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Web特集

2008年03月03日

シリーズ: 揺れるライン塗装

揺れるライン塗装 No.144 ダイテック アクリル粉体専用ラインを新設 

ダイテック(本社・大阪府守口市、社長・長谷川智久氏)は昨年11月、本社工場、三重工場に続く第3工場となる伊賀工場(三重県伊賀市)を新設した。13億円を投じて完成させたのはアクリル粉体塗装専用ライン。当初は研究部門を併設したパイロットラインとしての計画を進めていたが、メインとなるエクステリア材のネットフェンスの受注増加により一転。長尺、大物品対応の量産工場に切り替えた。現在、5年での償却を目指し、フル操業での稼働にある。。
20080213-6-2.JPG代表取締役・長谷川智久氏

同社はこれまで介護用ベッド、立体駐車部材、タイヤラックなど什器関係の塗装を主に手がけ、大阪工場、三重工場ともに粉体塗装設備を導入している。各工場とも特色を持たせた設備機器を導入しており、敷地が限られる大阪工場は小物品向け、三重工場は顧客ニーズに柔軟対応するためフレキシブル性を持たせた工場で、プレス機、溶接機、金属加工機を揃え、研究部門も配備するなど同社の中枢的拠点となっている。それに対して今回新設した伊賀工場は大型、長尺品に対応した量産工場としての位置付け。徹底的に生産効率にこだわり、また金属プレス機を導入するなど金属加工から塗装、組立、梱包、出荷まで一貫生産ラインを組んだ。 今回伊賀工場に投じたのは、土地・建物・設備を含め総額13億円。「余裕があるから投資するのではなく、やや不況なときに投資していく」と長谷川社長の攻めの姿勢に基づいたもの。スタート3年は稼働率50%での操業を見込んでいたが、操業を開始して間もなくフル操業の状況に。「1年間は準備期間と見ていたが、ここまで増えるとは思わなかった。既にパンク状態」とピークの前倒しで1.5倍から2倍の受注が舞い込む好調ぶりを見せている。

ただフル操業といえども、現在は1直体制を敷いており、2直体制の導入は考えていないという。「従業員の確保やストックヤードの問題など間接要因が大きいため、基本的には1直体制を考えている」というのがその理由。

伊賀工場は近鉄・伊賀神戸駅から車で10分ほど行ったところにある「ゆめが丘工業団地」に所在。そこに敷地面積1万5,211m2の土地を確保し、3,769m2の工場建屋を建設した。名阪国道のインターに近く、大阪から1時間、三重から30分とアクセスの良さが決め手となった。また伊賀市には3,000世帯の住民がおり、雇用環境が安定していることも好条件となった。現在、伊賀工場には正社員18名、それに派遣、社外外注を含め36名が在籍している。

4枚同時に塗装、最大6枚
塗装ラインは「樹脂が違うと色替えに時間がかかり、稼働率が落ちる」と主力であるネットフェンスの生産効率化を最大限に引き上げるためにアクリル粉体塗装専用ラインとなった。コンベアの全長は440m、粉体塗装ラインは全長418m、ラインスピード1.8m‐3.8m/分の設定。粉体ブースはドイツ・ワグナー社製の高速色替えブース「スーパーキューブ」を2台導入している。
ワーク寸法は幅2,300mm×高さ3,000mm×奥行800mmで第1ブースはレシプロ対向6ガンの12ガン、第2ブースはレシプロ対向6ガン×2の計24ガン。ネットフェンスの塗装は第2ブースを使用している。ガンはワグナー社製のHicoat C4ガンを採用した。
ネットフェンスの塗装は発注主からの条件として、アクリル粉体塗装の1コート仕上げで膜厚は被塗物の線径3.5mmを塗装後3.8mm‐4mm未満にするスペック。更にフェンスの交点は生地が見えないことが条件となっている。


20080213-6-3.JPG 荷積みしたネットフェンス

20080213-6-4.JPG ネットフェンスの支柱を塗装

編状に線径の部材が交差する被塗物に対し、いかにして、1コートで膜厚をコントロールしながら均一に塗布し、かつ交点をカバーするか。更に同社はネットフェンス4枚の同時塗装を行っており、「いかにソフトに吹き付けるかがポイントとなった」と説明する。
そのために、まず塗料の粒径を揃えることに注視した。均一なカバーリングを実現するために塗料メーカー以外の検査機関に委託し、粒径のチェックを行う念の入れよう。吹き付けた塗料同士が潰し合わないための配慮ともなっている。またソフトに吹き付けるためにレシプロガンの上部の吐出量を多めにし、下部の吐出量を少なめにすることで、上から降りかけて塗装する塗装雰囲気に。ガンの吐出量は80~100g。最大6枚を可能としているが、ネットフェンス4枚の同時塗装を実施しているため、ブースの風量調整、ハンガーピッチ、ガンの吐出量といったノウハウが結集された形となっている。スーパーキューブとHicoat C4ガンを採用した理由について、「各機をテストした結果、ガンとの相性も良く、付きまわり性が高かった」との評。特に均一でソフトなスプレークラウドにより高い塗着効率と入り込み性を特長とするHicoat C4ガンについては、「このガンのおかげで4枚塗装が可能になった」と好評価を下している。


