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Web特集

2007年10月09日

シリーズ: 揺れるライン塗装

〈特集版〉新キャタピラー三菱・明石事業所 業界初、油圧ショベルスイングフレームの粉体塗装化に成功

新キャタピラー三菱・明石事業所は05年10月に約5億円を投じてスイングフレームの粉体塗装に踏み切った。業界初の粉体化として注目される中で、30%の生産性アップと製品の耐久性向上が図られた。旺盛な需要に対応するため同事業所は03年に工場の大幅な革新をスタートさせる。 「リードタイムの短縮」を目標に生産体制の見直しが行われ、スイングフレームの粉体化もその一環として取り組んだもの。今回、同事業所の粉体塗装ラインを取材する事が出来た。

建設機械の出荷が好調だ。この8月も前年同月比プラス成長となり59ヶ月連続で前年実績を上回った。特に輸出は開発の進んでいる中国を中心に東南アジア、米国、EU向けに2ケタの伸びを示している。
新キャタピラー三菱・明石事業所は油圧ショベルをメインに月産1,300台を超える受注に対応している。その70%が海外向けだが「現状ではキャパシティ満杯」というように需要の旺盛さが伺える。
油圧ショベルは明石事業所が設計・開発を担っている。開発本部を設け外国人を含むスタッフ30人を擁し、それぞれの国のフィールド事情を考慮に入れた設計・開発を進め、その図面に合わせた生産が世界主要6カ国で行われている。まさに同事業所は生産拠点であると同時に油圧ショベル開発の中枢としても位置付けられている。更にアジアを中心に生産・品質管理の技術指導、エンジニア養成などもバックアップしている。


同社は1960年、新三菱重工業(現・三菱重工)の神戸造船所の建設機械部門として発足。翌年に記念すべき国産初となる油圧ショベル「Y35」を開発、生産を開始する。1987年に米国キャタピラー社と三菱重工の折半で合弁会社新キャタピラー三菱が誕生、今日に至っている。
この明石事業所に大きな変革をもたらしたのが2003年にスタートした生産体制の大型強化プロジェクト「工場革新」。通称『03-06(サブロク)工場革新』(03年から06年を主な活動期間)といわれるもの。
建設機械の好景気は2001年頃から始まったが、年々旺盛な需要に追いつかなくなっていた。そこで大幅な生産体制の見直しを図るべく工場革新が進められる。


20070926-6-2.JPG製造部組立課主任・藤谷公司氏

同事業所は大きく分けて部品工場、板金工場、そして塗装工程を担う組立工場から構成されている。
工場革新ではリードタイムの短縮を最大の目標に掲げ、塗装工程の見直しも行われた、「特に大型フレームは所内で溶接、塗装を行っているので、組立に入る前の段階で塗装を行うようにすることで作業効率を上げる。そのために板金、塗装、組立を直結する改造が行われた」と製造部組立課長・米村一祥氏は説明する。既に同事業所では個々のコンポーネントは外注製作を拡大、2001年頃から単品仕上げ塗装に移行し、ジャスト・イン・タイムで組立ラインに納入されている。


20070926-6-10.JPGジャストインタイムで部品を供給

所内で製造している大型フレームは人が昇降するスイングフレームと足回りのベースフレームに分けられる。それぞれ個別のラインで製作され、組立工程で合体する。
スイングフレームの粉体化はこれら中間仕掛の大幅な縮減と組立ラインとの直結化により、「生乾きの塗装品を組立ラインへ送ることは絶対さけたかった」ことを第一としながらも、環境問題への対応や塗膜性能向上による不良率の低減、自動化による直行率の向上など複数の課題克服を目的に導入、量産化に結びついた、まさしく希少な例となっている。


20070926-6-3.JPG塗装前のスイングフレーム

省スペースを活かしたライン設計
粉体塗装を行うスイングフレームは11‐45トンの大型油圧ショベルのモノ。手狭なスペースで大型重量物のスイングフレームを効率良く塗装していくことが求められた。「明石は21万㎡の限られた敷地ゆえにスペースを有効に活用する事が設備屋の大きなポイント。スペックを満たした仕様の前処理、塗装ラインを如何に省スペース内に納めるか。試行錯誤の連続でしたね」と製造部組立課主任 藤谷公司氏は当時を振り返る。
スイングフレームは板厚5‐6mmの薄板ものから50mmの厚板まで求められる強度に合わせ複雑に溶接・板金されている。そのスイングフレームを1タクト16.5分で連続生産していく。特に焼付時の温度が高すぎると薄板がオーバーベークして黄変する。かといって温度を下げると厚板の部分が焼あまになるなど温度の設定条件に工夫が要る。


そこで焼付乾燥炉は、まず近赤外線を用いて約10分で被塗物の表面温度を200℃まで昇温。フローさせ、その後ガス式遠赤外線の熱風循環で雰囲気温度220‐230℃に設定。トータル4工程で1時間かけて硬化させる仕組みにした。「薄板部分には直接ヒーターの熱が当らないように遮熱板を設けるなどして温度上昇を抑えた」(同氏)と工夫の一端を述べる。
また前処理は脱脂-水洗-化成皮膜処理(リン酸鉄)‐水洗‐リンス‐水切り乾燥の工程。1台のワークに洗浄の水を1トン使用する(シャワー式)。また脱脂の浴槽は10トンというもの。リンスはクロム系を使用し被塗物と塗膜の密着性を高め、耐久性の向上を図った。「ラインは2005年10月に立ち上げたが、廃水処理の問題で生産性を当初の50パーセントまで落とさざるを得ない事情が発生、結果的に専用の廃水処理設備を後付けしたが、その善後策に時間を要し本格生産は昨年の10月からとなった」と事情を説明する。


