Web特集
2006年08月25日
耐久と環境両立のジレンマ(木材保護塗料特集・市場動向)
木材保護塗料市場は昨年から厳しい市況下に置かれている。公共工事の減少と合わせて、大雪、長雨など天候不順が相次いだことがその要因。一時は森林活性化の振興策として、各自治体で県産材を活用していくといった需要開発の動きも見られたが、厳しい公共予算の絡みから沈静化の様相を呈している。また、大口の需要先であるログハウスでも、日本ログハウス協会によると17年度の販売数量は16年度比で9%減少。市場規模は縮小傾向に転じている。
この市場には、木材保護塗料専業メーカーの他、化学メーカー、塗料メーカー、輸入販売会社、木材加工会社など、さまざまな業態が参入する稀有な市場でもある。発売製品は数十製品に上ると見られ、わずか70億円にも満たない市場にこれだけの企業が参入するのには、この市場のパイオニアでもあり、シェアの半数以上を保有する「キシラデコール」の存在が大きい。武田薬品工業から日本エンバイロケミカルズに社名変更し、大阪ガスケミカルグループに統合された今もその存在は変わらず圧倒的認知度を誇る。「キシラデコール」は既に会社名と離れたところでブランドとして確立している。後発メーカーにとっては、この「キシラデコール」のシェアを切り崩すことが市場参入の目的であり、モチベーションとなっている。
しかし各社、低価格、天然植物油を原料にした自然塗料、水性塗料など、差別化を図ろうと新規製品を投入するもシェアを大きく伸ばすまでには至っていない。むしろ本業を他にする企業が多いだけに、汎用的拡大につなげるには、経営資源を投下するだけの妥当性と難しさを見せている。ただ薬剤成分を配合し、木材を「腐食」「虫」「カビ」から護るという木材保護塗料本来の特性は、環境対応をキーワードとする植物油(自然)塗料、水性塗料の参入により稀薄化されつつあるのも事実。機能と環境の両立をいかに図るかがメーカー各社の課題となっている。
水性塗料は普及するか
規制はマーケットを大きく変貌させる力を持つ。内装用塗料にホルムアルデヒド放散等級の表示を義務付けた3年前の建築基準法の改正は、市場に大きなインパクトを与えた。木材保護塗料においては屋外木部を用途とするため、本来表示の義務付けはなかったものの、F☆☆☆☆表示が市場で独り歩きし、外部用塗料でも等級表示を求める声が高まった。当時、内外部用として販売していた大谷塗料の「バトン」が他社に先駆けてF☆☆☆☆を表示し、一気に販売量を伸ばしたことはよく知られる。F☆☆☆☆の有無は、マーケットを大きく変動させた。現在では当時より落ち着きを見せているが、新たな環境規制の動向に注視する動きは、一層敏感さを増している。
特に国内塗料メーカーは、水性塗料製品の開発で方向性を一致する。油性系を貫く専業メーカーへの対抗として需要拡大を目論むが、しかし実際は普及がなかなか進まない現状にある。現場では、F☆☆☆☆を判断基準にするものの、水性塗料を求める声は少ない。また油性と違って、ボッテリ感があり、浸透しにくく作業性が悪いというイメージもあり、水性に対する抵抗感は依然強い。今年4月にVOC排出抑制法が施行されたが、建築塗料分野は自主削減による対応となっており、水性塗料を普及させる牽引力は弱い。しかし、水性塗料の需要がまったくないということではない。
キャピタルペイントは10年前から水性タイプに特化し、対前年比20%増ともっとも伸長している。まだ販売量が少ないためシェアの占有率は低いが、水性ニーズが高まっていることを裏付ける。同社がここまで需要を伸ばせたのは、油性系、溶剤系との比較ではなく、水性そのものの特質を説明することで、ユーザーの理解を得ようとしてきたことにある。使い勝手の悪さは、塗装技術でカバーできるということを同社は営業スタンスとしている。かなり現場に根付いた営業活動が必要となるため、汎用的に拡大するには時間も労力も要するが、既存の商流の中で新しいものを普及させるには、現場に介入していくことが重要と指摘する。
