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Web特集

2007年11月01日

建築塗装特集2007・ケーススタディ(1) 柏原塗研工業、ヤシマ工業、オーレックス

居住者の目線で、女性現場管理者も 柏原塗研工業

柏原塗研工業(本社・山口県岩国市、社長・柏原伸二氏)はプラントメンテナンス需要の低迷を見越し、20数年前からリフォーム事業に着手。首都圏エリアを中心に基盤を築き、その後近畿・中国・九州にも進出し、現状では売上を約100億円台にまで成長させてきた。これは同社の全売上高の約40%を占める。 リフォーム事業が本格化したのはバブル崩壊後。7‐8年前には同社の機関事業であるプラントメンテナンスの仕事はピーク時の60%台まで大幅に減少してしまった。こうした危機的な状況の中で同社は人的リストラに一切手を染めることなく、リフォーム事業強化を指向する。

そのときの状況を柏原社長は「当社は長年にわたって社員に資格取得を奨励してきた経緯があります。一級建築施工管理技師、一級土木施工管理技師などが人材的に豊富。私としては当社を辞めても自立できる人材をと願ってこうした資格制度を社内に定着化させてきた。これがベースとなって、プラントからリフォームへのシフトが円滑になった面はあります」(柏原社長)とふり返る。 同社にとってプラントとリフォームは共通項が多く、「むしろプラントで培ったノウハウをリフォームに注入することで、施工全体のレベルアップを図れるメリットがある」(同)という。プラントメンテナンスの最大のポイントは納期と安全にある。稼働中のプラントの中で塗装するため、納期の遅れは「絶対に許されない」(同)のだ。

このため施工に際しては安全・品質も含めた厳密な施工手順が組まれるのが当たり前の世界。期間内に施工を終えるには、不測の事態も想定しなければならず、天候にも当然左右される。この当たり前の厳しさの中で育ってきた現場代理人を自前で養成してきたことが、リフォーム事業を下支えした大きな要因といえる。 同社の納期に対する厳しい姿勢は管理組合の評価となってはね返る。リフォーム担当者は「工期を的確に守ることは、居住者様が最も気にするベランダ内の使用制限を最小限に抑えることにつながり、非常に感謝されている」と話す。プラントメンテナンスでは納期は守って当然で、決して評価の対象になることはないからだ。

また200世帯以上の大規模改修物件では、居住者の中にはほとんど必ず建築関係の仕事に携わっている人がいる。しかしマンションリフォーム自体建築関係の中でも非常に珍しい業種であることから、建築関係者でもそのノウハウを理解している人は非常に少ないため、そうした場合に説得力を発揮するのが工程表。「プラントメンテナンスでは写真付きで工程表を作成する。どのような施工をするか、仕様書の理由付けなど、専門的な説明を分かりやすくすることで管理組合の信頼を獲得しなくてはならない」(担当者)と説明。

同社がリフォーム展開する大都市圏では、大規模改修にエントリーできる施工会社は限定されてきている。資本力、実績などで裾切りされ、リフォーム提案の内容には大きな差はない。このため施工単価をめぐる競争が日常化。「プラントメンテナンスに比べてもリフォームの方が収益性は悪い」(柏原社長)という実態がある。 リフォームに対する同社のスタンスは基本的にプラントメンテナンスで歩んできた方向と同じ。「いたずらに売上を追うことだけはせず、長いお付き合いの関係を構築していく」(同)とのスタイル。

施工中の配慮を徹底し、居住者ばかりでなく、周辺住民に対しても積極的にコミュニケーションしている。例えば工事期間中は整理整頓に加え、近隣の清掃活動を実施。また居住者の不安や心配を先取りしての対応では、エアコンを使える形での工事、駐車場の車対策など、いわばサービス業的な発想を大切にしている。 工事終了後のアフターサービスは、1年、3年、5年、10年の定期点検を実施。これもプラントメンテナンスと同じ。長期的な関係づくりの同社のスタイルが居住者にも通じ、外壁改修の次は屋上防水、そして鉄部メンテナンスとリピート工事につながるケースも目立つ。

