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Web特集

2006年06月19日

シリーズ: 水性自動車補修塗料システム

水性導入のための基礎講座・日本ペイント 水性自動車補修塗料システム(4)

2.1.4 ベースコート
従来の溶剤型塗料を用いたときの、プラサフ~ベースコート~トップクリヤーにおける各補修工程の排出VOC割合を(図1)に示します。塗料類において、ベースコート由来のVOC排出量が最も多いことが分かります。従ってベースコートのVOC削減が、全補修工程のVOC削減において最も影響が大きいといえます。これはプラサフやクリヤーと比較し、ベースコートの固形分濃度が低いためです。


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外資系も含め塗料メーカー各社は、溶剤形、水性ともに、環境配慮型ベースコートは1液常乾タイプを中心にラインアップを進めています。従来の溶剤型ベースコート市場では、2液硬化タイプと1液常乾タイプの2種類が共存していますが、徐々に1液常乾タイプに移行しています。また、外資系メーカーのベースコートは通常1液常乾タイプです。ベースコートの将来性を考慮すれば、1液常乾形で環境配慮塗料を開発するのは当然の結果でしょう。


溶剤型1液常乾形でVOCを削減するタイプには既に種々の製品が市場に存在しますが、トップクリヤーと合わせてVOC排出量を420g/リットル以下とするヨーロッパの規制値を達成するベースコートは存在していません。メタリック感の確保や高鮮映性原色の低粘度化の難しさなどにより、規制値を達成出来るベースコートのハイソリッド化は、現状では技術的に不可能といえます。日本における溶剤型1液ベースコートの現在の傾向は、VOC削減によって環境負荷を減らすだけでなく、固形分のアップによる高隠ぺい塗料という特長を伴って市場に導入されています。また、第二石油類化やPRTR法にも同時に対応を行っています。


先にも述べましたが、ベースコートは水性を用いなければ、ヨーロッパの規制値を達成することは出来ません。この理由からヨーロッパでは水性化が進んでおり、現時点でEU諸国の水性化率は50%を越えています。日本国内において、水性塗料でなければ達成出来ない法規制が制定されるという見通しは今のところありませんが、自動車メーカーも含めた自動車補修塗料業界の自主的な努力によって、水性ベースコートの市販が近年本格化してきています。
自動車補修に特有の事象と関連させて「メイン樹脂」と「フラッシュタイム」についての水性塗料設計の考えを述べます。

○メイン樹脂:自動車補修におけるベースコートの塗装行程では、常温のエアブローのみで指触乾燥が可能で、しかもゴミなどが付着した場合にはペーパーにより研磨修正出来る程度の塗膜硬度を発現する乾燥性が必要です。また、硬化剤を用いない1液常乾タイプですが、密着性や耐水性などの塗膜品質の確保が必要です。これらの乾燥性や硬度と密着性、耐水性などの諸性能をバランス良く持ち合わせた樹脂として、ウレタンディスパージョンをメイン樹脂に用いることが主流となっているようです。この樹脂は2液タイプと異なり、あらかじめ分子内にウレタン結合を組み込んだ構造を有しています。ウレタン構造は分子間で水素結合を形成する性質を持っており、架橋反応を用いなくても、水素結合による疑似架橋構造(式2.3)を形成していると考えられます。このため分子間の凝集力が強く、常乾のみで硬度や密着性、耐水性などの品質を発現出来ます。


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フラッシュタイム(指触乾燥時間):自動車補修工程において、ベースコートは隠ぺいするまでスプレーによる塗装とエアブローによる指触乾燥を繰り返します。スプレーを行っている時間は、水性と溶剤形ではさほど違いはありませんが、指触乾燥させるフラッシュタイムが水性と溶剤形では条件によって大きく異なってきます。通常、水性は溶剤形よりも乾燥速度が遅く、降雨時など相対湿度が高いときには更に遅くなり、乾燥時間が長くなります。雨の日に洗濯物が乾きにくいのと同じ現象です。塗装に要する時間を短くするためには、主に1)フラッシュタイムを短くする方法2)少ない塗装回数で隠ぺいさせて塗装と乾燥の工程を減らす方法の2種類が挙げられます。(図2)


