Web特集
2007年07月09日
シリーズ: 揺れるライン塗装
揺れるライン塗装 No.140 日本電産コパル精密部品 スピンドル塗装で内製化を図る
デジタルカメラが好調に推移している。2006年のデジタル(スチル)カメラの出荷数量は約7,900万台。そのうち国内出荷が900万台、輸出が7,000万台と圧倒的に輸出に支えられた需要構造となっている。 特に近年デジタル家電の普及とともに各機器がネットワーク化の傾向を強めており、放送の地上デジタル化、モバイルの高速化といったインフラの整備によってデジタルカメラ(以後デジカメ)も小型・軽量・大容量に対応した商品開発が活発化している。
日本電産コパル精密部品は親会社である日本電産コパルの部品供給を担い1987年に発足。1999年に現社名に改称した。独自の生産技術をベースに金型設計・製造からプレス加工、モールド加工、表面処理・熱処理と一貫した生産システムによって高度化するユーザーニーズに対応してきた。 同社はカメラ用シャッタ羽根などの極薄精密打ち抜きを始めデジカメやオーディオに用いられるステンレス外装部品、アルミ外装部品、更にはシャッタ・レンズ鏡胴などの光学部品、電子・情報機器類の精密加工をメインに行っている。
従来、同社のデジカメの外装塗装は外注に生産委託をしていた。しかし、要求品質の高度化、加工単価の下落などから横持ち運賃など経費の削減、一貫生産システムによる競争力の強化が打ち出され、2005年10月に塗装設備の導入の運びとなった。「弱電メーカーの塗装密着性における信頼性試験が厳しくなる中で、表面処理技術を応用し密着性の向上を図った。また自社のノウハウを生かすことで設計段階から打ち合わせが行え、一貫生産のメリットも発揮できることから本格的な塗装ラインの導入に踏み切った」と取締役管理部長・渡辺貞男氏は経緯を説明する。
同社が受注しているデジカメは5機種。素材はいずれもステンレスで、その素材を生かしたクリヤー仕上げが3機種(1機種はマットタイプ)、その他2機種がシルバー、ブルーの色物。メインのクリヤー仕上げは1コートで平均膜厚10μmの薄膜仕上げ。「実質7μmくらいでコントロールしており、ブツ・ゴミが付着すると非常に目立つ仕様なのでシビアな管理が求められる」と製造第4グループ責任者の歌川宗克氏は現状をコメントする。 これまでシャッタの羽根は社内でプレス加工後、表面処理を行いレシプロ塗装で仕上げるなど経験はあるものの、本格的な量産ライン立ち上げは初めて。「厳しい条件設定や段取りに苦労した。特に量産品への対応として人・モノの回し方が大変だった」(同氏)と当時を振り返る。昨年の後半頃からラインの円滑化が進み、現在は1日20時間稼働(2直・30人)のひと月に約60万セットをこなしているという。
ゴミ・ブツの徹底した対策
塗装工場の敷地面積は600m2。準備室、検査室、乾燥室、塗装室からなる。塗装プロセスは表面調整後の素材入荷→治具付け→エアーシャワーによる除塵→塗装室入り口で自動除塵→塗装ラインへのワーク着荷→塗装→セッティング(仮乾燥)→塗装ラインからのワークの脱荷→本乾燥→検査の工程。塗装はスピンドル塗装を採用。
塗装機器はアネスト岩田製のロボットを採用。ブース内の被塗物の移載はJANIOロボットを使用し、塗装ロボットにはmaestroロボットに2ガンを装着しての塗装だ。2架台分を同時に塗装しており、このロボットシステムが2ステージとなっている。また乾燥炉は4台設置されていて2台が電気式、もう2台がガスバーナーとユーザーの品質要求によって使い分けているという。
ゴミ・ブツの付着を抑えるために塗装ブース内は移載ロボットにより完全無人化を図り人の出入りによるブツ・ゴミの持込を避けるとともに、指触乾燥によるゴミの低減、更にブースと塗装室の空気圧を変えることでブースへの空気の流入を抑えている。「塗料の調合室を外に設け塗装室に入らなくても切替できる設計にしている。また床は帯電防止用の塗装を施している。更に水洗ブースは集中ビット方式を採用し一元管理を行う一方、オーバースプレーの屋外回収によって室内のクリーン化を保っている」と表面処理技術グループの馬庭啓氏は徹底したゴミ・ブツ対策を強調する。
また今回、導入に当たり薄膜塗装を行うため吐出量の制御に関しては「圧力コントローラー、塗料パイプの口径、更に低圧霧化・少量吐出のガン性能など総合的な提案から判断してアネスト岩田製を採用した。更に安定した塗膜性能を確保するために温湿度(24℃/60%)の管理も行うなど環境整備に苦心した」と歌川氏。
スピンドル塗装の回転数は1分間に100-140回転と被塗物の要求品質に合わせ回転数を変えるとともに塗料の吐出量制御も行っている。
2ガンによる塗装ロボット
品質検査は膜厚と色相をメインにロットごとにチェックを実施しており、色相によるトラブルは一度も発生していない。「塗料は事前にメッシュで濾しているが、搬送段階におけるブツの付着はゼロにはならない」(同氏)という。現状の塗着効率は30%程度、使用塗料はアクリル系塗料及び2液ウレタン塗料がメイン。「表面処理グループではグループ内でサーバーを組んでネットワーク化を図っている。各セクションにおける品質管理はパソコンで管理しており、塗装の温湿度管理や品質管理も同様に行っている」と馬庭氏。
各表面処理との相乗効果を図る
光学、弱電関連の取引が多い中で、「デジカメは製品サイクルが短い。長期的に受注できる仕事を手掛けることで経営的な安定を図りたい」と取締役管理部長・渡辺貞男氏。既にメカ機構のものを手掛けているが更に拡大を図っていく姿勢にある。また表面処理部門では単品受けも行っており、自社の技術を生かせるものは積極的に受注していく方向にある。
同社の表面処理技術は金、パラジウムなどの貴金属メッキ、無電解ニッケルメッキ、電気ニッケルメッキなど各種のメッキ処理に対応できる他、洗浄では超音波洗浄、炭化水素洗浄、水系洗浄、更にはバレル研磨など幅広い処理が行える。また熱処理では5年前に導入した真空浸炭や真空熱処理、ガス軟窒化、連続水素焼鈍などの設備を擁していることから、表面処理との複合加工によって高付加価値化に取り組んでいく方針にある。
一方、5年前に中国・平湖に部品加工の専門工場を立ち上げ、アルミ素材への対応を図った。「中国はアルミ素材、国内はステンレス素材と棲み分けを行い効率的な生産を行っている。表面処理はメッキと塗装を行っており、国内の3倍の生産規模」(渡辺取締役)という。一部は中国から輸入しているものもあり、今後塗装を含めた表面処理技術は国内同様にウエイトが高まっていくものと思われ、塗装技術の更なる向上が重要性を増す。
今回の塗装ラインの導入によって、表面処理の幅が広がり、最終製品としての付加価値が高まった。同社では更なる塗装の効率化を進めることでコストダウンを図るとともに高品質塗装のノウハウを蓄積していく。(青木)
新塗装工場外観