「工事のハード面で差別化することは難しい。工事品質はあって当たり前の状況で、この面では競合各社も努力している。あとはサービス業としての気配り、つまり安心というサービスを徹底するしかない。居住者とのコミュニケーションも一律ではなく、ケース・バイ・ケースの対応が求められ、マニュアル通りやればOKとはいかない」(担当者)という。 リフォーム事業部内にはアフターサービス本部を設置し、専門スタッフが対応する他、施工中の対応では女性の現場管理者を育成し、女性の視点から居住者とのコミュニケーションを図る。同社では5~6年前から大卒の女性スタッフを採用し、現場管理者として重責を担わせてきた。現場の職人からも好評で、もちろん居住者からは気軽に話せると大活躍している。「リフォームはサービス業的な面を強めている。女性がもっといろいろな形で関われる余地があり、女性の戦略化も積極化したい」(柏原社長)と前向きだ。

同社のリフォーム事業は現在、首都圏並びに近畿・中国・九州に展開しているが、中部圏への進出など順次全国展開の方向にある。既に北海道地区ではリフォーム事業を展開中で「進出当初は地元の業者の反発もあったが、品質を重視した当社のスタイルが評価され、今ではむしろ喜ばれている」(担当者)と自信を見せる。 また一方、戸建改修は本社の岩国エリアからスタートし、山口県で実績を上げ、ビジネスモデルを構築。これを横展開していく予定。「当社のオリジナル性のあるモデルで差別化したい」(同)と全国規模での展開を視野に入れる。 プラントメンテナンスの全国トップから、リフォーム分野でも存在感を増している。

20071010-6-1.JPG 柏原塗研工業本社


大規模改修に特化、環境配慮をアピール ヤシマ工業

文化元年(1804年)の創業以来、200年の歴史を重ねるヤシマ工業(本社・東京都杉並区、社長・小里洋行氏)はマンションなど大規模改修に特化した展開を図っている。環境配慮や徹底した事前調査などが施主から評価され、品質確保のための教育にも力を注ぐ。その根底には「ヤシマに頼んで良かったという評価を頂くには努力をせざるを得ない。それがあるべき姿」(松岡忠孝専務取締役)という姿勢が見られる。
ヤシマ工業はもともと柿を原料とした建物の防腐・防火塗料である「柿渋」の販売からスタートした。その後、材料販売とともに塗装工事の請負業務を行い事業拡大を進めてきた。昭和52年からは、建築内外装吹付・塗装・防水専業施工に加えコンクリート建造物総合改修専門工事を主力として、大規模改修の特化に踏み切った。


現在は管理組合からの元請けと管理会社からの下請け業務を行い、売上高は年間34億円となっている。専門とする大規模改修のノウハウの蓄積がそのまま同社の強みとなっている。
「建物の傷み具合を調査診断しその原因を把握した上で、方法論を提案する。そして施主の要望を取り入れながら仕様を決める。今までの実績がマンションごとに合わせた提案を可能にし、真の長寿命化を実現する」。


仕様の提案の際、環境やエコに対する配慮を説明するのも同社の特徴と言える。建物の建て替えでは大量の産業廃棄物が発生するため、長寿命化はそのまま環境負荷低減につながる。工事現場でもごみの分別を徹底することで排出量の削減を心がける。こうした考えを管理組合や管理会社に説明する。使用する材料に関しても、VOC含有率を細かくデータ化した資料で説明し、施主に提案する。「水性塗料の中でもVOCが4‐5%含まれるものもある。環境にやさしいものを使用するのは我々の義務」と言い切る。最近では環境配慮に対する関心がますます強まっており、こうした取り組みが管理組合などでは高く評価されるという。
建物の調査・診断でも徹底している。同社のシステムでは目視から始まり、赤外線、超音波、レーザー光線など最新科学機器を駆使し、さまざまな角度から建物を診断する。その種類は実に14種類の診断を行っている。建物の状況を性格に把握することが、仕様計画を作成する上で最も大切との考えがこうした診断システムを構築した。


