Web特集
2005年12月26日
シリーズ: 揺れるライン塗装
揺れるライン塗装 No.129 一ノ坪製作所 専用ブースと色替えブースで効率生産
社長・一ノ坪久浩氏
各地域でオフィスのインテリジェント化が進むなかで、特に首都圏は丸の内、秋葉原、六本木に代表される大型再開発が着々と進められている。それに伴いオフィスのスチール家具の需要が旺盛。ここ数年各スチール家具メーカーはフル稼働の状況にある。 同時にホルムアルデヒドなどの室内環境問題から、従来のメラミン硬化タイプの塗料から粉体塗料への切り替えが進んでいる。
三重工場正面
三重工場全景
一ノ坪製作所は大手メーカーの協力工場として、自社独自の技術によって設計・製作からデザイン提案を行うなど付加価値機能を有した製品開発を図ってきた。プレス、溶接、板金、塗装、組み立ての一貫製造によってクオリティの高い製品の提供が大きな信頼と実績に結びついている。
特に加工ラインは複雑な曲げ加工を一貫した自動装置で行い、さまざまなサイズ、形状に対応。また溶接は多点打ちを一度に行うことの出来るスポット溶接機、ロボット溶接機を擁すとともに、平成13年にはレーザー加工機、平成16年にはサーボ式ターレットパンチングプレスを導入しオーダーメードに対応した製作・加工を可能にした。
同社は平成13年に本社工場の溶剤塗装を粉体塗装に切り替えている。三重工場では、2コート2ベークの溶剤ラインを粉体塗装にすることで1コート1ベークで仕上げることが出来る。また、従業員の健康面や環境問題を考慮した結果、今回の三重工場の粉体塗装導入となった。既に本社では粉体塗装を行っていたことから、「今回はどのような設備設計にするか、昨年からプロジェクトを組み、検討を進めてきた」と一ノ坪慶次取締役管理部長。
今回は色替えブースの検討と近年ニーズが高まっているメタリック粉体塗料の採用の有無が大きな検討課題となったようだ。三重工場のメタリック色はシルバーとグレーの2色が指定色。ブレンドタイプやボンディング粉体塗料などで試験塗装を行ったが色目が出ない。取引先の指定色のため、メタリックに関しては溶剤系塗料を使用することになった。
また同社が受けるスチール家具の部品点数は268品種。三重工場ではそのうち約150品種を扱っている。色数にして15~16色。クリーム系がその半分を占め、ブラック系、グレー系、ホワイト系が準メーン色として流れている。効率良く生産するためにクリーム系を専用ラインにするとともに、準メーン色を含むその他の色相に関しては色替えブースで対応することになった。
色替えは2人で15分
粉体塗装機器は既に実績のあるノードソン製を最終的に採用した。クリーム系の専用ブースはカートリッジ式のプラスチックブースを導入。また色替えブースはノードソンが誇るツインサイクロン式カラーマックスを導入した。壁面はサンドイッチ構造のPP(ポリプロピレン)仕様となっている。ガンは世評の高いシュアコートガンにガンコントローラはiControl System(アイコントロールシステム)だ。
このガンコントローラはカラータッチスクリーンでアイコンベースの簡単操作となっており、設定条件の確実性と再現性の確保及び過剰塗布の低減を目的に開発されたもの。
また条件設定はパネルのワンタッチ簡単操作で、128Mbコンパクトフラッシュメモリによりプログラムや操作条件の記録が行え、塗装条件は各部品ごとに255種の記憶が可能だ。「ガンコントローラがタッチパネルで操作しやすく、リアルに反応する」と操作性の良さをプロジェクトの一員であった三重工場長の柳田吉範氏は強調する。現在30パターンほどをプログラムさせている。
また両ブースともに1レシプロ8ガンが対面に設置されており、1ガン当たりの吐出量は90g/minと抑えた吐出量となっている。平均膜厚は40~50μm。コンベアスピードは4m/min。
色替えはカラーマックスをコンベア進行方向右サイドに移動させて行う。「現在2人で15分ほどかかっている。熟練度が増すに従い10分前後で色替えは出来るようになる」と柳田工場長。
通常色替えは準メーン色の4~5色を対象に日に2回、多いときで日に3~4回と色替え頻度としては決して多いとはいえないが、ブラック、ホワイトがあることからコンタミを忌避するため入念な清掃が求められる。また塗料の使用効率は86~87%水準にあり、「一部の小ロット品は吹き捨てにしていることから、10%ほどのロスは出ている」という。
メタリックの溶剤塗装は、ランズバーグ・インダストリー製のものを採用し、下塗りにマイクロベルを用いて1レシプロ4ガンで塗装。上塗りはREAオートガンを使用し、下塗り同様1レシプロ4ガンでウェットオンウェットで仕上げている。このメタリックブースは従来のものを使用し、乾燥炉は溶剤塗装専用。コンベアスピードは2m/min。
同工場の表面処理ラインは前処理から塗装ラインまで一貫ラインとなっており、全長450mといった規模。前処理ラインは予備脱脂→本脱脂→第1水洗→第2水洗→表面調整→化成処理(リン酸亜鉛)→第3水洗→第4水洗→純水洗、そして水切り乾燥の工程。前処理ラインはフルスペックの仕様。続いて塗装ラインに入り、メタリック塗装もしくは粉体塗装を経て焼付乾燥(熱風乾燥炉)の工程。焼付温度はメタリックが140℃×20分、粉体塗料が180℃×20分に設定している。
加工技術を生かし業容の拡大
品質管理は外観による目視の他、ロットごとに抜き取りで密着、硬度、色差、光沢などメーカーの品質基準に則り検査している。
同工場は32人で運営されており、現場は28人が担当している。現場担当者はすべて現地での採用。粉体塗装立ち上げ時は1週間ほど交替で本社に研修にいくなどして粉体塗装の基本から学んだ。溶剤系塗装のように熟練を要しないところが粉体の大きなメリット。
その他、粉体塗装導入によるメリットは塗装不良がほとんどないこと。従って歩留まりが大幅に改善された。「溶剤系塗装はタレ、スケといったことから1.3%ほどの不良があった。そのリコートでも手間がかかった。粉体塗装にすることで1コート1ベークで仕上げられ、前後の工程を含め工程管理が容易になった」と柳田工場長。デメリットは、全般的に塗料単価のアップ、ことに少ロット調色のコスト高を挙げる。
また一ノ坪管理部長は「溶剤系塗装の場合、350℃で燃焼させる脱臭装置を使用していたのでその分エネルギーコストがかかっていた。今回の粉体塗装に切り替えたことでエネルギーコスト的には低減となっている。更に塗料の回収再利用でトータルコストは下がっている」と言明する。
本社工場及び三重工場を含めたひと月の同社の塗料代は400万~500万円。
粉体塗装に切り替えたことで生産性が高まったことから、従来のスチール家具の他に、設備に合うものであれば積極的に異業種に進出している。「スチール家具で培ってきた高品質・高付加価値のモノ作りを生かしていく。これまでも独自の機構や付加機能を持つ製品を開発し、数多くの実用新案を取得してきた。設計・開発の企画段階から提案出来るので、そのメリットを生かし、仕事に結び付けていく」(一ノ坪管理部長)意向を示す。(青木)
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本社前景