同ラインの概要は自動昇降架台にスイングフレームをセットしリフトで上昇させ、前処理ラインに進み、水切り乾燥後Uターンして粉体塗装、焼付乾燥を行い、所定の位置に戻る。そしてサイドに移載され、ストックヤードに入り組立ラインに進む工程。
Uターンした被塗物は粉体塗装ブースに入る。同ブースはオープン式のアウターブースに摩擦帯電ガン14ガンを固定して塗装を行っている。スイングフレームの下部に7ガン。両サイドに4ガン、3ガンの計7ガンを配備。ガンは全て旭サナック製を採用。


20070926-6-4.JPGリフトで着脱、荷降ろしを一体化

1ガン当りの吐出量は100‐120g/minに設定。スクリュー式の清洗装置付き定量供給装置を用いて吐出量制御を行っている。摩擦帯電ガン特有の広角ノズルを使用して広範囲に、かつ均一に塗装できるところがメリット。「コロナガンを用いてロボット塗装する方法も考えたが、ロボットの台数が多すぎる。それよりも粉体塗料を帯電させたクラウド状態の中を通すイメージの方が合理的と判断した」と藤谷氏は採用理由を述べる。
摩擦帯電ガンは付き回り性に優れ、薄膜美粧性に適しているといわれているが、それでも補正に2人を配し、細かい細部への膜厚確保を行っている。 
平均膜厚は「55‐70μmの範囲で管理している。」同事業所の規格では50μmが最低膜厚。いたずらなオーバースペックは避けるとうことか。採用している粉体塗料は大日本塗料が供給する高耐候性のポリエステル粉体塗料。


20070926-6-5.JPGブース内を噴霧状態にして塗装

20070926-6-6.JPGトリボガンで補正

20070926-6-7.JPG乾燥炉

また塗料はサイクロンを通し6つの回収ユニットに送られ再利用されている。「塗料の使用効率は高い、回収再利用によってトータル的にはコストダウンに結びついている。生産性は30%アップとなり、計画通り1日・2シフトで60台の生産を行っている」という。


20070926-6-8.JPG粉体塗料改修ダクト

今後の塗装仕様は粉体と水性
今回の粉体塗装の採用は建設機械業界初の試みとして注目が集まっている。10年前から開始した2液ウレタン塗装も同社が業界に先駆けて採用したという経緯がある。「業界初の粉体塗装を立ち上げたことで大きな自信に結びついた。決して楽ではないが現場全体が誇りを持って仕事をしている。明石事業所の塗装に対する姿勢を世界に示すことができた」(藤谷氏)と胸を張る。


20070926-6-9.JPG塗装後、組立ラインに直結

このスイングフレームの粉体塗装化は03年にスタートした工場改革。通称『03-06工場革新』のまさに象徴的な事業といえる。しかし、既に改善にも着手、低温硬化型粉体塗料の開発促進や塗着効率の"より"良いガンの開発を求めている。
「これまで当事業所では長らく2社の固定塗料メーカーを採用してきたが、昨年4月からその枠を外し、開発力・技術力に優れたメーカーとプロジェクト別に取り組んでいる。今後は品質とコストに優れた塗料メーカーにご協力頂き、より一層戦略的に動きたい。」とキッパリ。
今後の塗装仕様については粉体塗料、水性塗料がメインになる方向だ。ショベルの腕の部分に当るアーム(スティック)やブーム。及びカウンターウェイトはウレタンのハイソリッドタイプ。更に水性ウレタンを志向する。


20070926-6-11.JPG薄板単品塗装パネル

側面のカバー類などの薄板ものは現状のメラミンアルキッドから粉体塗装に切り換えていく。「薄板の板金モノは全て粉体塗装にしたい」と藤谷氏はコメントする。更にクローラシュー(キャタピラー)、ベースフレームなどの足回りの1コートアルキッドは常乾タイプの水性塗料に切り換えていく方針。
また全社的な環境への取り組みとしてVOCに留まらずCO2の問題や水質、有害化学物質と様々な取り組みを行う中で、製品のライフサイクルアセスメント(LCA)はCO2換算にして低減して行く方向にあり、粉体塗装の焼付温度の低温化など、次期課題として確実に捉えている。
更に同社ではグリーン調達の推進を図っており、「ガイドラインを作成し材料メーカーに協力を求めている。同時に当事業所の協力会社(通称;明協会)100社に対し、環境マネジメントISO14001の認証を2010年までに取得して頂くよう求めている」と業務部総務課 アカウントマネージャー 佐藤幸平氏は説明する。


製品の駆動性能についても「環境に配慮して低騒音、低排ガス、低燃費化を3本柱に開発を進めている」と同氏。
同事業所は1999年にISO14001の認証を取得している。環境の側面としてエネルギー効率は大きなテーマ。粉体塗装ラインにおいても脱臭装置の廃熱を水切り乾燥の熱源に利用するなど抜かりなく、事業所全体でコジュネレーションに向けた取り組みを行っている。


20070926-6-1.JPG

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