このように、14種類もの診断や環境に配慮した材料を使用するからといって、そのまま単価に乗せては厳しい価格競争が続く改修市場では戦えない。そこは、ムダな中間コストを省いたり、効率を上げ短納期で完工したり、材料メーカーとのつながりを強めたりしてコスト削減につなげている。実際、コストパフォーマンスで劣ることはほとんどないという。
同社の従業員は現在57名。営業や管理を行い、職人は協力会社から350人が常用として現場を請け負う。同社では職人の技術やマナーの取得を目的とした勉強会を開いていたが、改めて「マンションアカデミー」として2年前から強化を図っている。「改修市場はますます魅力あるマーケットになるだろう。一歩でも抜きんでるために現場レベルの向上を図りたい」として、自社または会館で開催している。基本的に職人は半年に1回受講することとしている。そこでは技術的なことはもちろんだが、あいさつの仕方や現場でのマナーなど細かな対応まで指導している。また、その一方で管理組合、オーナー、管理会社向けのセミナーも開催している。


同社には隣接した庭園がある(写真)。この庭園は「環境のシンボル」という意味があるという。「庭園にある岩にはコケが生えている。コケはCO2を吸収するという性質があり、死んでもその性質を維持し続けるため環境配慮のシンボルとして重要な意味を持っている」という。今後、敷地内にある建物に管理組合の人達を呼んでそこでプレゼンや打ち合わせをしたいと計画する。
建物は築40年のものをリフォームした。年式を感じさせない仕上げがそのままサンプルとして管理組合へのアピールとなり、庭園のコケ岩をシンボルに環境配慮の取り組みを説明すれば説得力も高まる。
現在、管理組合の立場は強くなっているという。管理組合自ら情報を得て施工業者を選定する傾向が強まり、管理会社が中間に入っている場合でもその発言権は強くなっている。そういう意味でも管理組合への対応は同社でも注力する点だ。


そうした傾向は同社のHPへの反応からも分かる。同社では自社のHPからリンクした「マンション大規模修繕ネット」を別に立ち上げている。そこでは管理組合やオーナー向けに、大規模修繕のポイント、Q&A、施工事例、料金表などを詳しく掲載している。そのHPからの問い合わせが月に10件以上あるという。問い合わせに来るのは詳細を吟味した顧客なので、単なる問い合わせで終わらず成約につながるケースが多いという。
また同社には関連会社として、ヤシマ環境総合研究所がある。ヤシマ総研はヤシマ工業のアスベスト事業部から独立し、昨年9月に設立したアスベスト事前調査専門会社。アスベスト調査・分析を行い工事のバックアップを行うとともに、第三者機関として調査診断も行っている。また、遮熱塗料や光触媒塗料など新材料の研究所としての役割も担っている。新材料は施主へのプラスアルファの提案になるため重要な位置付けとなっている。


松岡専務は「改修工事は住民の方に多くのストレスを与えている。洗濯、エアコンの問題など生活にさまざま不具合が生じる。そうしたストレスを我慢してもらっている上で我々は工事を行っている。そういう意味でも、ヤシマに頼んで良かったという評価を頂くには努力をせざるを得ない。その気持ちを持ち続けるのが、本来あるべき姿だ」と言い切る。


20071010-7-1.JPG 庭園を眺めながら打ち合わせを行う


元請指向にシフト、中期計画スタート オーレックス

オーレックス(本社・東京、社長・中岡利充氏)はオーウエルの100%子会社で、主にリフォームを中心に全国展開してきた。ハウスメーカーの下請から元請指向への転換を図りつつある。その背景を中岡社長は「リフォーム市場の将来を見据えると、居住者との関係作りをしていくことが成長に直結することは明らか。これまでのノウハウを生かしオーレックスらしいスタイルのリフォーム会社に変えていきたい」と語る。


同社の前身である三金建材工業は、40年余りにわたって大型の新築プロジェクトから住宅リフォーム、外装塗装まで幅広い物件を手がけてきた実績がある。オーウエルの傘下に入り、04年10月に社名をオーレックスと改名し、名実ともにオーウエルグループとしての展開が始まった。
元請指向に対応し、今年4月には品質管理セクションを新設。ここを中核としたサービス体制を構築していく。このセクションの守備範囲は広い。単なる工事品質の管理にとどまることなく、ヒト・モノ、そしてコストを含めた要素を品質というくくりでレベルアップしていくのが使命。
「品質はどこでもアピールする要素ですが、その本質とは何か、どこまでを品質と捉えるかは明確ではありません。当社のポリシーとして、事業のすべてのプロセスを貫く品質という形を具体化していきたい。言い換えれば差別化や価値につながる品質を追求していきます」(中岡社長)。


