Web特集
2007年04月09日
シリーズ: 揺れるライン塗装
揺れるライン塗装 No.138 テクノカラーウエムラ 固有技術の確立と色彩でチャレンジ
輸出関連が好調に推移している。一部では在庫調整に入っている業種もあるようだが、これも一時的なものに過ぎず、今後も国内景気の牽引役との見方が強い。総じて景気は改善に向かっているようだ。その景気の恩恵だが、好決算に沸く大手企業から下請け関連の中小企業まで徐々に波及しつつある。 工業塗装においても非常に忙しい業者と暇な業者の二極化が鮮明になってきた。特にここ数年、設備投資を行い不良率の低減、品質の安定、コストダウンを図っている業者に仕事が集中する傾向にある。 テクノカラーウエムラは従来の日吉工場が手狭になったことから今回工場を買い上げ、新たに設備を導入し、合わせて社名変更も行った。従来の日吉工場では近隣住民との折り合いもあり24時間稼働はできない上、キャパシティーもMAXになっていた。「まだ社員も若いし、これからのことを考えると拡大戦略に打って出るチャンスと判断した」と上村社長は経緯を説明する。 町工場から企業への脱皮を目指し、しっかりとした固有技術の確立と色彩を売りものにしていくとの思いが強い。「年間の塗料のデッドストックはバカにならない。使用する量だけ自社で調色できればムダもなく、仕事が決まるのも速い。それに色に携わる仕事は楽しいと思う」と笑顔で述べる。近々にも調色システムを導入し、対応を進めていく意向。
また近年、メタリック塗料を中心に色数が増える傾向にあることから、自社で見本帳を作製し、小回りを利かせて仕事の受注に結び付けていく考えを持つ。 今回の工場も、外壁や工場内部の配色は落ち着いたブルー系を基調にトーンを変えて塗り直している。また扉はピンク系をベースに統一するなど遊び心も手伝って楽しんで決めたようだ。 上村社長は二代目の経営者。家業を継いで30歳を過ぎてから化学を学ぶために大学に入り直している変わり種。「塗装に携わる以上、化学の基礎を知っておいた方がいいと思った。無駄になるものではないから。できれば自社で塗料まで作りたい」と意欲的。
スプレーマンは自社で育てる
工場は地上3階。延べ床面積440m2。1階が塗装工場(220m2)、2階(200m2)はマスキング室、ロッカールームからなり、3階(200m2)が事務所。
塗装工場はコンベアーライン60m。山型炉の熱風乾燥に、ブースは長さ4500mmのノーポンプブースを設置し、手吹き塗装で行っている。
60mのコンベアーライン
塗装ブースは3ステージの手動の回転架台を置き、プライマー、中塗り、上塗りの2コート2ベークを基本の仕様に対応している。小物の網塗りをメインにしており、サッシコーナーのアルミダイキャスト製品やゲーム機の部品など小物であればどんなものでも塗装するという。
設備はメサックが担当し、ブースはトウシンが対応した。またガンは静電ハンドガンが旭サナック製、通常のスプレーガンはアネスト岩田製やデビルビス製(ランズバーグ・インダストリー)を使用している。一時期低圧霧化タイプも使ってみたようだが、パターンノズルに塗料が詰まりやすいことから、それ以来使っていないという。「ガンに対する偏見はない。いいものであれば使ってみたいと思っている」とコメントする。
塗料はアクリル塗料、メラミン塗料、2液ウレタン塗料が多い。「社名から金属塗装を除き、素材にこだわらずに受注する方針でスタートしたが、現状は樹脂塗装が10%程度になっている」と依然として金属製品が多いが、あまりこだわってはいない様子。
計画当初はロボット塗装も検討したが、スペースの問題と投資金額から断念した。「ロボットを導入するにしてもスプレーマンは自社で育てていく。オペレーターだけではトラブル(不良など)があったとき原因追求に時間がかかると思う。塗装できる人の方が対処は早い」と社長自らガンを持って現場に立つことから、自ら人材を育成していく考えだ。
ラインスピードは1m/min、アクリル、メラミン塗料の焼付温度は160℃×15分。2液ウレタン塗料は80-90℃×15分に設定している。
またゴミ不良を避けるためアウターブースで塗装ブースを囲うなどゴミ、ブツの持ち込みに細心の注意を払っている。「マスキング不良もあるが、塗装はゴミ・ブツによる不良との戦い。どこまで歩留まりを上げられるか、それで収益が決まってくる」と語る。品質的にはほとんど外観目視。
塗装は奥が深い
前処理はリン酸鉄処理を採用しているが、処理そのものは外注に出している。「将来的に自社で賄っていくか外注政策でいくか、スペースや投資金額もあり今後の課題」という。
更に現状は溶剤系塗料を中心に塗装を行っているが、環境問題の高まりの中で、VOC低減に向けた取り組みについては「動向を見守っている状態。水性塗料など環境負荷低減タイプの塗料に切り替えていくことは大切だと思う。しかし水性タイプは塗料の性能及び外観品質と排水施設などの設備投資も絡みすぐにというわけにはいかない。VOC低減に対しては2液ウレタンを提案している」と説明する。
2階のマスキング室
同社工場の隣接に粉体塗装専門の業者(カドワキカラーワークス)があることから、被塗物に応じて粉体塗装の仕様でいけるものはそちらにお願いするなど提携関係を深めていく考え。
被塗物が多岐にわたるとともにロットが小さくかつ色数も多いことから、完全自動化にするのは難しい。人を介していかに効率よく塗装を行っていくかのひとまずの答えが今回の工場だ。
「基本的に量産モノはやらない。取引業者の売り上げも1社でひと月300万円以下に抑えている。小さな売り上げの積み重ねだ。1社の売り上げが30%以上になってしまうとリスクが大きい」と説明する。
過去に光学系部品メーカー1社の売り上げが全体の60-7070%を占めた時期があり、その会社が倒産したことで辛酸をなめた経験がある。これが事業の経営的なベースになっているようだ。
今回の工場は生産能力的には従来の日吉工場の約3倍になる。人員もこれまでの2倍と大増員する方針にあり、一気に勝負に出る考えだ。「ここでテクノカラーウエムラのベース作りを行い、次のステップアップに結び付けたい」と強気の構え。
現在、仕事が途切れることはない。「正直言ってお断りするケースの方が多い中で、人を育てながらラインを稼働させている状態にある。当面、現有勢力(20人体制)で24時間稼働まで持っていく。将来的には塗膜メーカーとして自社で保証できるような体制にする」と目標は明確。
最後に、ようやく仕事が面白くなってきたという。「塗装は奥が深い。その面白さが少し分かってきた。この気持ちを社員も分かるようになると、会社はすばらしくなる」という。(青木)
工場前景