Web特集
2007年11月01日
建築塗装特集2007・ケーススタディ(2) 協和テクノス・乃一塗装工業・アイワ建装・三木塗装店
三菱化学エンジニアリングの子会社の協和テクノス(本社・東京都港区、社長・福元博幸氏)は三菱化学グループの工場やプラントの防食塗装をメインに展開してきた。福元社長は「当社には昭和24年の創立から培ってきた防食技術があり、塗装劣化診断から仕様の対応、点検までトータルなシステムが構築されている」と自信を持つ。 同社の塗装診断システムは塗装の劣化状況をデータベース化し、蓄積された情報をコンピュータ処理することで解析し、その後塗装工事の年度計画から仕様の検討、施工管理を行っている。施工情報は記録として取りまとめ、更新・蓄積されるといった流れで、診断から施工・点検までのトータルサービスとしてシステム化されている。
現在、同社の売上高は30億円。一昨年の25億円からの増加要因として、福元社長は「グループ会社の中で、この塗装診断システムの理解も深まり主要工場で管理を含め導入されていることが大きい」との見方を示す。 工場やプラントの防食塗装をメインに展開を進めてきた同社だが、ここ数年は一部業容拡大も図っている。人材面でも、教育方針として各種資格の取得を促し取得者にはインセンティブも考慮しているため、一級建築士をはじめ幅広い有資格者を抱えている。こうした技術者を生かす意味でも、防食塗装だけでなく親会社と協業し工場やビルのファシリティマネジメント(総合的な企画、管理、活用する経営管理)事業への展開を図る。
加えて、「グループ会社のメンテナンス投資もここ1‐2年がピークだろう。今後は減っていく」と予想される状況が、新事業の必要性の高まりにつながっている。培ってきた「診断に基づいた仕様」といった流れを建物全体に応用することで塗装以外の工事の取り込みも図る。 「当社は自社技術に加え、三菱化学グループの工法や材料を活用できる強みがある。劣化状況を診断し、ライフサイクルコストの観点から構造・意匠・設備の保安計画をトータルで提案している。単に塗装工事だけの提案では価格競争になってしまう」。ここ数年は耐震診断の引き合いも多いという。
現在までのところは、グループ会社やその取引会社などへ営業を行っているが、今後は一般顧客へも幅を広げて展開していく意向だ。 福元社長は今後いかにグループ外へも展開が図れるかが鍵と見ている。「今はフィールドワークに費やす比率が高い。もっと技術サービスを検討したり、システムをブラシアップしたり売り込んだりする余力を確保したい。今後はどうしても外部への展開が必要となってくる。それにはファシリティマネジメントでアプローチする必要がある」と方針は明確だ。
乃一塗装工業(本社・愛知県名古屋市、社長・乃一稔氏)はマンションやビルなどの改修をメインに展開し、売上高は約27億円。新たに工事専門の部署として管理部を新設し管理基準の徹底・レベル向上を図っている。 同社では4つのグループを組織してそれぞれ半ば独立した営業展開を行っている。グループごとに年度計画を作り、売上や粗利目標を設定する。グループ分けすることで役割が明確になり、一体感も強まっているという。結果に対するインセンティブにも違いが出てくるため、モチベーションアップにもなる。「官公庁、集合住宅、電力会社、戸建などターゲットの強化ポイントなども、グループごとに計画を立ててもらう。その上でこちらから指示をする。まずは計画ありきの考え」(乃一社長)。
4年前に管理部を新設した。同部は工事専門の部署で、営業とは分けられ原価管理や段取りなどを行う。基本的に常駐ベースの大規模改修物件を扱っている。大規模改修では高い管理が求められるため、従来の営業から管理までを行う「自己完結型」では不安が残っていた。また管理部でのノウハウを各グループに水平展開もでき効率化につなげている。 市場に対して、乃一社長は「建設業は厳しいものの、改修市場は恵まれている方」と話す。実際、改修需要は増加傾向が続いている。しかし、競争が厳しいのも現実。直需であっても単価が厳しい状況下、同社ではコストダウンでカバーしたり、専門業の強み・職人能力・きめ細かな対応など差別化をアピールしたりして取り組んでいる。「高品質のものを提供する。これを押えていれば伸びる」というのが実感だ。
品質維持には下請けの協力会社の高い能力も求められる。同社では「品質パトロール」を行い、工事ごとに評価を点数につけてチェックし協力会社に見てもらい課題があれば改善を促している。ただこの評価はあくまでも基準であって、「単純に点数の高い会社順に発注しているわけではない」。営業マンによって偏りが出る可能性もあり、システムとしてまだまだ完成形ではない。 戸建に関してはハウスメーカー数社との取引があり、新築・リフォーム工事を請け負う。ハウスメーカーの営業力によりリフォーム需要は伸びている。この事業には上述の4グループとは別のグループが担当している。ハウスメーカーは顧客満足度を特に評価するため、求められる要求が変わってきているという。技術だけでなく、あいさつ、マナーなどきめ細かな配慮が評価される傾向が強まり、品質、マナー、連絡、納期の対応に注力する。
