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Web特集

2007年09月25日

自動車補修用塗料特集2007 ケーススタディ(ボディショップ編)

設備投資なくして将来はない I・B・P(埼玉)
20070912-10-1.JPG岩崎弘泰専務

I・B・P(所在地・埼玉県行田市)は2年前に最新設備を導入したBP工場を立ち上げているが、既に次の新工場に向けた動きを積極化している。その理由は人的能力でフル創業にあることに加え、工場の在り方として未完成と考えているからだ。 フロントとして牽引する岩崎弘泰専務(35歳)は、ヨーロッパ視察を行ってイタリアで見学したBP工場に衝撃を受けたという。「工場の機械装備に対する考え方がまるで違う。機械でできるところは徹底的に設備を導入する。それを前提として全体の生産性を向上させる発想。また働く作業者に対して優しい環境づくりへの気配りがある。これだけの条件を与えれば現場にやる気が出る」(岩崎専務)。 翻って日本のBPの現状は設備投資ひとつ見ても消極的で、作業環境については改善意欲すらない。イタリアのBP工場に比べ遅れているばかりでなく"格の違い"を見せつけられた。

20070912-10-2.JPG明るく、ゆとりのある工場

帰国してからすぐ行動に移った。「私は直感型だから」と苦笑する岩崎専務だが、「設備投資なくして将来はない」との痛切な思いが行動に駆り立てたことは事実。とはいえフロントを担っている経験から勝算もあった。 新工場はブース2基(1基大型)、グローバルジグ2基、リフト付き3ベイ他、集塵機やフロン回収装置などを導入。工場のスペースは余裕をもって設計。照明を明るくしているせいかクリーンな感じが引き立つ。 現状は板金4名、塗装2名で月間80‐100台を処理。設備的には月間200台のキャパがあるが、人的には「限界」に達している。

同社は昨年末、水性システムの導入に踏み切った。「オニキスHD」(R-M)を採用し、従来システムの「ダイヤモント」(R‐M)と「ハイブリッドエコ」(関西ペイント)を併用。現状は10%が水性に転換。「何種類か水性を見たが、オニキスに決めたのは保存安定性、缶を開けても3年間は保存できるところが実用的」と評価する。 先行的に水性システムを使いこなすことで、顧客からの技術力評価につなげる狙いがある。「低VOCシステムの次に水性へ移行する方向はマイナス面が大きい。環境対策としても水性の方が明解だし、低VOC化の手間などを考えたらストレートに水性に移行した方がメリットがある」と水性シフトを進める意向。

20070912-10-3.JPG調色室に水性システムを導入

入庫はディーラー50%、DRP(損保)30%、モータース10%、直需10%。かつてはディーラー比率が90%と高かったが、DRPシフトを進めている。狙いは収益確保にある。 「日産系ディーラーの仕事中心から、トヨタ、ホンダの比率を高め、ホンダ系が多くなっている。他のディーラーからも入庫要請があるが、無理して増やすことはしない。DRPへシフトしたのはレス率的標準化ができ、品質や技術が評価されれば信頼性が高まり、なによりもエンドユーザーの評価が得られるメリットがあるからだ」。 生産性を基準にして収益確保を図るというのが岩崎専務のポリシー。DRPでは作業効率がどこまで高められるかが鍵。機械化と同時に作業の在り方に工夫を凝らす。板金と塗装の中間プロセスを共有化し、パテ付けやパテ研磨は手の空いた作業者が担当。こうした現場での生産性改善に関しては「現場まかせにしている」(同)という。

同社は週40時間体制を徹底し、残業は一切しない。フル創業の中でも残業はゼロ。「残業が念頭にあると、それに甘えた作業効率しか追求しない。逆に仕事がないと緊張感がなくなる。1日8時間の実働の中で、効率を向上させることに現場は常に意識をもってもらいたい。フロントからは現場へのアドバイスや介入はしない」と現場主義を徹底させている。 損保からの信頼が高く、DRP比率は更に高まる傾向にある。納期に対する信頼性があるからだ。「納期を守るのは当たり前。むしろ納期を上回る体制づくりをしている。それには余裕をもった効率性を追求するしかない。現場に無理をさせると、ロスも出やすくなるし、クレームにもつながる。品質は機械がつくるものではない。作業者のモラルが生み出すもの」と断言する。

