Web特集
2005年11月02日
「粉体塗料・塗装特集2005」から 製造工程見直しが採算是正の一歩
昨年度の熱硬化性粉体塗料の出荷数量は2万7,000~2万8,000トンと推計される。今年度の上半期は中緩みがあったものの夏場を過ぎて出荷が伸びており、各社前年比7~8%の増加を示していることから、今年度は3万トン前後に達するものと思われる。
公共資材関連は予算削減から減産となっているものの、粉体塗料使用ユーザーの大手であるスチール家具メーカーの生産が好調なことに加え、輸出産業の工作機械、建設機械、自動車部品関連も好調に推移しており、生産増が需要を引き上げている。またVOC規制など環境問題から粉体塗装に切り替えるケースも出てきており、それがプラス要因となっている。
また改正大気汚染防止法が来年から施行されるが、6月17日付で環境省は環境管理局長名で都道府県知事及び指定都市・中核市市長宛てに、「VOCである溶剤(希釈剤を含む)を含有しない塗料(使用時にVOC含有率1%以下のもの)のみを塗布することが明らかな塗装施設は、規制対象とならない。粉体塗料、紫外線硬化型及び電子線硬化型塗料は、これに該当することが多い。一般に、水性塗料やハイソリッド塗料はVOCを含有しているので留意されたい」(塗装施設・吹付塗装を行うものに限る。12ページ)と公式文章を出している。
粉体塗料は塗装時の揮発分が1%以下なので上述のようにVOCの規制対象施設から外れる。このような行政サイドの動きなどから2010年までに焼付のメラミンアルキッドやメラミンアクリルなどメラミン変成タイプの金属塗装の量産物は粉体塗装に切り替わる可能性が高い。
国内のアクリル、メラミン塗料の焼付マーケットは年間出荷数量で14~15万トンのマーケットサイズと思われるが、これらの何万トンかが粉体塗装に切り替わって果たして採算に合うのか疑問である。まずイニシャルコストが合わない。スケールメリットを生かそうとすると当然価格競争になり単価は下がる。ユーザーのトータルメリットといっても薄膜美粧仕上げ(平均膜厚30~35μm)で、かつ塗着効率が70%近くまで高まり、塗料使用量の低減が図れないとメリットは出てこない。
製造合理化で採算是正
更には海外メーカーの進出である。既にアクゾノーベル、PPG、ジョータン、韓国メーカーなどが国内でビジネスを展開している。アクゾノーベルは中国で4工場を擁し、年間4~5万トンの生産を行っている。またPPGは蘇州で工場を持つ、ジョータンはタイから対応している。それぞれの生産量は国内マーケットに匹敵する生産を行っている。
現実に汎用粉体塗料市場は価格だけになっている。またメタリック粉体塗料の海外品は国内製品の半値近くで出ている。国内メーカーにとって決して楽観出来る環境ではない。粉体塗料に関しては国内云々といったマーケットではなく、日本を含め東南アジアのマーケットと認識を改め、リンクして考えていく必要に迫られている。
国内塗料メーカーはユーザーニーズである小ロット・多色・短納期に対応している。近年特に小ロット・多色化が進む中で、むしろ生産効率は悪化しており、営業優先の割り込みロットも多く、人海戦術に近い状態で生産を行っている。製造工程はこの30年間ほとんど変わっていない。特にエクストルーダーの色替えや粉砕機の色替えは人手に頼っており、白から黒の場合は半日以上の時間をかけて洗浄している。「ユーザーの品質管理がシビアになっており、コンタミに関しては非常に気を使っている」というように濃色系の色替えは大変なようだ。国内の高い人件費で低稼働率では採算に合わない。
このような中で、生産設備の見直しを進める企業が増えている。「押し出しとは異なる方法」を模索したり、「洗浄の部分の自動化」など、工程そのものは大きく変わらないが、工程内で人手のかかる部分の合理化を進めることで生産性を上げる方向だ。またニーズに応えるという意味では常備色をたくさん持って対応していく方法や粉体調色システムなど各メーカーによって指向は異なるものの、改善に向けた取り組みが本格化している。
ボンディングメタリックが主流に
