気に水性化気運が生まれてもおかしくない」との分析があるからだ。
事実、トヨタなどはEU指令によるヨーロッパでの『07年問題』に非常に注目、07年からはEU全域で基本的に水性しか使えなくなるからだ。現在ヨーロッパの水性化はイギリス、オランダでほぼ100%転換し、全域では約30%台の転換率。これが07年には80%台にまで飛躍的に高まると見られる。
自動車メーカー各社とも米国よりもEUの環境対応を自社基準としており、カーディーラーの内製化BPの一部から水性シフトが始まるとの見方は現実性がある。事実、水性システムへの研修ニーズは日を追うごとに強まってきた。「秋までのスケジュールの大半は水性システムで埋まっている」(デュポン)との現実もある。
かつてのように、いずれ水性に移行するのだから参考に見てみようとの感度よりも一歩踏み込んだニーズがそこにある。参加者からは水性シフトへの不安の声はほとんど聞かれない。
第二の理由は「水性システムは性能が落ちる」との通念がほとんどなくなっているためだ。ヨーロッパでは水性システムの市場展開は14年余りになり、この間水性技術は大幅にレベルアップした。各社とも2世代目の新システムをスタンバイさせており、実際に水性のデモンストレーションを見たスプレーマンは「かぶりも大部分1回で出来る」レベルを評価。水性は使いにくいという従来感覚は薄れている。
BPの現場では新世代のスプレーマンが育って、世代交替が進んでいる。新世代は職人というより技術者(テクニシャン)としての自負がある。むしろ新しい水性技術に対しどん欲だ。
また、BPの経営者側でも「水性はコストアップ要因だけで、メリットはない」との声よりも、「入庫を確保していくためには工場の環境問題は避けて通れない」との感度も出始めている。環境先進BPはDRPやPPO対応で欠かせないテーマとの判断がある。
外資系メーカーが一斉に水性展開にシフトしている他、イサムは水性で国内で唯一水性システムを先行展開、浸透には苦戦したが「今年からが本番」と仕切り直しで対応を強める。日本ペイントも6月から水性システムを市場投入の意向。関西ペイント、ロックペイントは水性対応を明らかにしていないが、市場動向を見極めている段階。
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首都圏決戦のカギは塗料ディーラーが握っている。「大型BP以外は地域に密着したディーラーがBPを押さえている」(塗料メーカー)からだ。従ってメーカーにとってディーラー政策が勝敗の分かれ目となってきた。
ところがメーカーのディーラー政策が定まらない。もっといえば手詰まり感が逆に強まっている。メーカー担当者は「新規開拓出来る人材を持つディーラーが少ない」と打ち明ける。攻めるコマを持たないディーラーが多いというのだ。しかも「大半のディーラー経営者は消極的で『待ちの姿勢』にある」とも指摘する。
事実、首都圏の塗料ディーラーで鮮明に攻めの動きを示しているところは少数派。「攻めるにはリスクが大きすぎる」(都内ディーラー)という。実態的には顧客開拓は片手間にやるくらいで、戦略性をもって展開しているケースはまれ。
オートサプライヤー形態にある塗料ディーラーは、それなりにマンパワーがある。オートサプライヤーを標榜する以上商品知識ばかりでなく、板金塗装の基本をマスターしているため、BPの現場にも突っ込んだアドバイスが出来るのが強み。「人が育てば拠点を拡大したい」という経営者は目立つ。
こうしたオートサプライヤーがどこまで戦略的かというと疑問も残る。「攻めていないと(他社に)奪われた顧客をカバー出来ない」との内情もある。いわばモグラタタキ状態がそこにある。攻めれば当然、攻めた相手から攻められる。しかもメーカーの代理戦争に似た場合もある。
オートサプライヤーは日産-ロック問題が起きてから、危機感を抱いている。有力オートサプライヤーのトップは「当社はカーディーラーの内製化BP向けが売上の約30%を占める。社員にはこれがなくなったら給料を30%下げざるを得ないと言っている」と語る。日産に続いてトヨタなど他の自動車メーカーが追随するのではないか、あるいはその可能性に対する恐怖感といえる。
そのトップにとっては内製化BPの比率が高くなると、逆に経営リスクが高まるとの判断があるようだ。ある日突然取引が停止された体験を持つだけにあながちき憂とばかりいえない。
