Web特集
2008年01月11日
シリーズ: 揺れるライン塗装
揺れるライン塗装 No.143 日本車輌製造 コンパクト塗装設備を新設
日本車輌製造は鉄道車両や橋梁、建設機械、電機品、営農プラントなどを製造している。生産拠点としては豊川製作所、鳴海製作所、衣浦製作所の3カ所があり各種製品の設計や製造などを行っている。 今回取材した豊川製作所では昭和39年から総合車両工場として集約整備され、あらゆる鉄道車両・産業車両から各種輸送用機器までを開発・生産する能力を備えている。同工場では昨年10月、「新規にまとまった営業品目を受注したため、それに対応する新たな設備が必要になった」(鷲山氏)として、1億円弱を投じて新型の塗装設備を導入した。
コンパクト塗装設備
塗装設備に関しては、販売店であるエル・ミズホのエンジニアリング部長の吉田芳朗氏とともに工場・塗装条件などを考慮して設計を行った。「工場のスペースが限定されていたため、塗装室と乾燥室を重ねることでコンパクト化を図った。また、従来と違い高品質の外観が求められるため、ドライブースではなくクリーンルームでの水洗ブースとしてゴミ・ブツ対策を図った」(吉田氏)と説明する。
新型塗装設備は、図のように1階に塗装室、2階に乾燥室があり上下にはそれをつなぐエレベーターでワークを運ぶ流れとなっている。塗装ブースは上方送風型・下降排気方式の密閉式プッシュプルタイプの水洗ブースで風量は280m3/時間。乾燥炉は直下型熱風乾燥で、乾燥炉の前後にはセッティング室と断気室がある。工場の条件やワークの種類に合わせて設計されておりスペースを生かした最適な塗装設備となっている。この塗装設備では車両部品の上塗りのみを行い前工程は興和工業所に外注している。
興和工業所が前工程としてリン酸皮膜処理、電着及びプライマー塗装したものを同社がウレタン塗料で仕上げて受注先へ納品する。ワークのサイズは500mm×700mm×800mmのものがメインで1日に100枚塗装している。
ワーク4枚を横に並べる形で吊るして移動させ、塗装ブースで一旦ラインを止めて作業者(1名)がハンドガンで塗装する。塗装ブースは密閉式のクリーンルームで作業時間は平均で15分となっている。その後、ワークはエレベーターで2階に上げられセッティング室→乾燥炉→断気室と移動する。乾燥は60‐70℃で1‐1.2時間という設定になっており、乾燥後はエレベーターで下げられ投入口から出てくる。ワークが投入されてから出てくるまでの時間は約2時間。塗料はウレタン塗料を使用しているがアクリル塗料にも対応できる。また、乾燥炉の温度は130℃まで上げることが可能となっている。
現場は塗装マンの他にパテ研ぎ、塗装後のホコリやチリの確認及びポリッシングなどの作業を4‐5人で行っている。「通常のこのタイプの製品に比べてこの製品は品質レベルが高く、現在の直行率は70%ほど。半分以上の割合で何らかの補正を行っているのが現状。塗装マンに関しても個人の技量によって作業時間が変わってくるので、技量の向上及び均一化を図って作業時間の削減や品質向上につなげたい」と鉄道車両本部外装工場専門課長の伊藤博幸氏は課題を挙げる。
また、水性塗料に関しては「溶剤塗料と比べて光沢などの性能や作業性が追随していないという認識。製品自体が20‐30年使用するものなので、それに対応する塗料でなければクレームになってしまう。受注先からの指定であれば使用するが、今のところはこちらから提案するという段階ではない」と鷲山氏。
スラッジ回収装置で生産性向上
作業効率の向上に仙台計装工業のスラッジ回収装置「ニックスクリーンシステム」の導入が効果を上げている。
同システムは塗料凝集剤「ニックスNS‐005」とスラッジ回収装置「ニックスセパレーター」を組み合わせたシステムで、仙台計装工業はユーザーごとにオーダー設計で展開している。
日本車輌は設備立ち上げ当初は凝集剤のみの使用で水とスラッジを分離させ処理していた。しかし、ワークの入庫が本格化しラインの稼働率の上昇とともにスラッジも増加、「毎朝30分かけて分離したスラッジを網ですくいあげて処理していた」(伊藤氏)ため、作業時間のロスが課題となっていた。
そこで、吉田氏の「清掃期間を引き延ばすことができる上、不粘着性によるスラッジ産廃量の減少、臭いの問題、水のリサイクル、作業環境改善などを考慮してこのシステムが最適」との勧めもあり、今年の8月にスラッジ回収装置の導入をに踏み切った。
回収の仕組みは塗装ブースでオーバースプレーされた塗料スラッジをph調整剤「MM‐1」、凝集剤「ニックスNS‐005」で粘着性をなくし細かい粒子にして浮上させる。浮上したスラッジを水中ポンプで濃縮タンクに集め、スラッジ分の少ない水は戻し、その他は遠心分離式の全自動回収装置「ニックスセパレーター」に送られスラッジと水に分離される。分離した固形スラッジはドラム缶に溜まり、浄化された水は塗装ブースに戻され循環・再利用される。
同社の作業時間は8‐9時間で使用する塗料は1日に50kg。同社の場合、凝集剤は1リットル使用し作業の間回収装置は稼働している。処理能力は塗料の使用量や装置やガンなどによって変わるが、5トン/日の設計となっている。また、稼働時間は24時間でも可能という。
スラッジが設備に詰まると塗装ブースの排気量に影響を及ぼし、エネルギーコストや品質にマイナスが生じかねない。そのためいかに効率良くスラッジを処理するかはどこの工場でも求められるニーズといえる。
仙台計装工業の飯高所長は「『ニックスクリーンシステム』はユーザーごとの受注設計のため、小型から大型までさまざまな塗装ブースに対応できる。塗料に関してもメラミン、アクリル、ウレタン、水性、UVといったさまざまな塗料に効果を発揮できる」と同システムの万能性を述べる。
また、同社がレンタルとして同システムを展開しているのも大きな特長。レンタルのため、ユーザーは初期投資やメンテナンス費がかからないというメリットがあり好評となっている。また、資産勘定となるリースと違ってレンタルであれば経費として損金処理が可能になるという。
伊藤氏は「一番大きい効果は、作業者が朝工場に来て塗装ブースのスイッチを押すのと同時にスラッジ回収装置の作動と連動でき、作業をスタートさせることができること。以前は清掃時間に当てていた最初の30分がそのまま作業時間となる。これにより生産性の向上につながっている上、塗装ブース中の水槽を気にかけなくても済むというのも気持ちの面で大きい」とその効果を述べる。(桜井)
日本車輌外観