当然、水面下で高まる水性ニーズに対しては、各社虎視眈々と狙う。水性タイプのラインアップでは和信化学工業が先行するが、この7月に大阪塗料工業と大谷塗料が相次いで、鮮映性を高めた水性ステインを発売した。また屋外用では、溶剤系に特化する日本エンバイロケミカルズや三井化学産資も水性の開発に着手しており、上市の見極めを図っている。
ただ水性タイプのラインアップはシェアを競う材料にはなり得るが、市場全体の底上げには結びつきにくい。そこにはやはり性能が欠かせない。
10年耐久が最大のニーズ
塗装業者11人にアンケートを行った(関連記事11面)。その中で木材保護塗料に求める性能として最も多かったのは“耐久性”という結果となった。
住宅塗装の際、木部塗装の部位は軒天や破風、窓枠、玄関柱などごくわずかに限られる。しかし、モルタル壁や金属部が10年前後の耐久性を有するのに対し、木材保護塗料の塗り替え周期2~3年はあまりにも差が大きい。木部の劣化だけが早く進行するということを知らない施主ならクレームになる可能性があるし、塗り替えるにも足場を架設して塗装するとなると費用負担も大きい。メーカー各社は「塗装して、1年後に再塗装することで、耐久性は格段に向上する」としているが、現実では難しい状況にある。この耐久性の差は、結果的に施主の評価に直結する塗装業者の負担を大きくしている。
事実、木材保護塗料に浸透タイプと造膜タイプが存在するのは、耐久性に対する考え方が大きく反映されているためだ。
浸透タイプは、膜を作らないため再塗装に適する反面、耐久性は弱いとされている。一方造膜型は耐久性があり、仕上がり感も見栄えがするが、木材は絶えず収縮を繰り返すため、割れることへの懸念、再塗装時に旧塗膜を剥離してから塗装しなければならないという短所がある。どちらも一長一短があるが、高温多湿という日本の気候環境は無視できない。
アンケートに回答した11社の全社のほとんどが、溶剤系もしくは油性系の浸透タイプを使用していることも、そのあたりの配慮があると見られる。ごくわずかの用途とは言え、木部塗装に彼らが神経を使っていることがうかがえる。
耐久性の向上、素材特性への対応と木材保護塗料に課せられたテーマは山積している。革新的な機能性を付与できるか否かが、需要拡大の鍵を握る。加えて天然素材である木材の特性を改めて施主なり発注者に伝えていくことも重要な役割と言える。
今回住宅塗装をメーンとする10人の塗装業者に木部塗装における現状を聞いた。住宅塗装における木部の塗装はわずかな部分だが、それでも用途に応じた使い方や塗料選定など現場に携わる者ならではの苦労が伝わってくる結果となった。木材保護塗料製品で最もニーズが高かったのは耐久性の向上。木部塗装における現場のさまざまな課題が浮き彫りとなった。
アンケート設問 (1)外装木部ではどの部位の塗装が多いか(2)よく使用する塗料製品名(3)選んだ理由(4)外装木部に必要な塗料性能とは(5)水性タイプの木部塗料を使用したことはあるか(6)(YESと答えられた方)塗料製品名、使った感想(7)木部用塗料について日頃感じていること。
中野塗装(岩手) 中野貴徳さん
(1)破風・鼻隠し、垂木、下見板、玄関ポーチ柱など(2)ノンロット、キシラデコール(3)以前はキシラデコールがほとんどだったが、ノンロットの使用頻度が多くなっている(4)撥水性、浸透性、発色(場合による)(5)YES(6)ノンロットアクア。仕上がり感はいいが、作業性は良いとはいえない。(7)白木の仕上げが求められることがあるため、クリヤー色が欲しい。
シールペイント(長野)石田宗義さん
(1)近隣に別荘地が多くあるため木部の仕上げは多い(2)キシラデコール、バトン(3)キシラデコール:耐候性が良い。バトン:自然塗料と言われているため(4)浸透性、剥離しない、紫外線、太陽光に耐え得る(5)YES(6)コンゾラン(7)木部塗料は3年で塗り替える必要があるということを顧客に納得してもらえるカタログを作ってもらいたい。
サンコウ(神奈川) 能登さん