トータルカーサービス目指しBPを内製化 清里自動車(山梨)
20070912-10-4.JPG秋山英年社長

八ヶ岳の麓に位置し、夏場ともなれば多くの観光客で賑わう高原リゾート清里。周辺のメイン道路となる国道141号線に面して清里自動車(代表取締役・秋山英年氏)は立地している。 「自動車整備学校の1期生であり、根っからの修理屋」を自認する秋山氏が昭和40年に設立。以来、モータリゼーションの波に乗って車検、一般整備、板金塗装、新車・中古車販売、各種保険取り扱いと業容を広げてきた。業務内容から見た現在の売上比率は、車検50:一般整備30:板金塗装20といった割合。

20070912-10-5.JPG同社前景

しかし「市場的に見て今後車検・整備の売上は確実に減少していく」と危機感を持つ。このため、それまで外注に出していた板金塗装(BP)の内製化に4年前から取り組み「ゼロから売上比率で2割まで引き上げてきた。今後この比率を4割まで高め、事業の柱のひとつにしたい」との考え。 売上のカバーとともに板金塗装内製化の重要なファクターとなるのが「トータルカービジネスへの受け皿」。秋山氏がイメージするトータルカービジネスとは一言でいえば"クルマのコンビニエンスストア"のような業態。つまり「クルマに関する一通りのモノやコトが揃い、地域のユーザーに利便性を感じてもらえ、クルマに関することで真っ先に思い浮かべてもらえるような店になること」にある。

BPに関して言えば、外注ながらこれまでも受け皿は持っていた。しかし「完璧に直したいのか、それなりの仕上がりでいいのか、お客さんによって品質と価格の要望はまちまち。外注ではその辺の微妙なコントロールができない。内製化することでお客さんの意向に沿ったメニューが提示できファン層を広げることにつながる。都市部と異なり需要の薄い地方では、地域密着を徹底しいかに周辺顧客を囲い込んでいけるかがアフターマーケットにおける生き残りの必須条件」と説明する。 とは言え、一朝一夕で完璧なBP部門を立ち上げられるとは秋山氏も考えていない。板金、色合わせ、スプレーのテクニックなど人の手による熟練の部分が大きいためだ。その一方で「熟練による経験と勘頼りのビジネスは今後立ち行かなくなると思う。いかに標準化し合理的、科学的に対応できるかがBPにも求められる」との持論。

20070912-10-6.JPG調色作業を標準化

その方針に欠かせないのが設備・機器の導入だ。自動車整備機器のサプライヤー・イヤサカが展開している軽補修システム「スーパー塗装館」に加盟、設備・機器を駆使したBPの標準化というコンセプトに共鳴し、それらの設備を導入することでBP内製化への足掛かりとした。 同社建屋のひとつをBP専用工場とし、塗装ブース、ユニバーサル調色システム、ポリッシュシステム、低圧温風塗装機、IR乾燥、フレーム修正機などを設置。既存設備の流用、また中古の塗装ブースを購入するなどコストを抑えたが、それでも新たに導入した設備への投資は1,100万円に上る。「お客さんの多用なニーズに応えるには中途半端ではダメ。それとともにリスクを抱えることで仕事への本気度を社内にも示したかった」と本腰を入れた。

新たに導入した設備のうち、「スタンドックス」の2Kタイプを装備した調色システムは、カラーコードをパソコンで入力するだけで塗料の配合を自動表示、「初心者でも調色作業が行える」と信頼を置く。またポリッシングでは、強酸性イオン水の界面活性作用で被塗面のワックス・ホコリ・汚れなどを分解するポリッシュシステムを導入。「コンパウンドレスなので、特にエッジの削りすぎなどの心配がない」。 更に低圧温風塗装機は「スポット塗装が可能で、狭い範囲でのボカシも得意。更に塗着率が75%ほどあり、極力ムダをなくし効率的」と説明する。 同社のBP部門は現在、内製化に取り組み始めた当時に入社した技能者1名が従事。「従来の車検・整備での既存顧客、またJAからの紹介など徐々に地域密着がかたちになってきた。そろそろ担当が1人では間に合わなくなってきた」と拡充の方針。

