Web特集
2006年08月09日
技で拓く 「塗装店の挑戦」(4) 改修工事は「気配りサービス業」だ
同社の創業は昭和45年。後藤氏は元々、家業であるスーパーマーケットに勤務していたが、道路拡張に伴い店を廃業。知人から声が掛かり塗装店に従事したのがこの業界でのスタートであった。
物販という他の業界から来た後藤氏にとって「下請け構造に縛られている点と、サービス的な考えが全くない体質」は業界に対する疑問であり、馴染めない点でもあった。逆説的に、「サービス業的な発想で、顧客満足度の高い工事を提供できれば元請けとしてやっていける」との考えに至り、これが独立・創業時のポリシーとなった。
後藤氏の言うサービス業的な考えとは「工事は我々にとっての商品。まず第一に商品の確かな品質と、その根拠を分かりやすく説明するプレゼン力。それと同じく、現場でのマナーや住民に対する細やかな気配り」を挙げる。
創業時、同社の周辺には弱電関連企業の社員寮や工場が多数存在しており、それらの受注営業から始めた。「例えば女子寮の塗り替え工事では、住民のプライバシーを最大限尊重するため、あいさつはしても、こちらからは絶対に話しかけるなと職人に徹底した」。こうした心配りの一つ一つが施主のマインドに響き、その後のリピートにつながり、事業の基礎固めとなった。
このポリシーは現在にも脈々と流れている。後藤氏は「当社のプレゼン資料は日本一」を自負する。有資格者の社員が行う綿密な調査診断、それを基に期待耐用年数とコストをバランスさせたグレード(仕様)をいくつか用意し、それぞれについて「素人である施主にも十分に理解できる分かりやすい表記を行う」のは当然のこととして、更に細やかな気配りがなされている。
同社はプレゼン資料作成に際して、物件周辺の通行量調査を行い工程表に反映させる。つまり、住民の出入りなど生活時間の動線を把握した上で搬出入の時間を組む。「できる限り住民の方々に負担の掛からない工事」を心がけている点がプレゼン資料で表現され、これが施主のハートをつかんだ。
架設では、工事に携わる者全員に発信機を持たせ、発信機からのパスがなければ足場内に入れないシステムを導入。「シートと鍵だけでは不十分。もし誰かが閉め忘れて子供さんが架設の中へ入ったら危険」と安全・防犯に完璧を期したいためだ。更に「廊下ですれ違いそうになるときは、住民の方に通路を譲る。あいさつは必ずするが、無駄口は叩かない。ただし聞かれたことにはテキパキと応える」など現場でのマナーを徹底。
「ただでさえ一般の人は職人に対してマイナスのイメージを抱きがち。それを払拭するためには過剰なほどの心配りが必要」との認識。
更に同社はISO9001に加え、「社会的な信用を得る上で、環境マネジメントシステムに則った事業運営は必須条件」との考えから、専門工事業者ではまだ少ない、同14001も取得。直需営業をする同社にとって、企業に対する信頼の裏づけとして有効に働いている。
大型マンションの改修工事は大手ゼネコンとの競合になるケースが多いが「現業で培ってきた施工能力(品質)、施主(住民)の視点に立った提案力と現場での心配りは、改修工事のプロとして培ってきた独自の財産」であり、「ゼネコンには絶対に負けない」という自信の源にもなっている。
信頼が受注を高める
こうした方針を貫くためには「やはり人材が生命線」と捉えている。同社の従業員は現在約80名で管理部と工事部の実働部隊が大半を占める。平均年齢33‐34才という若さだ。この内、一級建築士や施工管理士など有資格者が30名所属。職人は約50名で社員と常用の割合は半々ほど。ただし、「当社の方針を徹底するため」常用の職人は同社の出身者で占められている。
基本方針の徹底に加え、コンサルタントを講師に迎えて「工事とは」「管理とは」「マナーとは」などの研修を、月に2回のペースで継続。人材育成に余念がない。
同社では以前、「朝食会」を毎日行っていた。社長の発案によるもので仕事終わりのチョット一杯を朝食会に変え、25年間毎朝、社長自ら全員分の朝食を作った。「食べ方を見れば、その日の健康状態が分かる」と社員の体調をチェック、健康管理に役立てた。このことは「毎朝顔を合わせるので、社員間の団結力が高まった」という副産物を生み同社の社風として根付いた。
こうした人材教育を通じて、仕事の質、現場での姿勢といった方針が全作業員に浸透。仕事の質の高さに対して、「ゴトーさんのところは違う」という住民(施主)の絶対的な信頼を生み出す。評判が評判を呼び、受注率が更に高まるという図式。実際、「1棟の施工がその団地内全棟の受注に派生し、工事金額が5億、6億に膨れるケースが一般的」という。今年の秋だけで25件の工事を予定。営業マンは1年以上先の受注に向けて動いており、安定受注の体制が築かれている。
後藤氏が言う「お客さんは資産である建物の価値を維持するために投資をしている。ならば、投資に見合った、あるいはそれ以上の満足度を提供しなければならない」とのサービス精神を根底にした同社の方針が高い受注率につながっているのは間違いない。
今年5月の決算で同社の売上は25億円に達した。しかし、「30億円がひとつのめど。それ以上の規模は追求しない」との考えを持つ。「売上至上で無理をすれば必ず綻びが生じる。全社員に当社の方針を徹底させ、質の高い工事を遂行するには、末端まで目の届く今くらいの規模が適性」との見方をしているためだ。
同氏は現在、日塗装神奈川支部の支部長を務める。「建物のストック需要は膨大に控えており、同業者が元請けとしてやれるチャンスはいくらでもある。そのためにまず必要なのは、競合相手に勝てるプレゼン力であり、当社が培ってきたノウハウはいくらでも提供する」と、業界への協力も惜しまない。
所在地:神奈川県川崎市中原区新城中町16-10 http://www.rngoto.com