Web特集
2006年06月08日
シリーズ: 揺れるライン塗装
設備投資回復、工場床改修需要が拡大(床用) 大手ユーザー「水性スペック」採用へ
好調さはデータでも裏付けられている。国土交通省が発表した平成17年度の建築着工統計によると、民間建築主による工場、事務所などの非居住用建築物の着工面積は3.8%増の6,548万m2となり、3年連続の増加となった。
使途別では、事務所4.5%減の689万m2、店舗9.7%増の1,246万m2、工場6.8%増の1,413万m2、倉庫16.3%増の899万m2。
また用途別でも、鉱業・建設業用120万m2(1.8%増)、製造業用1,588万m2(16.6%増)、情報通信業用64万m2(11.8%増)、卸売・小売業用1,426万m2(9.5%増)、金融・保険業用53万m2(31.1%増)、不動産業用283万m2(12.6%増)、飲食店・宿泊業用241万m2(15.2%増)、医療・福祉用764万m2(8.3%減)、その他サービス業用781万m2(4.4%減)。最大面積を持つ製造業用でも2ケタ増と堅調に推移しており、床用塗料市場の好調さを下支えしている。
床用塗料メーカーの多くは、改修物件を主な対象としているため、新築着工の動きとは直接連動しないものの、民間分野を中心に回復しており、各社10%前後の売上増を確保している。床用塗料のマーケット規模は、有機系に限ると130~150億円規模と推測される。しかし各社とも「本当の景気回復なのかどうか分からない」と今ひとつ手応えを感じられないでいる。
景気が回復しているとはいえ、営繕に充てられる予算は厳しく、溶剤系製品、薄膜アクリルといった従来品の需要が根強いのもそのため。メーカー各社はノントルエン・キシレン化、水性化を図った環境対応製品での需要を喚起するものの、作業性、コストアップがネックとなり、思うような置き換えが進まない現状となっている。
平成16年度の日本塗り床工業会の実態調査によると、仕上げ材、中塗り材、下塗り材、トップコートを含めたエポキシ、ウレタン、アクリル系製品の水性化率は、エポキシ樹脂2.8%、ウレタン樹脂22%、アクリル系その他40%。トータルで16%と低調な推移となっている。アクリル系については、各社水性化をラインアップしているものの、依然溶剤系の需要が半数以上を超える状況にある。
もちろんメーカー各社は、溶剤型エポキシ系、ウレタンの水系化に着手。また無溶剤タイプでも可使時間や施工性の問題があることから、水系化の開発を急いでいる。しかし「作業性が難しくなり、汎用性を失うことになる」(メーカー担当者)と、技術面と営業面のバランスをいかに図るかが課題となっている。
現時点での環境対応の方向性としては各社、ホルムアルデヒド放散等級F☆☆☆☆の取得、鉛・クロムフリー化、トルエン・キシレンフリー化を徹底させる動きが目立つ。「法規制などの強制力が介入されなければ、水性タイプの需要は急速には高まらない」というのがメーカー各社の一般的な見方となっている。
また環境対応を図る一方で、現在各社が力を入れるのは、機能性製品の開発。防塵性、耐薬品性、耐汚染性、帯電防止性などに続く機能付与を図ることで、新たな需要を開拓したいとの狙いがある。
特に最近では、厨房や食品工場を対象にした耐熱水性コンクリート塗り床材の投入が目立つ。これまでも展開してきた用途だが、厳しい使用環境にあるため既存塗膜の膨れ、剥がれ、またコンクリートの打ち放しによる劣化も多いため、機能訴求で巻き返しを図る。
日本塗り床工業会でも今年秋の発刊を予定している『塗り床ハンドブック』(改訂版)に熱水性試験項目を盛り込む予定で、新たな需要分野として期待されている。
民需主導で水性化へ
物性の向上が課題
長く氷河期にあった塗り床材マーケットが動き始めた。下支えする設備投資回復から、大手企業の工場床の改修がここ1~2年増加。特に自動車メーカー、電気メーカーの工場床の改修が進んだ。コスト的には厳しいものがあるものの「メンテナンスをこれ以上先送り出来ない」というユーザーが増えている。
大手から中堅にまで床の塗り替えは浸透しつつある。「まだ一気に拡大するほどの勢いにはないが、着実に需要の裾野が広がってきた」と塗料メーカーの担当者はコメントする。
塗料メーカー各社はホルムアルデヒド問題や改正建築基準法を受けて、ホルムアルデヒド放散抑制や鉛フリー・トルエン・キシレンフリーに対応した製品開発に注力してきた。「学校施設ではTXは事実上使えない」状況にある。
しかし公共予算の圧縮から官公需は依然冷え切った状況にあり、メーカーの思惑通りには需要が伸びていない。「トルエン・キシレンフリーは当然のスペックとなっているが、改修したくても予算がつかないケースが多い。これでは製品が認められても需要にはつながらない」と話す。
環境適合タイプの塗り床材はむしろ民間の大手から需要が拡大する傾向にある。トヨタ自動車など自動車メーカーが工場床の大規模メンテナンスで採用しているのは水性スペックが中心。「環境適性の最も高いスペックを」とのニーズが強まっている。ハイビルドなどを経て水性へという流れよりも「大手は一気に水性シフト」の傾向。
このため塗料メーカー各社は水性塗り床材の抜本的な性能アップに迫られている。薄膜タイプの水性は2液タイプでラインアップし、アクリル系からウレタン、シリコン系までをほぼ品揃えしているケースが多い。厚膜タイプはハイビルドないし無溶剤の指向が強かったが、水性システムが勝負どころとなりつつある。
TXフリーの次は確実に水性の技術競争が鮮明となってきた。ある塗料メーカーは「次世代水性としては3年先くらいをめどに開発する体制にあったが、市場の感触は1年ないし2年以内に製品化する必要があるのでは」と水性シフトの動きは速まる気配。
このためシリコンなどの無機バインダーへの関心が高まっている。「コスト面などの課題はあるが、次の塗り床材の方向で注目するべき」と技術担当者は見る。
マーケットの方向では、IT関連の工場床分野がターゲットとなってきた。この分野の多くがメンテナンス時期を迎えていることが要因。帯電防止からクリーンルームまで対応した機能性塗り床材のニーズが出始めている。しかしシビアな施工管理が求められるため「万全の管理システムを提案していきたい」との方向だ。
また抗菌環境が不可欠となった食品工場においても、機能特化した塗り床材の需要が広がってきている。
今後環境という軸と特殊機能という軸が塗り床材の基本コンセプトとなりそうだ。各社とも「量よりはスペックの性能評価をユーザーに訴えていきたい」との指向にある。