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1)のフラッシュタイムの短縮化には、塗装条件下の相対湿度を下げることが有効で、具体的にはブースの暖機運転や温風によるエアブローがあげられます。塗装環境の温度を5~10℃程度上昇させることで、相対湿度は10%程度下がり、乾燥時間の短縮が可能となります。塗料メーカーによっては、速乾タイプの希釈剤をラインアップしているところもありますが、この種の希釈剤は揮発性の高い溶剤を多量に含んでおり、VOCの上昇と危険物化を招くため、水性塗料の意義を揺るがすものです。2)の塗装回数の削減については、ベースコートの高隠ぺい性化や下地の明度とセットで色相を再現させるセットグレー中塗りの考え方が有効です。

2.1.5 トップクリヤー
トップクリヤーについては、ほとんどのメーカーがハイソリッド化によって対応を行っており、水性クリヤーを商品化しているメーカーはわずかです。この理由として、水性ベースコートと溶剤型ハイソリッドクリヤーを組み合わせることで、VOC排出規制値の420g/を達成出来るため、ヨーロッパでも市場から強く求めてられていないものと考えられます。


溶剤型クリヤーのハイソリッド化には、NAD(非水分散形)樹脂合成技術の応用による、高分子でかつ低粘度な樹脂の適用が挙げられます。この塗料液は樹脂が粒子状態で溶剤中に分散しており、乳白色を呈しています。これが塗布され、乾燥が進むにつれ粒子同士が接触し合い、均一な透明膜を形成します。


水性クリヤーも同様に、樹脂粒子を水に分散させたディスパージョンを主剤に用いています。硬化剤は水性プラサフのところでも述べた、水性用のウレタン硬化剤を用います。VOC規制の観点だけから考えると、水性クリヤーは今のところ必ずしも必要なものではありませんが、非危険物でかつ有害性も低いことから、ブース外作業における活用方法の有用性が見いだされる可能性もあると考えます。

2.1.6 その他
パテ:一般的に塗料用樹脂は、固体の樹脂を流動させるために溶剤を加えて樹脂溶液としています。ところがパテは流動性のあるペースト状で、これはそれ自身が液状の反応剤が主成分であるため、VOCにはカウントされません。しかしながらパテは一般的にスチレンという反応剤を含んでおり、このスチレンは有規則に抵触する物質です。このスチレンを含まないスチレンフリー化がパテにおける環境配慮のひとつの方向性であり、現在、市場への投入が始まりつつある状況です。


ガン洗浄剤、脱脂剤:先に示した(図1)から分かるように、脱脂・洗浄やガン洗浄はVOCの排出量が非常に多い工程です。溶剤形の場合、脱脂剤やガン洗浄剤の成分の100%が有機溶剤であるため、VOC排出量に対する影響は非常に大きくなります。逆を言えば、水性タイプの脱脂剤やガン洗浄剤を用いれば、これらの部分のVOC削減効果も大きく、補修工程全体を考えたVOCの削減ではかなり有効な手段となります。

2.2 1液ベース水性塗料
2.2.1 はじめに

自動車補修作業の各工程に用いる従来の溶剤形塗料類において、ベースコートが最もVOC含有量の多いことが(表1)より理解出来ます。
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従ってベースコートの水性化が、全補修工程のVOC削減において最も効果が大きいといえます。国内の溶剤型ベースコートは、一般的に2液ウレタン硬化型と1液常乾型の2種類がありますが、水性ベースコートに関しては、国内外の塗料メーカーいずれも、1液常乾型を中心に商品化されています。この章では、水性1液ベースコートの設計に関する解説を行います。


まずは、自動車補修用1液ベースコートの原色構成について述べます。かつての国内乗用車市場は、白、黒、赤などのソリッド系塗色が主流でしたが、近年ではメタリック色やパール色が主流に取って代わってきています。


自動車補修の場合、古い塗色から最新の塗色まで再現する必要性があり、そのために原色も幅広くラインアップしています。通常のラインアップの内容は、(表2)に示すようにアルミ顔料を用いたメタリック原色パール感を発現させるマイカ原色白、赤、黒などの着色顔料を配合したソリッド原色メタリックやパールなどの光輝顔料の配向性を調整するスカシ調整剤や補正用クリヤー、そして塗装作業工程で用いられるアンダークリヤー、ボカシ剤などがあります。


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