Web特集
2007年10月23日
シリーズ: 揺れるライン塗装
揺れるライン塗装 No.141 日本フォームサービス 粉体導入でトータルコストダウンを達成
高度化する情報時代を迎え、我々を取り巻く環境は大きく変わりつつある。それ以上にオフィスは変革の波にさらされている。特に企業の生命線といえる通信ネットワークはコンピュータ、サーバー/モデムなどの周辺機器を含めIT(情報技術)インフラの整備が進められている。更にバックアップやリカバリ、情報のセキュリティー管理などの安全性が問われ始めている。 そのような中にあって、日本フォームサービスはITのネットワーク周辺機器を収納するラックやキャビネットの製造・販売を行っている。「最近では書類や書物などが磁気媒体に変わりつつあり、そのセキュリティーや耐震といった安全性を求めるニーズが高まっていることから、単なるオフィスのレイアウトにとどまらず収納・管理まで提案している」と同社製造部・千葉工場長の今関哲也氏。
情報機器を収納するラックやキャビネットは『19インチラック』といわれるように標準化されているものの、提案営業でオフィスのレイアウトに合わせるためオーダー品が多い。「ラックやキャビネットは大型の収納家具の隙間に納めようとするので、どうしても受注生産になる」(同氏)と説明する。 主力の千葉工場はコンピュータによる集中管理体制を構築し、板金・加工、塗装、組立の一貫生産システムによって少量多品種のニーズに対応している。 同工場は昨年9月に1億5,000万円を投じて粉体塗装ラインを導入した。溶剤ライン2ブースのうち、1ブースを粉体塗装に更新した。「工場が稼働して10年。塗装設備の老朽化から更新した」と事情を説明する。検討段階から同社の関連会社が九州(鹿児島)でモニターのアームを粉体塗装していたことから情報を得、ラック関連でも粉体塗装できると判断した。「ただし、色替えをいかに効率良く行うかが課題として残っていた」という。
同社が導入した粉体塗装ブースは日本パーカライジングのサイクロン式『ツイン・ディバイド・マルチカラーブースシステム(T‐DMCB)』。二分割機能によりハンガーワークを外すことなく溶剤並みの色替え時間で連続運転が行えるというもの。「色替えのためにラインを止めたくなかったので、連続して塗装が行えるシステムをイメージしていた。ツイン・ディバイドはイメージと合致したシステムだった」と導入理由を述べる。
ツイン・ディバイドで効率生産
現状の生産量はサーバーラックがひと月に200台弱、キャビネットが50台。更にケージ(ラック周りに仕切る間仕切り)が数百。「オフィス環境に合わせたデザイン提案も行っているので、ユーザーのイメージカラーが多く、寸法同様色数も増える方向」にある。
通常の標準色はベージュ系、アイボリー系、ブラック系の3色がメイン。この3色で製品の60%を賄っている。残り40%はオーダーメイド色。標準色の3色を粉体塗装で行い、オーダー色(少量・多品種・多色)を溶剤塗装で対応している。
溶剤塗装ブース
塗装ラインは前処理からの一貫ラインとなっており全長234m。前処理は湯洗後に脱脂と化成皮膜処理(リン酸鉄)を同時処理し、水洗を2回行い、そしてエアーブローで水を飛ばし、水切り乾燥といった工程。
塗装ブースは溶剤塗装ブースと粉体塗装ブースを直列に配し、溶剤ブースは1レシプロ2ガンが2基と補正ブースが2ステージの計3ステージとなっている。
粉体塗装ブースは最大被塗物ワークのサーバーラック(高さ2,000mm×幅700mm×奥行き1,000mm)を縦吊りにして塗装できる大きさのディバイドブースを2台設置。色替え用のクリーニングフードが2台兼用となっており、交互運転を行いながら移動し清掃を行っていく仕組み。標準仕様ではディバイドブースの間にクリーニングフードが入り、色替えごとに移動するようになっているが、「今回スペースの関係で色替えを行うブースに常に移動している仕様にした。2つのブースを同時に使用することはありえないので、使用していないブースにクリーニングフードを移動させている」と省スペース仕様の事情を説明する。
粉体塗装ライン(上)とツィンディバイドブース(下)
2ブースはブラック系専用ブースとベージュ系及びアイボリー系の専用ブースに分けて使用している。1ブースには1レシプロ3ガンが1基と上部に2ガン、下部に1ガンを固定して塗装を行っている(2台とも同じ仕様)。そして箱モノの内部への塗装に関しては更に補正で対応している。1ガン当たりの吐出量は60‐70g/minと抑えた吐出量。また塗料の吐出制御は定量供給装置(JF)を用いて行っている。平均膜厚は60μm。塗料はエポキシ/ポリエステルのハイブリッドタイプ。
ちなみに同社のひと月の塗料使用量は粉体塗料が約450kg、メラミン塗料が900リットル。なおメラミン塗料はTXフリータイプに置き換わっている。
焼付温度の差が生産のネック
現状の色替えに要する時間は2人で10分程度。「色替えの頻度は1日に2‐3回と頻繁に色替えを行うわけではないので、色替え時間のスピードはあまり気にしていない」という。それ以上に溶剤系のメラミン塗装の焼付温度は120‐130℃×20分、粉体塗装の焼付温度は180‐190℃×20分に設定しているが、塗料に合わせて乾燥炉の温度の上げ下げを行わねばならず、効率が悪い。「午前中に溶剤塗装を行い、昼休みに温度を上げ、午後から粉体塗装を行うように生産計画を調整している」と苦心の様子がうかがえる。
また平均膜厚40μmを狙っているが補正が入るため膜圧が厚くなり結果として60μm付いている。「膜厚制御をきちんと行わないとネジ穴が埋まってしまう」と今後の改善点を指摘する。同時に上述した低温硬化の粉体塗料の検討も進めていく意向だ。
これまでの溶剤系塗装のラインスピードは1m/minとかなりゆっくりしたスピード。それに対し粉体塗装のラインスピードは1.4m/minに高めることができた。「溶剤塗装に比較し自動化が図りやすいし熟練工を必要としない。また塗着効率(70%)が高まり、回収再利用によって塗料使用効率は90%近くあり、焼付温度のエネルギーコストのアップなどを勘案してもトータルコストは15‐20%ダウンしている」と粉体導入のメリットを強調する。
またラインスピードのアップとともに不良率が大幅に低減したことで生産性は2倍に向上した。「これまで熟練工の不足から塗り直しが多く、それに時間を費やしていた」と打ち明ける。
今後、同社ではラックやキャビネットなどの色相としてメタリックやサテン、リンクルといった模様塗装、更にはツヤ消しなどのニーズが高まっていることから、粉体塗装での対応を検討していく方向にある。(青木)
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