Web特集
2007年09月25日
トヨタショック!水性シフト先導 コンプライアンスが生き残り条件に(自動車補修用塗料特集2007から)
トヨタ自動車は5年前から今回の水性プロジェクトをスタート。EUのVOC規制をベンチマークとしたVOC削減の在り方を検討。ヨーロッパ中核域内での規制レベルに対応するには水性システムしか選択肢がないことから、国内においても先行的に水性導入をするべきと判断した。
しかし、国内では水性システムの実績が少ないことから、純正品化して開発する必要があった。このため日本ペイント、関西ペイントの2社に開発を依頼、国内初の自動車補修塗料OEM化に着手。05年6月、日本ペイントが水性システムを開発、同11月には関西ペイントも開発にこぎつけた。
これと同時にディーラーBP工場での水性システムを使ってのモニタリングを開始。北海道から九州まで14工場で実施された。
トヨタスペックの基本コンセプトは高温多湿で地域的な環境条件の差がある国内でも「現行の溶剤系システムと同等の性能かつ作業性の追求」。かなりハードルの高い目標が設定された。ヨーロッパで普及している水性システムは湿度条件が日本より安定しているため、樹脂の粘度を高く設計しているのに対し、国内ではそれができない。ボカシ性能が低下するばかりか、諸々の要因で作業性(効率)が低下してしまうからだ。
モニタリングの結果を踏まえ、水性システムのチューニングを行い、これが今年4月に完了。5~7月にはディーラー説明会を開催し、トヨタグループとしてのVOC削減は水性システムで行っていくことをアピールした。
トヨタとしては水性ベースコートに加え、水性クリヤー、水性プラサフなどオール水性システムとしての展開を想定していたが、水性クリヤーの性能に関しては更にチューニングの必要があることから、水性ベースコートとしての展開をスタート。
そしてこの9月からは日進、清洲での水性システムの教育・研修が始まった。今年度の参加予約受付は終了。BP現場への水性導入のワンステップが踏み出された。
自動車メーカーによる自動車補修塗料の純正品化の動きは、5年前に日産自動車がディーラーBP工場で使用している補修システムを一本化し補修作業の標準化による作業効率の向上の他、コストダウンを図る狙いで実施。これに対しトヨタはVOC対策として水性システムの純正品化を狙っており、両社のスタンスは全く違う。トヨタは05年4月にヨーロッパ域内での水性システムの純正品化を行っており、この製造元はデュポン。環境戦略の一環として水性システムのグローバルスタンダードを図る方向にある。
これに対しトヨタ系ディーラーの今回の受け止め方には「水性転換は時期尚早」から「VOC対策としては水性が一番明解なコンセプト」まで温度差がある。更にBPの現場でのVOC削減は低VOCシステムから水性システムへ移行する2段階が良いなど。現状では水性コンセプトで1本にまとまる気配はない。
しかし改正大気汚染防止法ではVOC削減を義務付けており、トヨタグループとして率先してVOC削減に取り組む必要があるとの認識で一致している。従ってトヨタはスムーズな水性シフトを図る手順を示していきたい意向だ。具体的には「色を限定し、対象車は1日何台と設定した上で徐々に現場的に習熟していくスタイル」(BP技術)を提唱する。
この方法のネックは、オールトヨタで2010年までに30%のVOCを削減するとの目標が担保されにくい点にある。トヨタとしては水性シフトをだらだらとやるつもりはないようだ。このため水性導入の課題である生産性を阻害しない補修の在り方の他、先行的に水性を導入したディーラーに対するプライオリティ(優遇策)を検討。水性シフトのインセンティブを行う。
市場の空気が変わる
トヨタが純正品化として率先して水性システムによるVOC対策に着手したことで、BP業界ばかりでなく整備業界を含めたアフターマーケットへのインパクトも鮮明になってきた。日産、ホンダ、マツダが低VOC対策を本格化させる動きを見せる。またトヨタ系ディーラーの協力BP工場ばかりでなく、若手のBP経営者の中でも水性システムへの関心が高まってきた。
補修塗料を供給するオートサプライヤーは依然として「水性は使えるレベルにない」とのネガティブキャンペーンを張るところが目立つ。日産部販、トヨタ共販などチャンネルの多様化の中で「守りの姿勢」が背景にある。
トヨタの水性シフトはむしろ市場の流動化を伴っており、チャンスは大きい。水性システムの立ち上げにはリードタイムが必要なことから、低VOCシステムとの併用で水性に習熟していくスタイルがディーラーの内製化BPや先進的なBPで浸透する可能性がある。この動きに対応したマンパワーとノウハウのあるサプライヤーが生き残ることになる。「水性は規制待ち」の体制は時代と市場の空気を大きく読み違えることにつながるだろう。(芹沢)
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