設備投資で業績アップ、人材育成を強化 カーテクノ花巻(岩手)
20070912-11-1.JPG佐々木米夫所長

モトモチ商事の花巻事業所であるカーテクノ花巻(所長・佐々木米夫氏)は、二戸から岩手県一ノ関地域のトヨタ系ディーラーなどから入庫する事故車に対応。月間約150台の車を処理している。そんな同社がレクサスの指定工場、更に新車補修といった新たな事業をスタートさせ、人材育成や設備投資に取り組み、業績アップを目指す。 現在、同社は塗装ブース3基を構え、整備、板金、塗装を行っている。人員は整備2名、板金5名、塗装4名、フロント2名、事務2名、納車・引き取り2名の構成。小ダメージから大ダメージまでさまざまな入庫車を処理しており、1台当たりの平均工賃売上は6万5,000円となっている。

20070912-11-2.JPG工場全景

佐々木所長は「入庫台数は減っている中で小ダメージ車の割合が増えている。また、大ダメージ車でも高年式が多く、修理ではなく全損となり入庫にはならない。ただ、当社は入庫ルートの窓口が多いため比較的量は安定している」と現状を述べる。 グループ会社である岩手トヨペットやネッツトヨタ岩手、ネッツトヨタ盛岡などをメインに入庫があり、所長自ら定期的に各ディーラーの事業所に出向き営業を行っている。 「急ぎの修理など相手が困っているときに助けたり、指定箇所以外の小さいキズを直したりときめ細かな対応を大切にしている。中古車の修理もその車を売る人の身になって作業に当たらないとだめ。入庫先を同じ会社と思っていればトラブルにはならない」(佐々木所長)との方針を徹底。このため外注には出していない。こうした姿勢が入庫先の信頼を生み入庫台数の安定につながっている。

20070912-11-3.JPG塗料はオープンスペースに保管

新たな展開として、昨年レクサスの指定工場に認定されるとともに、新設されたトヨタ輸送東北センター(岩手県北上市)の補修工場となった。これら2つの新事業に対応するため、同社では工場フロアーを改修し塗装ブースを新設、またデュポンの「LEシステム」を導入するなどの設備投資を行った。 デュポンのLEシステム(低溶剤ベースコート+ハイソリッドクリヤー)を採用した理由は「レクサスでの色の収まりと乾燥の速さ」と佐々木所長。レクサスの指定工場になるにあたり、他の工場の情報を収集した結果、色あわせの収まりを評価した。また、新車の補修は納期が短いため、「デュポンの優れた乾燥性は作業時間の短縮につながる」として導入を決めた。

水性塗料に関しては、「業界としては今後、水性の流れになるだろう」との見方だが、採用するかどうかは未定。 そんな同社の課題は人材育成及び社内システムの改善だ。現在、入庫車1台に対して、板金・塗装担当1人ずつを組ませた計4組のローテーションで行っている。しかし、入庫車は大ダメージから小ダメージまであるため、例えば大ダメージの場合、板金作業に時間がかかり、ペアである塗装担当が"遊んで"しまい効率が悪くなってしまうことがある。 そのため、板金と塗装にそれぞれリーダーを置き、状況に応じて塗装担当が板金作業を手伝うようにしているが、まだまだ上手くは回っていないのが課題だという。「本当はリーダーにもっと現場を仕切ってほしいし、任せたい」と佐々木所長は成長を期待する。

また、技術レベルの均一化も効率向上には欠かせない。同社では今後、レクサスの補修や新車補修の仕事が増えていくと考えられ、その場合どうしても腕の良い塗装担当がかかりっきりになってしまう。そうすると通常の入庫車の処理作業に時間がかかり効率が悪くなってしまう。職人の技能向上は急務の課題と言える。 作業進行に関しても、マニュアル化したシステムづくりを課題に挙げる。現在は佐々木所長が入庫車状況などを把握して、担当割り、作業内容、日程などすべてのスケジュールを決めている。この作業の標準化を目指す。「今は1日に7台入庫して、7台納車するという流れ。単価が安くなっている傾向が続いており、処理台数を増やさなければいけない。それには効率アップが必須事項」と方向性は明確。

