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Last Updated: 2008年10月21日 08:57  RSS 2.0
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Web特集

2008年04月08日

シリーズ: 揺れるライン塗装

揺れるライン塗装 No.145 島新精工・穂高工場 携帯電話の筺体塗装に特化

塗装専業者の島新精工(本社・長野県安曇野市穂高、社長・望月皎氏)は昨年5月に総額約7億円を投じて携帯電話の筺体塗装の専用工場を立ち上げた。成熟マーケットにあって高意匠・高品質塗装に特化することで受注に結びつけている。更にデザイン提案まで踏み込むことで自社の付加価値を高めている。今回、専用工場を取材するとともに専業者としての方向性を伺った。
20080319-6-2.JPG 常務取締役 二村哲哉氏

国内の携帯電話の契約数は昨年1億台を超え、ほぼ1人が1台を持つ時代に突入した。しかし契約台数の伸び率はここ数年1%を切り、飽和状態となっている。また一昨年の携帯電話の生産台数は約4,800万台、昨年は前年比マイナス7%の4,500万台とマイナス成長にあり、マーケットは完全に買い替え需要にシフトしている。

このような状況下で先頃、三菱電機が携帯電話機事業からの撤退を表明。またソニー・エリクソンがドコモ向けの携帯端末は他社から調達する意向を示した。既に三洋電機は京セラに事業売却を決めており、シェア下位メーカーの再編が進んでいる。更に新販売方式にすることで端末代金が高くなることから買い控えを助長するとの声も出ている。

20080319-6-3.JPG 携帯電話の塗装製品

自動車外板を超える塗装仕様
飽和状態にある携帯電話のマーケットにおいて、あえて島新精工はより携帯電話の端末(筺体)の塗装に特化した事業展開を進めている。昨年5月に総額7億円(土地、建物、設備)を投じ、敷地面積4,521.945m2、延床面積2,396.69mの専用塗装工場(穂高工場)を立ち上げた。4年前にスタートさせた明科工場に次ぐ2番目の工場だ。


「4年前に立ち上げた明科工場はプラスチック及び金属の成形部品の塗装・印刷を行っている。携帯電話の筺体塗装に関してはプラスチック、マグネシウム合金、アルミに対応した前処理からのラインを整え、既に安定した量が確保できるようになったことから穂高工場を新設した」と常務取締役・二村哲哉氏は事情を説明する。現在、穂高工場は1日2直で5万ピースに対応しており、ユーザー別に明科工場と穂高工場に分けて生産を行っている。
また今回の新工場は明科工場で得たノウハウを生かした設備レイアウトにするとともに、アウトライン方式にしてすべてガス式バッチ乾燥炉を採用。「試作や少量多品種品でも小回りが利き、高い効率生産を可能にした」(同氏)と胸を張る。


20080319-6-4.JPG バスボックス

これまで携帯電話の筐体の素材はABSやPCといった樹脂がメインに使用されてきた。塗装仕様も脱脂後ベースコートにUVコートの2コートが一般的であった。しかし、ここ数年柔軟なナイロン樹脂にガラスフレークを混入して強度を持たせるなど素材が大きく変わるとともに、差別化からデザイン性の高い外観が求められている。「塗料については、密着性の問題からウレタン系塗料の2液タイプにシフトし、多層コートが増え、4コート、なかには5コート、6コート、マックスで7コートといったニーズも出てきている」と同氏。
もともと生地色に向かない純ホワイト仕上げを目指したことから多層コーティングになったようだが、「ホワイトは隠ぺいさせるのが難しい。生地色を隠すために多層構造にした。以来多層コートの要求が高まり、昨今はプライマー、下塗り、ベースコート、UVコートの4コート(4ベーク)が主流になりつつある」と二村常務は説明する。今や携帯電話の筐体塗装は自動車外板を超えた仕様となっている。


20080319-6-5.JPG 塗装準備室の自動除塵機

アウトライン方式で効率生産
同社が導入した塗装設備はすべてタクボエンジニアリング製。SOFT BOY PRO・スーパースピンドル塗装ロボット4機を並列に設置。その内1機はデータ作成用の小型スーパースピンドル・データロボが設置されている。