(1)玄関ドア、ドア枠、窓枠など(2)キシラデコール、ファインウレタンU100クリヤーなど(3)耐候性、使いやすさ(4)木の収縮に追従する、防腐、防カビ、防虫、通気性(5)NO(7)木部の場合こまめに塗り替えが必要だが、お客様の負担が大きい。木部の塗り替えについてお客様の認知度が上がればと思う。
滝川塗装(三重) 滝川 彰さん
(1)破風、鼻隠しなど(2)IP木部用フィラー、IPグロス破風羽目板用など(3)密着、耐久性が良いから(4)柔軟性、通気性(5)YES(6)(2)の製品はすべて水性。乾燥も早く工程を重ねることで耐久性も期待できる⑦塗装されているものは塗り替えるが、新築の場合は塗装しないことを勧めている。
渡辺塗装(京都) 渡辺泰宏さん
(1)一般住宅では破風、鼻隠し、面格子、柱、桁、軒裏など(2)ナフタデコール、キシラデコール、ユーロ、オスモカラーワンコートオンリー(3)設計の指定がある場合が多いが、後は販売店の紹介や納品の早いもの(4)耐久性(5)YES(6)ワンダー1液水性型。内部のみの使用だが、全体に着色力が弱いように感じる(7)造膜タイプと浸透タイプでどちらが長く持つのか、メンテナンスを含めるとどちらが有利なのかといったデータがあれば良い。
坂口塗装(和歌山) 坂口智哉さん
(1)和風住宅の軒天、ウッドデッキ、ラティス、破風など(2)キシラデコール。新築時に水性材料を塗っている場合は、水性下塗りを塗布し、吸い込み止めをした後、ウレタン塗料を塗る(3)木部といえばキシラデコールというイメージがあり、防腐効果も感じられる(4)防腐性(5)NO(7)木部は吸い込みが多いので、キシラデコールの金額の半分で、性能が7割くらいの塗料が欲しい。
佐々木塗装(千葉) 佐々木恒治さん
(1)ウッドデッキ、テラス、破風、玄関ドアなど(2)キシラデコール、オスモカラー、シッケンズ(3)材料屋の薦め、設計士の指定など(4)防虫、撥水、腐食防止など(5)NO(7)少なくても5年以上持つ塗料を開発してもらいたい。
安田塗装(東京) 安田啓一さん
(1)ウッドデッキ、破風、窓廻りモール、飾り雨戸(2)シッケンズセトールHLS、オスモウッドステイン、キシラデコール(3)シッケンズ:耐久性と仕上がりのバランス。オスモ:色数が豊富。キシラデコール:新築時の使用頻度が高く、その塗り替え(4)木部独自の調湿機能を生かすもの。頻繁に(1年に1度程度)メンテナンスを行った方が良いと判断されるため、メンテナンスしやすい塗料であること(5)NO
曽根塗装店(神奈川) 曽根匡史さん
(1)破風板、幕板(3)私的実験の結果及び他社の実績(4)外壁の塗装と同等の耐久性があることが理想(5)NO(7)破風板などが木製の場合、木部用として売られている塗料を塗っても10年はもたない。個人的には、外部に木を露出させる造り自体、賛成できない。いかに木部の塗装を長持ちさせるかは、依頼者からの評価につながる重要事項。
幡野塗装(神奈川) 幡野協吉さん
(1)破風鼻隠し、枠類、玄関ドア、ウッドデッキなど(2)キシラデコール、シッケンズ、アトムライフステイン、弱溶剤2液型ウレタン塗料(3)キシラデコール:父の時代から使用。シッケンズ:ワニスで仕上げたときにできる素地とクリア層の間にできる空気層が見苦しいというニーズに答えるため。アトムライフ:SOP独特のべろりと剥がれることを嫌がられるとき(4)通気性、透湿性(5)NO(7)無垢の木の良さとデメリットを本当に理解して使っているお客様が少ない。工程が増えても耐久性のいい材料を求める。
白影社(山口) 中務 博さん
(1)杉板壁、破風板、軒裏、玄関柱など(2)バトン、ナフタデコール、キシラデコール(3)バトン:自然系塗料で内部にも対応し、臭いも弱く、価格が安い。ナフタデコール:着色性が良いため、外部の劣化した壁には見た目が良い。キシラデコール:高級指向の施主(4)剥離、退色がないもの(5)NO(7)剥離、退色がないものが、やはり究極の要望。だが、この塗料を塗れば10年大丈夫など安易な製品は出してほしくない。