ディーラー経営も厳しさを増している。売上が伸びない、人材費を含めた販管コストがジリジリ増えているというのが一般的な状況。当然取引先のメーカーなどのマージンは低下することはあってもアップすることはない。メーカーでも自補関連収益が低下しているからだ。かつてのようなユーザー単位当たりの売上は小さいが、儲けは大きいといったウマ味は全くない。
先細る需要に対し、あるオートサプライヤーは「この市場ばかりにしがみ付いていると自分の首を締めるようなもの」と割り切った考えを示す。トップ自らが他分野の開拓を進めている。
しかし、自補修マーケットに見切りをつけるディーラーはほとんどない。顧客であるBPの2極化が強まるなかで、ディーラーの2極化も進んでいる。メーカーのディーラー担当者は「現状維持で精一杯のところばかり。こちら側がインセンティブ(刺激)を与えても反応は鈍い」といらだちを隠さない。
攻めるディーラーも、攻め方はマンネリそのもの。納入ディーラーより安価な副資材を売り込み、取引のトッカカリをつくる。第2ステップで補修塗料のルートを作る作戦。攻められたディーラーは対抗上値段を下げる。攻めるも守るも徒労感が伴う。それで新規BPを獲得し売上に寄与したとしても、勝者が必ずしも営業効率面で勝ったとはいえない。それでもオートサプライヤーは攻めるしかないという。
力のあるオートサプライヤーはメーカーの戦略性のなさにあきれ顔。「我々が攻めているのにメーカーは傍観しているだけ。メーカーに市場戦略性が乏しい。今の状況は商品だけでシェアは奪えないことは分かっているハズ。もっと大きな枠組みで戦略ビジョンがあってしかるべき」とクギを刺す。
塗料メーカーに戦略がないわけではない。確かにメーカーにも市場攻略の手詰まり感はある。2液ウレタンシステムから1液システムへ移り、次のシステムは環境システムへの移行。このシフトへの迷いがある。単にハイソリッドシステムを踊り場として水性システムへという単線的な移行プロセスに対する製品戦略的迷いではない。
迷いは戦略的読みに関わる点にある。まず第1点は自補修需要の動向。このまま市場がシュリンク(縮小)していくのか、歯止めがかかるとしたらどんな要因か。事実、補修需要はジリジリと落ち、下げ止まる気配がない。需要が減っている要因は補修車の入庫が減る構造要因だけではなく、むしろ補修塗料の性能が向上しロスが少なくなっているなど、現場的な要因も加った複合的なもの。「このままでは国内4強でシェア80%という構図は崩れかねない」とメーカーのマーケティング担当者は危惧する。
限られたパイを奪い合うしかない。しかし狙うターゲットが似たり寄ったりで、開発には手間とコストがかかる実態がある。一時期某メーカーがBPにサンプル品と称して無料で補修塗料のバラまきをやって、かえってBP側からひんしゅくを買うなど、メーカーの場当たり的な戦術が後を絶たない。
メーカー迷いの第2点として、流通政策の困迷がある。その柱である特約店関係があいまいなまま、ディーラーをサポートしても効果が薄いことが分かっているからだ。大半のディーラーは専売店ではなく、複数のメーカーの補修塗料の代理店となっている。ディーラーに言わせれば「1社だけでは食っていけない」ということになる。
メーカーとしては自社のメーン代理店として機能分担して市場対応を強めてもらいたいというのが本音。ディーラーもメーカーと良好な関係を保つ方がメリットがあると考える。しかし、そこにズレもある。「1社に偏るとメーカーコントロールが強まる」とのバランス感覚がある。それがメーカーから見ると「メーカーをてんびんにかける」と映る。同床異夢なのだ。
ディーラーと強い関係を持つメーカーほどジレンマは深い。メーカー戦略を完遂するにはディーラー連携は不可欠。オートサプライヤーのトップはこう打ち明ける。「経営者としてメーカーの店内シェアをコントロールしているわけではない。メーカー営業担当者とウチの営業マンがウマが合うとそのメーカーシェアがアップする。そして信義上ウチの扱っているメーカーの顧客の切り替えはしない」
つまりメーカーとオートサプライヤーの関係といっても、担当者レベルの人間関係の要素がかなりある。「優秀な営業マンはメーカー担当者の力を自分の力としている。重要なのは顧客に対してモノ(商材)を売る姿勢ではないことだ」とそのトップは見る。
モノを売らない営業が市場を動かしている。内製化BPのサービス部門の責任者は「納入ディーラーさんもいろいろ。商品を届けるだけのところからこちら側のニーズを探り、先手を打ってアドバイスしてくれるところまで」と語る。かつて新しいシステムで市場を席巻出来ると考えられた時代があった。しかし、市場はそれに対し冷ややかだ。システムを担うマンパワーを顧客は求めている。(芹沢)