Web特集
2007年12月06日
新興市場の台頭、多様化する市場 2007年東京国際自動車会議
「トヨタ自動車が目指すもの」と題し、渡辺捷昭社長は現状に甘んじることなく、常に夢と志をもってチャレンジしていく姿勢を強調した。同時に「生産量で世界一になることより、質的なレベルで世界一となるため、足元を固めていく必要がある」と述べた。 車は高機能化、IT化が進む中で使われ方が多様化、高寿命化による経年変化など、大きく変化する時代を迎えている。渡辺社長は「品質は生命線。品質と原価問題はチームを作り対応していく。特に品質に関する課題は複雑・多様化しているので、もう一度原点に戻って問題点を洗い出していきたい」という。
このためトヨタはカスタマーファースト委員会を立ち上げている。同委員会は技術・設計、生産、調達、販売・サービスの各セクションが連携をとりながら、課題に対し「なぜを5回繰り返し」徹底した原因の究明を行う。品質は「ひとりひとりが主役。自分の工程ばかりでなく、前後工程までを視野に入れ品質を作り込む"自工程完結"を実践。これとともにグローバルプロダクツセンターにおいて、トレーナー教育を行って教え教えられる風土作りを進めています」と説明した。
トレーナー制度はグローバルな自立化を促進する手段でもある。国内の本部でやるべきこと、海外でやれること、支援すべきことを明確に分け、認定トレーナーが進捗状況を数値ベースで管理。いわば「本体8万人の社員が総コミュニケーションを行って、問題・課題を見える化し白日の下にさらしていく」と説明。キーワードは「(部内間で)仲良くケンカして、問題発見能力を高め、問題解決につなげていく」と強調した。 また車づくりについて触れ、高岡工場で進めている「生産システムのシンプル・スリム化」について渡辺社長は「従来発想の工場の半分のスペース、50秒タクトで1台生産するシステムの検証をする」ことを明らかにした。「ものづくりの王道を歩み、パートナーと一緒になって生産改革を推進したい」と発言し注目された。 最後に3つのサスティナビリティとしてサスティナブルなものづくりサスティナブルなR&Dサスティナブルブランドを掲げ「人が最大限の能力を発揮できる企業風土が重要」と結んだ。
ホンダは次世代環境技術の市場投入を加速させる。NOx触媒を採用した次世代ディーゼルエンジンを開発した。他社からの供給を受けていたが、「欧州ではディーゼルでないと商売ができない」(福井威夫社長)として自社開発し、軽量化、ノイズ削減など後発ゆえのメリットを武器に展開する。2009年をめどにまずはアメリカ市場で販売を予定。また、「この開発がないと自動車産業の未来はない」と言い切るのが、次世代燃料電池車。既に発表されている「FCXコンセプト」に改良を加えて加速を安定させ振動も抑えた新型車を開発した。「ガソリン車と比べ走行フィーリングは別世界」という新型車は来年日米で限定販売を予定している。福井社長は「あと10年経てば量産化に近づくだろう。早く1000万円を切る価格で発売したい」と述べた。
「日産・ルノーは業界で唯一成功しているアライアンス。自主性を持ちながらシナジー効果を発揮し利益に寄与している」とゴーン社長は述べた。原油価格の高騰から車の燃費は重要視されており、同社にとってもエタノール、ハイブリッド、電池などの技術開発は必須事項。「各国によって主流技術は違い、今後はもっと多様化していく」と見ており、重複せずに分担して技術開発ができるアライアンスのメリットを最大限に活用していく。「誰が勝利するのか。市場シェア確保だけでなく、利益を確保することが大切」として、戦略を明確化して数値目標を設定し継続的な成長を強調した。
トヨタとレクサス両ブランドのデザイン総責任者としてデザイン戦略を推進した平井和平氏(トヨタ自動車常務役員)は「個性をつくり込み、お客の個性とフィット」する方向の重要性を述べた。 デザインコンセプトとして「J‐ファクター」を掲げ、調和(シナジー)と純化(シンプリシティ)を対立でなく妥協でなく、新しい価値として創造する。一見矛盾するコンセプトである「小さいがスペースは広い」はヴィッツやヤスリに導入。「主張のある調和を訴えている」と強調。将来のモビリティ(移動体)はサスティナブルモビリティになるとまとめた。
KEN OKUYAMA DESIGNの代表・奥山清行氏は日本のものづくりの欠点として1)作り手の顔が見えない2)企業文化の欠如3)技術開発によってかえってアジアで価格競争に巻き込まれる4)保守的な金融機関5)技術自体で価値を生むことの限界6)中小企業の下請けで自主製品を持たない点を挙げた。「技術は手段であって、料理しておいしいものを作ることが価値を生む。このためにはより深く文化に根ざしたデザイン、地元の文化を生かしたデザインが不可欠になる」と話した。
