Web特集
2005年07月25日
作業内容の再確認がVOC削減へのポイント 日本塗装機械工業会
スプレー塗装におけるVOC排出量
鈴木正人氏(アネスト岩田)、金山宏氏(桂精機製作所)の両氏は共同の講演を行った。講演のなかで鈴木氏はVOC規制の対象となる塗装施設の説明を行った。「規制対象になる塗装施設では、例えば2コート2ベークの塗装施設は、塗装施設が2個、乾燥施設が2個と個別にみなされる。また、2コート1ベークの塗装施設は、塗装施設が1個、乾燥施設が1個とみなされるため、1コート目と2コート目の塗装ブースの排風機の排風能力の合計が10万m3/h以上の場合に対象施設となる」と述べ、法規制対象施設(揮発性有機化合物排出施設)を有する事業主は次の3つの義務が課せられると説明した。1)VOC排出施設の都道府県知事への届出義務2)排出口からの排出濃度基準の遵守3)排出濃度の測定義務(年2回以上の測定)。
また、同氏は塗装機によるVOC排出量の削減例として、VOC使用量の多いメタリック塗料を用いて算出した例を報告した。
その報告によると、スプレー前の希釈塗料量を200g(溶剤160g、固形分40g)、希釈塗料のNV値を20%として、塗着効率30%の塗装機でスプレー塗装する。塗着効率は、スプレーした固形分に対して算出されるため、この場合は12g塗着する。ウエット塗面の塗着NV値を60%として、12gの固形分が残っているウエット塗面では8gの溶剤が残る。従って、ワークに着く間に蒸発するスプレー中の溶剤蒸発量は、152g(スプレー前の95%)となる。同氏は「いかにスプレー中に多くの溶剤を排出しているかが算出出来た。塗着効率の高い塗装機に切り替えることで、ワークに着く量は変わらないが、使用する希釈塗料量を減らすことが出来、VOC排出削減になる」と述べ、いかに塗着効率を上げ塗料使用量を削減するかが大きなポイントとした。
また、更に塗着効率を上げる手段として、1)静電塗装機などの塗着効率の高い機種に切り替える2)膜厚の管理の徹底で必要以上にスプレーしない3)出来るだけ吹き付け距離を近づけるなど作業内容の再確認の重要性を挙げた。
自動車ラインでのVOC削減方法 事例発表として講師に立った戸田紀三夫氏(旭サナック)は「VOC対策にどう取り組むべきか」をテーマに講演を行った。
以前トヨタ自動車で水性塗装や粉体塗装の開発に従事してきた同氏は欧州と日本の自動車メーカーのVOC対策への取り組み方の違いとして、自動車鋼板の塗装を例に出して紹介した。同氏によると、欧州ではVOC排出量を3段階に分けた。第1ステップは60g/m2以下、第2ステップは35~45g/m2以下、そして第3ステップは20g/m2以下と進歩してきた。塗料の選択では、第1ステップを達成するために水性ベース塗料を導入、第2ステップでは水性中塗りなどを導入、第3ステップでは粉体クリヤーなどの技術を導入した。
一方、日本では既にトヨタや日産などの排出レベルも40g前後となっている。しかし、欧州との大きな違いとして、日本では60g/m2以下については水性ベースの導入をほとんどせずに達成している。35g/m2以下を達成するために水性ベースが導入されており、水性中塗りも導入したラインでは20g/m2以下も達成している。現在では日本においても水性塗料の導入が進み米国を上回るペースとなっている。しかし、同氏は「日本においては単に水性塗料や粉体塗料を導入すればよいという考えではなく、ものづくりの原点に立ち返ってVOC対策が進められている。その考え方は今後工業塗装分野でも参考になる」との見方を示した。
同氏は「ものづくりとは、現場において品質、生産性、コスト、環境について向上を図ること」としている。VOC削減ポイントとしては、不良率の低減、適切な微粒子化、きめ細やかな塗料ON/OFF条件の設定、色替えロスの低減などを挙げ、「少ない設備投資でVOC低減と品質向上の両立が可能」との見解を示した。
溶剤塗料ラインから粉体塗装ラインへの切り替え報告
今井弘氏(アネスト岩田)によると、同社横浜事業所ではVOC削減へ取り組むべく、2004年5月に溶剤塗料から粉体塗料への切り替えを実施した。被塗物はパネル類など(540枚/月)。
ランニングコスト(千円/月)の比較では、塗料・シンナー費は溶剤塗料569.7、粉体631.7、燃料費は溶剤274.3、粉体329.2、産廃費は溶剤142.1、粉体0となり、粉体に変更後のランニングコストは25.2の削減となった。
設備投資に関しては、塗装ブース(2,300万円)、回収装置(1,000万円)、粉体定量供給装置(1,000万円)など計5,290万円かかった。
結果として粉体塗装に変えたことにより、生産量は変わらず540枚/月。塗料使用量は860kg/月から5kg/月、シンナー使用量は560kg/月から3kg/月、VOC排出量は852kg/月から4.8kg/月、CO2排出量は3,254kg/月から3,876kg/月になったと報告した。
今後の課題として、焼付温度の高温化に伴うCO2量の増加があるが、同氏は熱源をLPGから都市ガスへ変更するとともに、「品質同等で低温での焼付が可能な塗料の開発に期待をする」とまとめた。