Web特集
2006年05月26日
シリーズ: 水性自動車補修塗料システム
水性導入のための基礎講座・日本ペイント 水性自動車補修塗料システム(3)
その中で補修業界に関わる規制基準として比較的受け入れられているのが表8に示すナショナルルールとルール45及び1151です。この3つのルールの違いは分類ではなく塗料中のVOC上限値です。各州はこれを基本として規制を進めています。この規制値に対応する溶剤は、表6に示すHAPs物質です。
この中での特徴は、ベースコート/クリヤーコートにおける平均値を採用している点です。ルール1151の上限値はEUの値と同じですが、EUの場合はベースコートとクリヤーコートそれぞれでこの値を守らなければなりません。一方、アメリカのルールでは、表9中の式に照らし合わせて上限値が設定されます。例で示すようにこれによりベースコートの水性化が必須とはなりません。アメリカの水性に対する考え方もあり、現状ベースコートの水性化普及率は極めて低いのはこのためでもあります。しかしながら、カリフォルニアなどでは水性ベースが徐々に普及しているとの情報もあります。
表10には、EUとアメリカのVOC定義などの違いがまとめられています。両エリアでの考え方が分かって興味深いです。
1.2.4 アジアでの規制
アジアでは台湾と韓国がいち早くVOC規制法令を公布しています。この隣国の規制法令と、光化学スモッグ注意報の発令件数が減少していないことが、日本における改正大気汚染防止法につながったという見方が強いです。その他タイでもどうやらトルエンやキシレンの塗料中の濃度基準が設けられるようです。
中国も大気汚染が深刻であり早晩VOC規制が始まるものと思われます。当面アジアにおいては塗装設備が不十分であるため水性ベース塗料の義務化などはないと思われます。
1.2.5 終わりに
諸外国のVOC規制についてEU、アメリカを中心に現状の水性塗料使用について解説します。
日本の法令は、今までどちらかというとアメリカの動向を注視してきたようですが、今後はEUをモデルにするケースが増えてくると考えられます。自動車リサイクル法案などがその例でしょう。
日本の今後の規制動向は、もちろん大気汚染の改善状況に大きく依存すると思いますが、EUの水性化普及率と削減実績が明らかになってくる2008年頃にはEUやアメリカと同様に塗料のVOC上限値設定とベースコートの水性義務化が地方自治体の条例による規制強化とともに行われる可能があります。殊に、アジア各国が規制法令強化に踏み込めばなおさらです。国内だけでなく諸外国の動きにも注目です。
第2章 環境配慮型塗料について
2.1
2.1.1 環境配慮型塗料のタイプ
地球レベルでの環境問題が年々重要視されてくる中、塗料業界においても、自動車、家電、外装建築など種々の塗料用途における規制や品質、塗装設備などに適合した環境配慮型塗料が日々進化を続けています。これらの環境配慮型塗料で、現在最も代表的なものについて3タイプを簡単に紹介します。(表1)
○ハイソリッド塗料:溶媒として有機溶剤を用いる溶剤型塗料ですが、用いる樹脂の高固形分化と低粘度化を両立することによって、VOCの規制値を達成する塗料です。既存の塗装設備や塗料材料技術の応用が比較的容易ですが、VOC削減効果については一定の技術的限界があります。
○水性塗料:溶媒として有機溶剤の代わりに水を用いるタイプで、VOCの削減効果は非常に大きくなります。水性塗料に用いる樹脂は、水に溶解あるいは安定的に分散出来るよう設計されなければなりません。水性塗料の特徴として、乾燥性が湿度の影響を受けやすい、氷点下になると凍結するなどがあり、施工時の湿度や保管の温度には配慮が必要です。建築内外装関係ではかなりポピュラーな塗料系です。
○粉体塗料:平均粒子径が25~35μm程度の粉状の塗料です。粉体塗料が塗装ガン先端または内部で荷電され、被塗物との静電気力により塗着する静電スプレー塗装法が広く利用されています。有機溶剤をほとんど含んでいないため、VOC削減効果は究極的ですが、粉体状の塗料を高温(180℃程度)で溶融させて塗膜を形成させるため、一般的には弱電用途に代表されるような塗装、焼付設備を必要とします。従って、粉体塗料は自動車補修の分野では応用が困難な塗料系です。
2.1.2 自動車補修における環境配慮型塗料
日本の自動車補修業界における環境配慮型塗料は、数年前に国産の水性ベースコートが発売されたあと、各国産塗料メーカーが徐々にラインナップを進めています。また、既に水性市場で実績がある外資系塗料メーカーでも、環境配慮型商品の日本市場への投入が積極的になってきています。
日本では改正大気汚染防止法が施行されましたが、自動車補修市場では、従来の溶剤型塗料の使用も可能です。従って厳しい法規制のもと、水性への移行を余儀なくされているヨーロッパ市場と異なり、しばらくは水性と環境配慮型溶剤形の2本立てで環境配慮対策が進むものと考えられます。現時点における、自動車補修の各工程における環境配慮型塗料の傾向を表2に示します。以下この章ではこの表に沿って、各塗料種について溶剤形及び水性における環境配慮型塗料の解説を行います。
2.1.3 プライマーサーフェーサー
プライマーサーフェーサー(以下プラサフと表現)については、従来の溶剤形のものでも固形分濃度が非常に高く、VOCの削減という点でハイソリッド化手法は効果的ではありません。溶剤形の環境配慮策は、第二石油類化やPRTR法対応がメインとなっています。VOCの削減に有効なのは水性化です。手攪拌で容易に水と混合分散可能なウレタン硬化剤の開発により、水性プラサフは2液ウレタン硬化タイプが主流となっています。溶剤形で用いるウレタン硬化剤は水には不溶性で均一に混合することは出来ませんが、水性用硬化剤はウレタン硬化剤の主成分であるポリイソシアナートの分子中にポリエーテルなどの親水性の高い官能基を導入することで、水中に安定して混合出来るように工夫されています。溶剤形と同様に、ポリイソシアナートと主剤に含まれるポリオール樹脂からなるウレタン結合形成反応(式2.1)を水性プラサフの硬化システムとして応用することで、乾燥時間や研磨性、密着性など、従来の溶剤形の品質や作業性を確保しています。ただし、ポリイソシアナートは水の存在下ではウレア結合を形成(式2.2)し、主剤のポリオール樹脂との反応が阻害されます。従って、塗装~セッティングのあとは、速やかに所定の強制乾燥を行うことで、指触乾燥塗膜中に残存する水分を蒸発させるとともに、主剤のポリオール樹脂とポリイソシアナートの反応を進行、完結させることが塗膜品質の確保の上で重要です。