同社では大規模改修をメインターゲットに据え、戸建に関してはハウスメーカーとのつながりの他、自らも直需営業を図り更なる成長を目指す。
競争の激化、工事価格の下落など厳しさを増す建設市場にあって、アイワ建装(東京都・荒川区、社長・甲斐下雄司氏)は6年ほど前から明確な方向転換を図った。従来は大手ゼネコン数社の下で集合住宅などの新築を主体とした吹付・塗装をメインに展開していたが「他社と横並びではなく自社の独自性を打ち出さなければ生き残りは難しい」(甲斐下社長)との判断から思い切ったリストラクチャリング(事業の再構築)に乗り出したもの。 まず行ったのは得意先の絞り込み。それまで各ゼネコンから請けていた新築工事に関し、マンション最大手の長谷工コーポレーションの仕事のみに絞り込むとともに、それまでの吹付・塗装に加え防水、シールなど外装工事全般を一括受注する戦略を推し進めた。
得意先の絞り込みにより売上は減少したものの、一括受注体制により「1物件当たりの受注金額が倍増」(同)するとともに一元管理による効率化で利益率が向上。一方の発注側でも工程間に連なる品質の安定、保証の一元化、管理の手間や価格の融通性などトータル的なメリットを再確認でき、元請けとのパイプを更に強固なものへとすることができた。 一方、改修工事の領域では自社開発の特許工法「アドグラ」及び「同ピンネット工法」に集中した展開。従来の石材調仕上塗材に比べ本石さながらのよりリアルな質感が特長で、既に大手設計事務所や大手・準大手のゼネコン各社で改修工法のメニューとしてスペックイン。特にピンネット工法はタイル貼り建造物のタイル剥落防止と同時に外観を高級なデザインへと一新させることから好評で、ショッピングモールやビルなど商業関連の大型物件で採用が相次いでいる。特許工法のため採用が決まれば同社が材工で行うことになり、物件の囲い込みとともに付加価値の高い仕事に直結する。この4‐5年の間に売上の3割を占めるまでに成長した。
6年前から取り組んだ事業の選択と集中は「ピーク時(約16億円)に比べて一時は売上が半減、また会社の方針を理解していただけない人には辞めていただいた」という痛みも伴った。 しかし「事業がようやく軌道に乗り始めた」ここ2~3年で成長路線に転じ、前期の売上は9億4,000万円を計上。得意先との関係強化、アドグラの普及拡大で受注残8カ月、30億円の見積残を抱えるまで回復し、「3年後に売上げ20億」のビジョンを確固たるものとした。
「量から質への転換を図るこの6年の歩みの中で会社の利益体質は格段に強化された。その上で売上的にも成長を探れるようになり、決断に間違いがなかったことを確信している」。
「塗装が原価の高い仕事だということを知ってほしい」と取締役・企画開発室長の三木良介氏は訴える。受注単価の85%が材料費と人件費で占め、営業経費やその他経費は残りの15%でやりくりしなければならない現実がある。しかし、建設工事の単価下落はとどまるところを知らず、最終仕上げとなる塗装に対するしわ寄せはコスト・納期管理ともより厳しさを増している。そんな状況に「本当にいい仕事をエンドユーザーに提供しなければ塗装業界はダメになる」と危機感をあらわにする。
三木塗装店(本社・大阪)は創業明治42年、2年後には100周年を迎える老舗塗装会社。大手ゼネコンの協力塗装会社として、手掛けた著名物件は数知れず。特に塗装技術に対する評価は高く、歴代多くの職長・職人を育成・輩出し、技能技術のパイオニア的存在。しかし同社の基幹事業であるゼネコン下請業は、単価下落の波を避けられず、収益が急激に悪化。そのような状況の中8年ほど前から次の事業へのリストラクチャリングとして「元請け」としての歩みを始めている。 同社が対象にするのは、企業物件の改修工事。三木氏がその陣頭を取る。生産ラインが稼働し、従業員が立ち入る工場での改修工事は、「安全の確保はもちろんのこと、臭いやセキュリティの配慮、従業員の方の導線確保など新築工事とは違う現場管理が必要となる」と話す。工事も塗装だけではなく、足場、防水、板金、床工事などの付帯工事も伴うため、職人は改修工事の段取りやノウハウを知り尽くした改修専門のチームを編成し、固定化している。
品質確保に対しては下地診断から塗装、安全管理など施工管理項目を自社で策定。錆止め塗装には、旧塗膜を侵さない2液変性エポキシを塗布するこだわりぶり。下地には高グレードの塗料を使うという見えない部分での施工品質を重視する姿勢がある。 三木氏が目指すのは、いかにトータルで施主に満足感を与えることができるか。元請けの場合、施工だけではなく企画、施工、品質、アフターフォローに至るまでの評価が重要。
同社は自社で職人を抱えるいわば職人系塗装会社。三木氏は「すしにも職人が握る鮨と回転寿司があり、消費者もそれぞれ価値を持って購入している。残念ながら塗装の場合は何でもかんでも一緒くたにされている。このような現状下で当社は請負いというリスクを伴う部分は企業として負い、職人には'三木の職人'としての誇りを持って、QCDSE(品質・コスト・納期・安全・環境)の改善に取り組み、プロとして企業品質の向上を追求していきたい」と塗装における自社のブランド力強化を理念として貫く。