直すことの価値を訴求していく 旭星自動車(兵庫)
20070912-11-4.JPG石井剋久社長

旭星自動車は神戸市北区と三田市との市境に拠点を構える。大規模ショッピングセンターや住宅地の開発が急速に進んでいる地域だが、まだまだ田園地帯が多く残されているところでもある。その地で同社は昭和41年に創業、石井剋久社長は二代目にあたる。 創業当初は近くの国道沿いにあったが、拡張計画にかかり平成9年に現在地に移った。同社にとってこの移転が抜本的な経営改革に取り掛かる契機であった。

それまではディーラー、損保会社からの下請けが主だったが、「原点に戻り、良い仕事をすることに専念したかった」と元請けへのシフトを鮮明にした。その結果ピーク時で120台あった入庫量は半数に激減したものの「最初の半年は苦しかったが、利益は変わっていない。人員も少数精鋭にし、自分たちのできる仕事をできる範囲でこなせる形を作ってきた。無理な残業もする必要がなくなった。以前のまま下請けを主力にしていたら立ち行かなかったのでは」と当時を振り返る。 その裏づけとなっているのが"技術力"。石井氏は自らの仕事を自動車の美容・整形と表現し、直すことによる価値を追求してきた。「直せなければ部品交換となり、顧客にとっても高くつく。保険額の上限を超えない修理技術を蓄えることが当社にとっても顧客にとってもメリットになる」という姿勢がガソリンスタンドやディーラーなどから一目置かれる存在となり、口コミによる評判を高めている。

20070912-11-5.JPG工場内作業風景

また同社は集客のためのサービスやイベントをほとんど行っていない。唯一していることと言えばホームページの活用。ただホームページについては同業他社と比べいち早く立ち上げた他、修復作業を分かりやすく伝えるべく映像コンテンツを盛り込んだり、検索エンジンの上位にくるように新しい情報を絶えず更新するといった工夫を凝らしている。 その結果、大阪、神戸、姫路、宝塚と広範囲なエリアからホームページを見たという顧客が仕事を依頼してくるようになったという。「旭星に持っていったら直してくれる」という口コミ的評判とホームページの効果により、入庫量は月50‐60台を確保。直需率は65%に達している。残りはディーラーや損保会社の下請けとなっているが、逆にディーラーから部品を購入したり、同社が受けた車検の外注先にするなど、持ちつ持たれつの関係を築いていることも元請けとしての自立を可能にする要因となっている。 工場内の設備は移転時にすべて新しく取り揃えた。4輪アライメントテスター、ジグ式フレーム修正機を完備。塗装関係では塗装ブース(イタリア・SAICO社製)、3連ヒーター2機を揃える。塗料はイサム塗料を採用している。また「当社が最も早く取り入れたのではないか」という2台の作業リフトはスライド式になっており、作業効率の向上に寄与している。

20070912-11-6.JPGスライド式の塗装リフト

水性タイプの採用に関しては、コスト高になることから採用には至っていないものの、技術的な不安はないという。「水性タイプは薄く吹かなければならないため逆にそのことで下地の透けが出やすくなる。そのため下地づくりがポイントになるが、昔ラッカー塗装をしていた頃の下地づくりをすれば問題ない」と話す。 板金塗装業の今後の見通しについて石井社長は「後継者問題なども含めてBPの数は間違いなく減る。いずれは現在の3分の1ぐらいになるだろう」との見方を示す。加えてディーラーは、協力会社に対し排水処理や廃棄物についての対応を求めており、法的対応やコンプライアンスの重要度が高まっていることも生き残りを熾烈にする背景となっている。

その中で石井氏は、「今の流れとは逆行するかもしれないが、職人気質の頑固な二代目オヤジに徹したい」との姿勢を打ち出す。特に石井氏は分かりにくい板金塗装の世界にあって消費者に正しい情報を伝えていくことの必要性を訴えるとともに、「事故の整合性を見極め、顧客のゴネ特も許してはならない」とも。得意先にも顧客にも媚びない姿勢こそが同社の信頼性を高めることにつながっている。

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