BMWAGのデザインディレクターであるクリストファー・バングル氏はBMWのデザインをエフィシェント・ダイナミックと表現。「情報を圧縮した形、口で説明するのではなく、映像で見せるデザインを認知させることが重要」と述べた。
朱華栄氏(長安汽車集団副総裁)は中国における自動車生産は1‐9月で645万台を超え、年間850万台を突破すると報告。同社の歴史を振り返り、現状は06年の生産71万台から07年には85万台に増大、中国第4位の自動車メーカーと説明した。世界100カ国に輸出し、イタリアにR&Dセンターを設けている。 同社は2010年までに31タイプの車の生産を予定し、200万台の生産を目指し、うち120万台は自社ブランドが占める。 「世界を視野に入れた開発を指向し、グローバルな経営資源を活用していきたい。特に専門デザイナーの人材を世界に求め、日本にも設計デザインセンターを設ける計画がある」と述べた。
世界戦略としてはM&Aの他、現地化、ブランド力の強化を図る。「身丈に合ったグローバルスタイルを追求していく」とコメント。 劉志剛氏(華晨金杯汽車総裁)は同社の設立が91年で、2工場、エンジン工場1つを有し、グループ社員は8,000人と解説。今年前期の生産は9万6,000台で、前期比503%増。中国の自動車メーカートップ10入りを達成と説明。 「これまでの低品質・低価格の戦略を脱し、世界の経営資源を活用し自主開発を強化、技術力を向上させ国際競争力を向上させていきたい」と力強く発言した。
李書福氏(吉利汽車会長兼社長)は「今後20年に向け、世界の産業構造が変わる中、戦略的に重要な時期となる。後発から逆転を狙っていく。技術・品質・サービスでトップを目指す。そのためにまず工場を作る前に学校を作り、一歩一歩固めたい」と自信を見せた。 同社は約10年前に中国初の民間の自動車メーカーとして発足、コピーした車づくりと批判されながらも、独自のスタンスを確立。「安い車の段階は終わった。当社も核となる部品の内製化など、部分的にはリード」と述べた。 中国は改革開放のスピードを上げている。今日の成果は外資の導入によるところが大きい。01年のWTO加盟、03年には自動車金融の解禁、そして05年には販売・サービスの開放を進めてきた。
インドは経済自由化政策に伴い自動車産業でも1993年にライセンス取得制を撤廃した。その結果、1993年に3社だった自動車メーカーの数は現在15社になり、乗用車の生産台数は1994年の24万5,000台から、2006年で138万台までに成長を続けている。1,000以下の小型車が市場の約8割を占めているのが大きな特徴。年率2ケタ近い経済成長率、ITとBPO(ビジネスプロセス)産業の成長、高速道路の整備などの要因から需要増は今後も続くと見られ、2010年には200万台を超えると予測されている。
同国市場で大きな存在を示しているのがマルチ・スズキ・インディア。同社取締役のバルガバ氏は「他メーカーは、インドの政府を相手に自動車製造をするのは難しいとの考えがあった中でスズキは先見性があった。車はコスト、性能、信頼性といった特長を持っていたし、何より経営陣が信頼関係を築いていた。財務担当など経営の一番大切なポストをインド人に任せていたことが信頼関係につながっている」と成功の要因を分析した。
ブラジルでは1930年からガソリン混合エタノールが自動車燃料として実用化され、1986年にはエタノール車のマーケットシェアが76%まで拡大した。2003年にフレックス燃料車が初投入されると更に市場は拡大し、現在自動車メーカーはすべてブラジルではフレックス燃料車を投入している。2007年には販売される全車両の88%以上が同車となり、2013年までには保有車両の50%が同車となると見込まれている。ガソリン車に比べCO2排出は14%低く今後更に改善される見込み。
イノベーションの新たな視点として安井氏(自動車産業エグゼクティブ)は「オープン・標準化・セキュリティ」を挙げ、パートナーの役割や責任の見通しが重要と指摘した。これについてオープン・アーキテクチャーを実践していくとの表現を提示、「それぞれのパートが専門性を追求し、ビジネスプロセスの連動性を高めなくてはならない」という。 トップ自らがイノベーションの方向付けをし、リードする役割を示していくと同時に、社会-市場-技術を生活の変化から統合していく必要性を強調。「健康への関心、コトバの差異などディープな視点がこれからのイノベーションには求められる」と解説する。
またグローバル化は多目的化でもあり、それゆえに意思決定の共有化をベースにしたグローバル統合が不可欠になる。「ニューモデルとしては、ライフスタイルを終端としてさかのぼるリバース・サプライ・ネットワークがテーマとなる。再利用・回収・廃棄がそれにからまる」と述べた。
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