ここ数年、メタリック粉体塗料のニーズが旺盛だ。スチール家具、工作機械、自動販売機、レンジフード、システムキッチンなどメタリック全盛といってもいい。これまでドライブレンドで対応してきたが、欧米の塗料メーカーが融着によるボンディング製法のメタリック粉体塗料を開発して一気に火が付いた。
国内は接着によるボンディング粉体塗料の開発に力を注ぎ、日本ペイントが昨年千葉工場にいち早く設備を導入し、月産25トン体制に整えたのもつかの間、この11月までに第3期工事を終了させ、月産50トン体制に増強。同社は第6期工事まで計画している。
同時に関西ペイントと久保孝ペイントも共同でボンディングメタリック粉体塗料を開発した。「当面、設備を導入する意向はなく、外注で対応していく」方向だ。
またこの秋口から神東塗料が提携先のデュポンからOEM供給を受け、煌きシリーズとして展開に入る。デュポンは中国で4工場を有し、更に大連に5工場目を建設中で、ボンディングメタリック粉体塗料は黄山で生産している。ポリエステルとハイブリッドで6色を揃え、新色のニーズにも応えていく方向にある。
更に大日本塗料はこの下期にも接着法によるボンディング製造装置を導入し、来春から本格展開に入る計画だ。「標準色を整え、新色にも対応していく」意向を示しており、2~3年で30トンの供給量を目指す。
ドライブレンドのメタリック粉体塗料は塗着効率が悪く、回収再利用が出来ず、色ムラが生じることから、マーケットにおいてはボンディングメタリックに切り替わりつつある。今後各社OEM供給を含め対応せざるを得ない状況になりつつある。
過去最高のガン出荷量
塗装機器もコストダウンの要請と価格競争で厳しい状況が続いている。従来のようなオーダーメード的な発想で言われるがままに対応していたのでは完全に採算割れとなる。ある程度の標準化を図り、セットで納入出来るような仕組みにしないと利益なき繁忙が延々と続く。
グローバル企業は生産コストの一番安いところから持ち込むことも可能だが、国内メーカーは基本的に国内生産となっており、粉体塗装機器(ブースを含む)を海外生産しているケースはほとんどない。スケールメリットによる調達コスト、人件費を含めグローバル企業に伍して戦うのは厳しいと思われる。
昨年度(2004年4月~2005年3月)の機器メーカーの国内出荷ガン数はオート、ハンド合わせて前年比20%増の1,767ガンと過去最高を記録した。内訳はオートガンが1,071ガン、ハンドガンが696ガンであった。メーカー別シェアを見ると日本パーカライジング(アイオニクス)が23.8%、ノードソンが21.8%、ランズバーグ・インダストリーが20.0%、旭サナックが18.4%、ホソカワミクロンワグナー(日本ワグナー・スプレーテックを含む)が14.9%、アネスト岩田が1.1%と推計される。
ニーズの高かった高速色替えシステムは各社が出揃った格好だ。粉体の付着を抑えるブースパネルの素材に特長を持たせるとともに、回収系での色替えを容易にするためブース内での吸引方法に各社工夫を凝らす。これによって色替え時間はほぼ2人で5~10分と従来からすると大幅な短縮に結びついている。
また昨年来話題を呼んでいるインジェクター方式に変わるDDFポンプはアネスト岩田に引き続き、ホソカワミクロンワグナー、ノードソンが市場に投入する。それぞれ検証期間を置き、自社のノウハウを付加するなど、使い勝手を高めている。
元々、DDFポンプは欧州のラムザィアがBMWのクリヤー塗装用に開発し、改良に改良を重ね実用化に漕ぎ着けたもの。2本のシリンダーを用いて、1本で塗料を吸引し、もう1本のシリンダーで塗料を送り出す仕組み。エアーに依存しないことから塗着効率が高まり、かつ付き回り性にも優れるといった特長を持つ。「エアーに依存しないことから、搬送を含め全く新しい発想でシステム構築が出来る可能性がある」と関係者は指摘する。
ここ数年モードガン、高速色替えシステム、新タイプのポンプなど新しい技術が加味され、塗装機器のレベルの様相が変わりつつある。今後、更なる塗着効率のアップによって、吹き捨てで充分採算に合うレベルになると、粉体マーケット自体が変わる可能性がある。