Web特集
2006年07月03日
産機・建機はハイソリッド採用へ(工業用) 2010年をめどに水性本格化か!?
昨年から今年にかけて水性塗料のラインテストが急増している。この4月からの改訂大気汚染防止法施行に合わせ、VOC対策から大手ユーザーが水性塗料の検討を進めるとともに、ラインの更新に伴い、この際だから水性塗料を見ておこうとの将来導入を見据えた引き合いが増えている。
工業用の金属焼付マーケットは金額で約200億円といった試算もあり、そのすべてが水性、粉体に置き換わるわけではないが、VOC規制によって水性、粉体への切り替えが急ピッチに進むと当初予想されていた。しかし蓋を開けてみると2010年までにVOC排出量30%削減を目標に掲げ、法規制と事業所の自主的取組のベストミックスによって目標を達成するといった規制内容に大きな期待が萎んだ感は否めない。
しかし自主的取組に対し、具体的な削減数字を掲げ、最終期日まで明確に打ち出すユーザーもあり、遅々として環境対応が進まないといわれる中で、徐々にではあるが水性塗料を採用する動きが出始めている。
ラインテストに積極的な業種は自動車部品、鋼製家具、物置、配電盤、産業機械、建設機械、エレベーター、車両といったところ。既に良好な結果を得ているところもある。特にラインの更新に合わせ、溶剤/水性兼用ラインにするユーザーが多いことから、2010年をひとつの目安に置いているようだ。
水性はコストアップがネック
焼付分野は屋外用でメラミン硬化系の水性塗料、屋内用ではシックハウス問題からホルムアルデヒドフリーを目指し、ブロックイソシアネート硬化系や酸-エポなどの非メラミン硬化系塗料のニーズが強い。「低VOC、F☆☆☆☆の材料が求められている。しかし従来のメラミン焼付塗料と比較して非メラミン硬化の水性塗料はコストアップがネック」と塗料メーカー。
メラミン硬化系、ブロックイソシアネート硬化系など塗料としてはほぼ完成の域にあり、単純な塗料系ではなく複数の塗料とともにニーズに応じて反応形態も異なるなどポリマー技術を用いた複雑系の塗料となっている。
一方の常乾・強制乾燥の水性2液ウレタン塗料は産業機械、建設機械、車両で検討が進められてきた。ポットライフが短いといった作業性の問題、ワキ・タレ、仕上がり外観などさまざまな問題が指摘される中で、ユーザーの生産性の課題もあり、水性2液ウレタン塗料は先送りされた感が強い。それに代わりハイソリッドを採用する動きが活発化している。
「産機や建機は部位によって塗装仕様が異なる。また鋼板の厚さも異なることから一様に水性2液ウレタン塗料というわけにはいかない。一部の部位に水性2液ウレタン塗料を採用する動きはあるが、大方は従来の溶剤系2液ウレタンのハイソリッド化で当面VOC規制をしのぐ方向」(大手塗料メーカー)にある。
それと水性2液ウレタン塗料は独・バイエル社の特許があり、制約された中でさまざまな界面活性剤を利用するとともに、最適なレオロジーコントロール剤の選定で対処している実情にある。特に硬化剤の水性イソシアネートは水分散タイプとなっており、疏水基を用いて反応を遅らせポットライフを延ばしている。
2液混合装置を各社上市
ラインテストが進む中で、機器メーカーも水性対応を強化している。既にスプレーガンやポンプの防食対策は済んでおり、各社水性静電塗装に向けたガンの開発を進め、安全性を高めた外部帯電式や間接帯電式のハンド・オートガンが開発されている。いずれも特殊な絶縁装置を用いなくても済む機構になっている。更に連続供給・色替えにも対応出来るボルテージブロックタイプも開発され、既に稼働している。
また水性2液ウレタン塗料への対応として2液混合装置も各社開発、上市している。混合方法に特色を持たせるとともに、電子制御により混合精度が極めて高い。しかし洗浄方法が大きなテーマとなっている。「水では完全に洗浄出来ない。アルコールや親水溶剤のブチセロなどを溶媒に使用しないと綺麗にはならない」と機器メーカー。今後塗料メーカーと検討する余地がある。
環境に最も優しい塗料の代表は水性塗料である。その水性塗料を効率良く塗装し色替えを行っていくとなると難しい課題も多い。特に水性塗料・塗装となると最先端は自動車塗料のボディーだ。温湿度管理された環境での塗装。このイメージが各ユーザーに付いて回る。従って水性塗料は管理が大変、莫大な設備投資がかかると、ユーザーの第一声はまずこんな感じだ。
このイメージを払拭するために塗料メーカー、機器メーカーは開発に取り組んできたといっても過言ではない。
溶剤系塗料の歴史を振り返ると、最初から完璧であったわけではない。トライ&エラーによる実証と経験的なノウハウの積み重ねである。水性塗料も同じように塗料メーカー、機器メーカー、ユーザーがそれぞれノウハウを積み重ね、持ち寄ることで進歩していく。
ユーザー、塗料メーカー、機器メーカーの協調が水性塗料の普及に結びついていく。