20080213-6-5.JPG 最大規模のモノサイクロン

使用色はホワイト系、ブラウン系、グレー系を中心にメイン色は5‐6色。色替えは「アクリル粉体のため15分を設けているが、他の塗料系であれば5分でできる」と高速色替えを実現。サイクロンも三重工場ではマルチサイクロンを採用していたが、「マルチサイクロンは掃除が大変で手間がかかる」とモノサイクロンを導入することで、色替えの高速化を図った。また塗料回収率96%と高回収率を実現した。アクリル粉体塗料は発注先指定のものを使用し、使用量は10トン弱/月。ネットフェンスの生産量は年産20万枚に上る。
焼付乾燥炉については、焼付温度200℃×20分で物温は180℃以上。熱風循環炉ではなく、間接方式を採用。炉のスペースをできるだけ狭くすることが可能な間接方式を採用することで、ゴミの付着や黄変を抑え、生産性の向上につなげている。特に床暖房方式(放熱管)を採用したことで、「驚くほど奇麗な温度波形を描く」と炉内の温度分布に誤差がないことも不良率の低減に寄与しているという。現在のところ不良率は三重工場に準ずる0.08%以下。不良と言えるのは膜厚不足や被塗物の落下程度。ゴミやブツの付着はほとんど見られないという。熱源は天然ガスを使用。焼付乾燥炉の排熱は、アフターバーナー800℃で焼いた後、スクラバーでかき落として無害化し、残りの熱は水切り乾燥に使用とコージェネシステムとなっている。


20080213-6-6.JPG 柱に据えつけた焼付乾燥炉、耐震性に配慮

前処理はリン酸鉄を使用している。被塗物の素材は溶融亜鉛メッキ鋼板だが、テスト段階にリン酸亜鉛でテストしたところ、「沸水試験でクラック、メクレが生じた」と、物性が得られなかったことでリン酸鉄に決めた。ただ三重工場で生産しているSPCC材や介護用ベッドなど室内で使われる部材の塗装についてはリン酸亜鉛を使用するなど、被塗物に応じた使い分けも行っている。前処理剤は日本パーカライジング製を使用。前処理工程は脱脂、化成処理を経た後、水洗5回、純水洗1回を行っている。
また前処理の廃液に関しても、蒸気発生装置を導入し、廃液を蒸気化させることで無排水を実現している。これらの廃熱の再利用化、排水の無排水化の取り組みには、大気・水質汚染、騒音、振動などへの対策を義務付けた伊賀市の環境基本条例が背景となっているが、伊賀工場ではこれらの他にも薬剤使用量の削減や気液分離対応による薬剤の大気放出のゼロ化、またすべての汚水の屋外排出ゼロ化などを実現しており、エネルギー効率を最大限に活用した最新鋭の省エネプラントとなっている。そのため工場内は焼付臭などの臭気が一切なく、クリーンな環境が保たれている。


20080213-6-7.JPG 蒸気発生装置で無排水化を実現

20080213-6-8.JPGシャワーカーテン式の前処理槽

オールインワン路線で成長
今回の新工場に投じた投資額に対し、同社では5年での償却を目指しているが、既に先を見据えラインの増設も視野に入れている。「新しい技術、設備を取り入れることで収益は上げられる」と攻めの姿勢は崩さない。同社の業績は右肩上がりを続けており、昨期の売上高は27億円。技術の流出を防ぐため、1業種1社の取引を貫き、そのことが顧客との信頼関係を築いている要因ともなっている。
今後の展望に対して長谷川氏は、「今までの塗装業の延長線では間違いなく先細りしていく」とする中で、「塗装の前後にある仕事を取り込んでいきたい」とオールインワンとしての存在を際立たせようとしている。また今後は研究部門を充実させ、新分野を開発し参入を図るとともに、独自なモノづくりへの指向も強くしている。(近藤)


20080213-6-9.JPG作業風景

20080213-6-1.JPG工場前景

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