3台の生産機はスーパースピンドルⅡタイプのダブルターン式。3コート仕様の製品に対しては1号機からプライマー、ベースコート(2号機)、UVコート(3号機)と直線的に進む工程。しかし、4コートに対しては2度回して対応している。そして乾燥のUV乾燥炉はライン化されており、塗装後に移載して(UV照射)ラインに入り予備乾燥、UV照射を経てアウトプットする仕組み。また乾燥炉は塗装ロボット1機に対して1台の乾燥炉を利用しており、熱効率のいいガス式のバッチ式乾燥炉・DRY TEC(タクボ製)を採用し、3コート・3ベーク、4コート・4ベークに対応している。


塗装は「スピンドルの回転数、塗料の吐出量、吐出圧はそれぞれの筐体の塗装仕様によって異なる。この辺が自社のノウハウ」と二村常務。通常4コートであれば35‐40μmの膜厚で管理しているという。ガンは低圧霧化タイプ。塗装機の塗料供給ポンプはタクボエンジニアリングが誇る吐出精度の高いシリンジポンプを採用。「膜厚、色調のブレを防いでおり、安定した供給が可能」という。


またデータ作成用のデータロボが大活躍している。試作や色出し、更には社員の技術教育に利用しているが、ほとんど毎日、試作か色出しで使用しているというように、このネットワーク塗装システムは分離作業の発想から生まれたもの。データ作成専用ロボットと生産ロボットとの組み合わせによってティーチングデータ、生産するワークの情報及び塗装条件などをフロッピーディスクやメールに転送でき、どこでも同等の品質とコストで生産できる管理可能な塗装システム。

徹底した管理で高歩留まり達成
携帯電話の筐体は素材の受け入れ検査後、マスキング治具へセットする準備室前室に入る。そしてセットされた筐体を塗装リング治具にセットするキャッチング室(準備室)に入り、最後に仕上げ工程である塗装室の順番。


20080319-6-6.JPG 塗装室。中央に乾燥炉DRY TEC

特に同社ではゴミ、ブツの付着を回避するためにエアーブローはもちろん、被塗物の移動に際してはパスボックス内を通過させ、そこで除塵を行う工程を取り入れている。塗装工程までに4回除塵を行う。なかでも準備室の除塵ブローは自動となっている。また「各室内の作業員の服装は目の部分を除き、頭から足までスッポリと覆う繋ぎの作業着にし、ゴミやケバの持ち込みを防いでいる」と同社管理部部長の井上修二氏。
更に各室のクリーン度は準備室がクラス6000、塗装室がクラス3000となっている。また各室は温度23℃、湿度55%に管理され、常にこの条件で塗装が行える環境を整えている。こうした徹底した管理体制が歩留まり94‐95%の高い生産性に結びついている。
その他、品質管理の面ではISO9001に遵守し各工程、メンテナンス、品質チェックを日々行っているという。
20080319-6-7.JPG ダブルターン式の塗装ロボット。同タイプが3台設置。

デザイン提案で高付加価値化
携帯電話の国内マーケットは飽和状態にある中で、同社の受注・生産量は増えている。「高品質塗装のウェイトが高まっている。それに伴い品質に対するシビアさが増している。特にここ半年の間にユーザー(デザイナー)が妥協しなくなってきた」と井上管理部長は指摘する。


20080319-6-8.JPG UV乾燥ライン

そのような中で、同社はデザイン提案も積極的に進めている。昨年提案したデザインが今年の春のモデルに採用され、生産を始めている。「従来はシルク印刷で表現していたデザインを塗りの技術で可能にした。特に量産でかつ均一に模様を出すことに成功した」と二村常務。マシン(塗装ロボット)の機能をいかに引き出すか、塗装技術がないとできない技。「二村はイメージ通りロボットを動かすことができる。そのティーチング技術は群を抜く」と井上管理部長の評だ。"塗りの技術"の追求が今日の島新精工を築いてきた。


20080319-6-9.JPG 検査室

また同社は過去に樹脂成形品への水性塗装の経験から水性塗装技術の蓄積に力を注いできた。既に技術的には樹脂へのオール水性塗装技術は確立している。「ユーザーに水性塗装を提案しているが(ユーザーは)コストと品質の問題で躊躇している状態だ。また一部のユーザーは素材をこれまでの石油系樹脂から植物樹脂への置換も考えており、併せて水性塗装を検討している」(二村常務)とし、常に新しい技術の習得にも取り組む姿勢を見せる。(青木)

20080319-6-1.JPG穂高工場正面

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