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Web特集

2005年12月12日

シリーズ: 揺れるライン塗装

揺れるライン塗装 No.128 大谷ナショナル電機 コンパクト色替えブースで生産性アップ

照明器具の製造を行っている大谷ナショナル電機(本社・大阪府枚方市、社長・松宮浩行氏)は今年の5月に約4,000万円を投じて粉体塗装装置の更新を行った。回収効率の向上と生産性アップによる原単位でのコスト低減に向け10年ぶりの更新。懸案の短時間色替えによって30%の生産性アップと塗料の回収効率の向上によりトータルコストダウンを実現した。

首都圏の都市再生やシルバー層の都心回帰などからオフィスビルやマンションの新設着工数が好調に推移している。それを受け照明器具関連も生産増が続く。

大谷ナショナル電機は松下電工の照明器具をメーンに製造しており、家庭用の反射板からデザイン照明器具までその品種は多種多様。素材も鉄、アルミ、工芸硝子、樹脂とさまざまだ。塗装品に関するだけでもひと月に600品種に及ぶという。しかも受注生産に対応していることから短納期が求められる。「中国でも生産していますが、国内ニーズである多品種・小ロット・短納期には対応出来ない。しかし中国との価格競争が付いて回る以上、合理化により生産効率を上げ原単位のコストダウンを図り、価格競争を高めるしかない」と生産技術部生産技術グループ・穴田修氏は説明する。

20051109-6-1.jpg生産技術部生産技術グループ・穴田修氏

粉体塗装設備は10年前に導入したもの。メーンライン(トリボガン)とサブライン(コロナガン)の2ブースで対応してきたが、生産量の増加とともに1日に1回から2回の色替えを行い、かつ小ロット対応していてはなかなか生産に間に合わない。メーン色以外は吹き捨てにするなどで対応を図ってきた。しかし、廃棄塗料が増えるなど課題を抱える中で生産設備の見直しがトップダウンで決まった。

20051109-6-3.jpg主な照明器具

「この10年間、粉体塗装機器の情報から遠ざかっていたのでギャップがあった。そこで全く白紙の状態で塗装ラインを見学させて頂くなどして4社の塗装機器メーカーに冶具と被塗物を送り、条件を示し塗装して頂くところから選定に入って行った」という。


20051109-6-4.jpg銀蒸着の照明器具

そして2社に絞り込み、現在の品質同等以上の品質保持を条件に、色替え清掃のしやすさ、塗料の回収効率、塗着効率、価格などのファクターからホソカワミクロンワグナーを選択した。「被塗物1個当たりへの塗着効率と価格が最終的な決定要因」と打ち明ける。特に同社の照明器具にはプレス絞り加工によるものなど特殊加工した製品が多い。これへの入り込み性、付き回り性が求められる。

色替え時間は2人で15分

同社の生産ラインはコイルからの一貫ライン。コイルで搬入し裁断、プレス、塗装、組み立ての工程だ。


20051109-6-5.jpgコイルからの一貫生産

表面処理工程は全長150m。前処理はSPCラインとALラインの併用になっており、SPCラインは脱脂→本脱脂→水洗→市水ミスト→表面調整→化成処理→水洗→水洗→市水ミスト→純水洗→純水ミスト→水切り乾燥。そして粉体塗装ラインに入る。

20051109-6-7.jpg前処理ライン

導入した粉体塗装ブースはホソカワミクロンワグナーが納めたスーパーキューブブース。ワグナー社が短時間色替えに主眼を置いて開発したブースシステム。

ブース本体は特殊プラスチックを採用、ブース内は一体構造で塗料の付着を少なくし色替え清掃の短時間化を図った。また塗料を回収する床面はブース中心部とブース側面落下部のテーパー部に新開発のエアーブローノズルを設け、各々ブロック分けを行い、ブロックごとにパルスエアーでブローし、床面をクリーニングする仕組み。その対面には吸引のサンクションスリットがあり、吸引された塗料はダクトを通じて回収される。

大きな特徴の1つはブース内の気流制御にある。ブース下部のサンクションがブース床面に設けられており、どの位置からでも均等な制御風速を送ることが出来る。今回の採用でもこの技術が評価されたようだ。

今回は被塗物の関係からコンパクトなブースにするとともに、トリボガンとコロナガンを併設した。縦型1レシプロ4ガンを対面にトリボガン用とコロナガン用の2対にした。

吐出量はコロナガンが1ガン当たり120g/min、トリボガンが1ガン当たり60g/minと抑えた吐出量。被塗物とのガン距離は120~150mmにあり自動移動となっている。「被塗物は3段掛けにしており、トリボガンは絞り加工の入り込み性・付き回り性の求められる製品専用に使用している。また形状によっては補正を入れるモノもある」という。ラインスピードは2.3m/min、平均膜厚は70~80μm に設定しているが手前大円部分の付着量がどうしても多くなるようだ。

1日に30品種の照明器具に対応しており、色数は8色。アイボリー色が半数を占め、残り4分の1がクールホワイトなどのホワイト色。全色回収再利用しており、色替えは1~2回。従来の色替えは2人で40分かかっていた。コンタミネーションを忌避するために丁寧に清掃していたことも時間のかかる要因に上げられる。今回高速色替えブースの採用で、2人で15分前後と大幅な時間短縮を実現。清掃時間の目標は10分以内に置いており、慣れるに従い更なる時間短縮も可能だ。

回収効果から廃棄が大幅減

また懸案事項であった塗料の回収効率は90%をやや下回るレベルにあり、「目標を93%に定め、ひと月ごとに1%でも回収効率を高める努力をしていく」と意欲的な姿勢を示す。

本格稼働に入って5カ月が過ぎ、期待値に近い結果が得られ、ほぼ満足出来る状態にあるという。生産性で30%のアップを達成し、廃棄塗料も格段に減り、原単価のコスト低減にも大きく寄与している。「直効率が高まったことで前後工程もスムーズに行くようになり全体的に好循環で回るようになった」と率直な感想。


20051109-6-8.jpg着荷

しかし、すべて順調に立ち上がったわけではない。月産40万個(新ラインで30万個)のフル稼働に入るとサイクロンからの吸引でアウターブースのエアーが足りなくなり塗料がブース内から流れ出るといった現象が生じた。「時間当たり1万3000m3の排風量設計になっているが、一時的に空気圧が下がってブースから塗料が流れ出た。冷房と換気扇を付けるなどして事態は収拾した。吸引にかなりのエネルギーがかかっている。そこで吸引用モーターにインバーターを付け被塗物形状や塗料の種類と吸引力(エネルギー)に相関関係があるのかどうかデータ取りを行っている」とコメントする。


20051109-6-9.jpgトリボとコロナの併設ブース
20051109-6-10.jpgパウダーセンター

続いて「さまざまな問題が出てくる中で、メーカーとひとつひとつ協議しながらつぶしていくことで自社のノウハウを培っていくことになる」と前向きだ。

塗料にしても、現在大日本塗料製品を使用しているが、「我々のテーマに対しきちんと応えて頂いている。塗料メーカー、機器メーカーと我々が共同ワークを図りながらやっていくことが重要」と三位一体を強調する。

同社には粉体塗装製品の他、塗装鋼板を用いてプレス加工したものや銀蒸着にクリヤー塗装した製品などもある。照明器具にとって光の反射率が大きなファクターを持つ。特に銀蒸着は注目されており、この世界では同社だけとあって引き合いも多いようだ。


20051109-6-11.jpg焼付乾燥炉

更に同社にはもう1ライン粉体ラインがある。こちらも更新期にあり、来期の投資を検討している。(青木)

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