Web特集
2006年07月27日
シリーズ: 揺れるライン塗装
揺れるライン塗装 No.133 島新精工 ロボット塗装で高品質、高外観追求
景気は回復基調にあるというものの、塗料・塗装を取り巻く環境はしっかりとした足取りとは言いがたい。自動車を主体に工作機械、産業機械など輸出関連が好調に推移しているものの、内需関連はIT絡みを除くと住宅部材や金属加工などはやや低調、斑模様にある。従って工業塗装においても明暗が分かれてきた。
島新精工は小物の精密塗装に特化。高品質で、かつ低コストなモノ造りの創造を目指し取り組んでいる。同社を一躍世に知らしめたのは水系塗装への挑戦だ。6年ほど前にプラスチック成形品への水系塗装の依頼を受け、2年間にわたる試行錯誤の末、目的とする塗装条件を見出すことに成功した。 「当時の国内塗料メーカーの水系塗料は現在ほどのレベルではなく、塗料の安定性を始め懸念すべき問題点が多々あり、苦難の連続であった。特に水性2液ウレタン塗料は開発段階にあり、実績は皆無に等しい状況」と二村哲哉工場長は当時を振り返る。実績のある海外塗料メーカーの水性2液ウレタン塗料はポットライフが30~40分程度で、作業性において大変苦労したようだ。この2年にわたる試行錯誤はその後スタッフに大きな自信となった。
同社は1994年に時計やプロジェクターなど精密部品の製造・組み立てを行う安曇精工グループの組み立て部門としてスタートした。1998年10月に塗装事業部として独立、島新精工を設立。そして2年前に現工場地を取得し現在に至っている。今日の事業内容はプラスチック及び金属成形部品の塗装、印刷(スクリーン、タンポ)、組み立てまでを行う。
社員は総勢32名。平均年齢が30歳代前半とフレッシュな会社。塗装の歴史は8年に過ぎないものの「大手企業が海外生産に向かう中で、国内企業を対象に難度の高い仕事をすることでここまで来た」と二村工場長はコメントする。
DATA・PRO導入で効率化
同社の塗装管理は徹底している。塗装ブースはクリーンルーム内クラス5000から7000にあり、かつ温湿度がコントロールされた環境。「ゴミ、ブツによる不良を避けるために出来ることは何でもやってきた。不良の多くは人が持ち込むケースが高い。従ってロボット塗装による合理化された塗装設備を導入してきた」と宮澤辰登次長。
保有する塗装設備は、小物の精密塗装用にはタクボエンジニアリング製のスイングアーム式ターンテーブルによるタクト塗装対応のSOFTBOY PRO、回転式4テーブルWターンタイプで2テーブル同時に回転塗装が行えるSOFTBOY PRO SUPER SPINDLE NTタイプ2台、そして回転式4テーブルターンタイプで2テーブル同時塗装が行えるSOFTBOY PRO SUPER SUPINDLE DOSタイプ1台の計4台。
更に自動車内装部品用には旭サナック定型式最軽量コンパクトな垂直多間接6軸ロボット・アポロマンJE05に昨年導入した同シリーズの天吊式ロボットを配している。
また昨年の10月にはUVコーティングシステムを導入するとともに今年の1月にタクボエンジニアリングが開発したネットワーク塗装システムDATASS-300(デイタス300)のデータ作成専用ロボットDATA・PRO(データ・プロ)を導入した。
このネットワーク塗装システムは分離作業の発想から生まれたもので、データ作成専用ロボットと同社の生産ロボットSOFTBOY PRO及びSUPER SPINDLとの組み合わせによってティーチングデータ、生産するワークの情報及び塗装条件などをフロッピーディスクやメールに転送出来、どこでも同等の品質とコストで生産出来る管理可能な塗装システム。
「量産ものの立ち上げ時には従来ラインを2~3日止めて条件出しを行ってきた。非常に時間のロスと手間を要したが、DATA-PROの導入によって独立して条件出しが行え、かつ試作が行える。そのデータを現場の生産ロボットに送ることで同じ条件で塗装が出来るので、極めて効率的」と宮澤次長はコメントする。
シビアな生産管理