同社の品質戦略の良い例がある。品質管理部が行っている職人を対象とした教育・研修事業。これは形としては以前から実施されてきたものだが、目標をスケジュール化して定例化。決して参加を強制することはないが、参加率は70‐80%を超える。職人が勉強熱心なのには訳がある。
サービスマナー、施工実習などと同時に教育・研修で重要視しているのが「職人がプライドを持てるような品質の作り込み」とリフォーム担当者は強調する。どのようなことかというと、職人気質が強いほど、悪く言えば保守的で現場の変化に対応できずマイペース型が多い。しかし自分の技(スキル)には絶対といえる自信と自負を持っている。こうした職人に品質というコンセプトを注入すると「驚くほど変身する場合がある」(同)という。


技(スキル)を技術(テクノロジー)へと進化させ、自信をやる気へと変えることで、職人気質とつり合った品質が見えてくる。「要は彼ら(職人)の心を汲み、居住者から感謝されることでやる気を起こし、向上心につなげること」と担当者は解説。
しかしこれは、言うは易く実行することは難しい。このためいくつかのしかけを用意している。それが工事品質の定量化だ。良い仕事を数値などで見えるようにする。


同社のリフォーム事業でも定量化は遅れていた。ハウスメーカーなどの下請けが大半であったため、工事記録はあってもそれがどのような状況(天候など)で施工されたのかというようなデータはほとんどなかった。これは考えてみれば品質の基盤を欠くことにもつながる。
工事現場の温・湿度、壁の向きと壁面表面の温度や含水率など、現場管理データを定量化した記録を残す。しかもこうした定量を自主的に行って、品質向上につなげていく。


定量データを整備することで、万一クレームが発生した場合でも、データに基づく冷静な対応が可能になる。下地がどうなっているのかというレベルではなく、建物の置かれた環境データまで集積するとのスタンス。「施工は常にあいまいゾーンが付きまとう。原因解明にはデータが不可欠」と担当者。
実はこうしたスタンスはオーウエルから持ち込まれたもの。オーウエルは工業塗装ラインの管理ノウハウがあり、品質のための定量化は日常業務といえる。いわば現場施工に応用した展開といえよう。
工業用ラインで培った安全管理、工程管理、原価管理なども、リフォーム事業に応用展開された。これがオーレックス流の品質を支えるものとなる。


元請シフトは今年度を初年度とした中期(3カ年)計画で推進されている。第1ステージの目標は元請としての足元を固める基盤(ネットワーク)づくり。売上の30%を元請化し、次のステージへのパワーをため込む。
同社の独自の言い回しでは「火の見やぐら方式」。地域の実情に合ったリフォームの在り方を発見し、ランドマークとなるようなリフォーム事業を創造するという意味だ。その具体例のひとつがショールーム構想。「リフォームはやってみないと分からない部分が多く、コストと品質との相関も分かりにくい。実物に近い形を見せる必要がある。これを工夫したい」と想定は固まっているようだ。


もうひとつ火の見やぐら方式で重視しているのがファッション性。老朽化したからリフォームするという時代は終わったとの認識がそこにある。「トレンドを取り入れたファッショナブルなリフォーム提案をしていきたい」(担当者)とビジョンは明確。
オーレックスは今年度を初年度とする3カ年計画で元請比率を高める方向に舵を切ったわけだが、課題は「人づくりにある」(中岡社長)という。ハウスメーカーの下請リフォームはある意味、対応がはっきりした形であった。スペックなどフォーマットが決まっていたからだ。


しかし元請には不透明感が付きまとう。クレームの内容も多様化する。「居住者に安心を与えられる人間関係が作れる人材が必要になる」(同)。まずは社員の意識転換が第1ハードル。「未知数の部分はあるが、我々自身も生活者の1人なのだから、居住者の立場に立つことは決して難しいことではない。コミュニケーションを欠如しなければ相互理解はできるものと信じている」(リフォーム担当者)とコメント。


20071010-8-1.JPG オーウエル(東京)内のオーレックス本社

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