プラスチック用水性、開発正念場
プラスチック用塗料の水性開発レースが過熱している。各社の目標はまずトヨタスペックである「60℃/20分」の水準。このベーキングレベルは世界的に見ても最も厳しいもの。トヨタは世界供給体制とこの性能水準を採用に向けたエントリー条件とする。「ハードルは高いが、これがグローバルスタンダードと考え、クリアしたい」というのが共通した指向。
自動車用プラスチック塗料市場は拡大を続けている。国内自動車メーカーの海外を含めた生産が増大しているのに加え、車の軽量化を目指しプラスチック部品の採用率が高まっているためだ。「もう一段のプラスチック化が進む」と各メーカーは読む。
トヨタは中国での乗用車の本格生産に着手し、ハイブリッド車など先端車種でも現地生産に踏み切り、遅れた中国マーケットに対するハイテンションの戦略を進めている。
これに伴って塗料スペックに関しても、ベースコートの水性を標準採用。塗装ラインの環境パフォーマンスの面でも20g/m2の高いハードル越えを目指している。塗装プロセスの最先端を走る。
プラスチックコーティングのトヨタスペック(60℃/20分)をクリアするには、合成樹脂の設計から見直す必要がある。既存のポリマーの組成を変えたり硬化系の手直しをするだけでは「対応出来ない」というのが開発担当者の見方。しかしプラスチック部品が増えるにつれ、ABSからPPまでと素材も多様化する一方だ。
これに輪をかけて開発のネックとなっているのが、同じ樹脂でもポリマーメーカーによって配合が微妙に異なり、付着性に差が出る点。付着力に汎用性を持たせるという課題が立ちふさがる。
トヨタの中国拠点へのプラスチック用塗料の供給では、日本ビーケミカル(日ペ系)、関西ペイント、藤倉化成が先行したが、「水性対応に柔軟性を持たせるためバリエーションを増やしていく」課題も残されている。
これに追随するのがオリジン電気、カシュー、大橋化学、武蔵塗料など。各社ともエントリー条件のクリアが最大のハードル、年内の開発目標に向けた動きが活発化している。
4月1日に改正大気汚染防止法(VOC規制)が施行された。VOCを使用する一定規模以上の施設を持つ事業所は、4月中に届出を済ませた。 実際、法的規制の対象となるのは、自動車関連を筆頭に、建材、金属関係など全国200~300施設に限定される。平成22年度までにVOC排出量を平成12年度比で3割削減という目標の内、これら法的対象施設による削減は1割を担保しているに過ぎない。残りの2割は「事業者が自主的に行う揮発性有機化合物の排出及び飛散の抑制を図る」(法律第17条の2)にあるように、個々の企業が進める自主的取組よる削減で実現していく。法的規制と自主的取組で目標を達成する。これが“ベストミックス”の図式となっている。
自主的取組はあくまでも個別企業が主体だが、業界の実態に応じた対応や業界を横断した共通理解、対応を醸成する必要があることから、業界団体及び自治体が推進的役割を担う格好となっている。そのため主要業界団体及び一部自治体では、自主的取組策を策定し、普及推進に向け活発な動きを見せている。
例えば、日本自動車工業会は昨年2月「車室内VOC低減の自主取組みについて」を策定した。車室内におけるシックハウス対策が目的で、2007年度以降の新型乗用車(国内生産、国内販売する乗用車)が対象。厚生労働省が定めた揮発性有機化合物13物質の室内濃度指針値をガイドラインに濃度測定のため「車室内VOC試験方法」を策定した。また今年3月にはトラック・バスなどの商用車(2008年度以降の新型車が対象)まで拡大させると発表した。
日本印刷産業連合会は、印刷関連団体3団体と協力して「VOC排出抑制自主行動計画」を策定。トルエン、酢酸エチル、MEK、IPA、高沸点石油系溶剤を含めたすべてのVOC物質を対象とし、排出抑制に努めていく。
一方自治体では、東京都が積極的な動きを見せている。東京都は中小事業所からのVOC排出が6割を占めていることから、技術アドバイザーの派遣や管理方法書の作成支援など支援業務を中心としている。5月には「東京都VOC対策ガイド」を刊行。同ガイドブックは「工場内編」と屋外塗装における低VOC塗装仕様をまとめた「屋外塗装編」の2部構成となっており、排出抑制の手法を網羅的に紹介している。
東京都が低VOC塗装を推進していることを受け、昨年東京タワーで水性塗装の試験塗装を実施した。また「鋼道路橋塗装・防食便覧」や「鋼構造物塗装設計施工指針」に弱溶剤系仕様や水系塗装仕様が改訂により採用されるなど、今後低VOC塗装仕様の採用が高まると予想される。 日本塗装工業会の「平成16年度VOC排出実態調査」によると、低VOC塗料使用率50%以上となった分野は、路面表示、建物、建築資材向けの3分野。30~50%の分野は自動車新車、電気機械、家庭用。30%未満は船舶、金属製品、構造物、機械、木工、自補となった。業種別によって削減レベルに大きな差が出ている。