塗装ロボットの1号機として導入したSOFTBOY-PROは自動車部品のガーニッシュやリアパネルなど樹脂塗装に使用している。塗装後レーザー加工するためシビアな膜厚管理を行っており、平均膜厚20μm±2μmで管理しているという。また同じ自動車部品でもアポロマンJE05は内装部品専用となっており、アルミ製のハンドル部分をフッ素樹脂塗装している。「特殊なオフセット印刷がしてあり、その上に艶消しのクリヤーを乗せる。膜厚は10μm」(同氏)と説明する。ここの塗装ブースのクリーンルーム内は7000レベルに管理されている。
SOFTBOY PRO SUPER SPINDLE NTが導入されているラインはパソコン関連のボタン塗装の他、小物塗装専用となっている。ボタン塗装はピーク時に80万個/月に達したという。UVコーティングのハードコートに対応しており、クリーンルーム内5000のレベル。「ゴミ、ブツ対策にブース外で一度除塵・除電を行い、ブースに入る直前で再度除電を行っている」とゴミ・ブツ対策には最善の注意を払っている。
更にSUPER SPINDLE DOSは昨年の10月からスタートした携帯電話への対応ライン。2コート2ベークを基本に最盛期で50万ピース/月に対応。回転式4テーブルWターンタイプは「2テーブル同時に回転塗装が可能。消費エネルギーコストが小さく、塗装使用量の大幅な削減効果を発揮する」と環境ビジネスISO14001の認証取得を視野に入れた展開を強調する。
同社のラインはすべて連続ラインになっておらずバッチ式で行っている。「小回りが効き、無駄のない生産が行える点がメリットだ。一貫ラインにしてしまうと被塗物の素材、塗装条件、塗料の変更などに対して機敏に対応出来ない」と宮沢次長はバッチ式での優位性を説明する。乾燥炉はタクボエンジニアリングのDRYTEC、ブースも同社のオイルブースを採用。
データによる数値管理2
被塗物は樹脂成形品が多い。素材はPP、PC、ABSとさまざま。塗料は2液ウレタン塗料がメーン。更に高い外観品質を求められるだけに管理はシビアだ。「温湿度の管理から除電・除塵、更にブース1台当たりの給気は約300m3/min、6台で1,800m3/minになるがエアフィルターを通して使用するとともに、塗料は1回の使用量(調合量)を3リットルにし、ペイントポットに作り込んで使用している。そのペイントポットはすべて使い捨て」と徹底した管理体制を敷く。塗料調合には専属を1名置いているという。その塗料もメッシュで濾して使用している。
また被塗物が小物中心であることから冶具の取り付け、マスキング、着荷、脱荷の段取りが大変だ。現場の人員は派遣社員を採用して柔軟に対応している。「毎月の生産計画に合わせて派遣社員を60~70名手配する。生産量と労働量のバランスをきちんと見ていかないと、この変動費が採算を左右しかねない」と井上修二課長は打ち明ける。
同社は昨年品質管理の国際規格であるISO9001の認証を取得した。これを機にデータ管理を強めている。従来もデータ取りはきちんと行い分析してきたが、それぞれの現場にフィードバック出来ず、十分生かせていなかった。「管理のマニュアル化が進み、データがしっかりしてきた。塗装にしても数値管理が行え、勘と経験から脱却しつつある」という。
UVコーティングシステムを導入し、ハードコートへの対応を図り、携帯電話への参入を明確にした。従来の自動車部品やパソコンのボタン、更に高外観・高品質の携帯電話と対応の幅を広げている。その一方で素材への対応も金属、プラスチック、アルミ合金からマグネシウム合金へと進めている。「マグネシウム合金を念頭にリン酸マンガン系の化成処理ラインをこの夏にも導入する方向で検討している。合わせて3コート・3ベークに対応した塗装設備を配備する計画」と営業の川辺新一氏は積極的な施策を進めていく意向を示す。
そして既に実績を有する水性塗装の更なる技術発展に対応すべく、塗装テクノロジーを追求していく方向を鮮明にする。「目指すは精密塗膜メーカー」と二村工場長はきっぱり。(青木)
会社前景