Web特集
2008年06月10日
塗替えリフォームの第2ラウンド始まる 直需ビジネスの課題とは(建築塗料・塗装特集2008)
「訪販が活発だった頃を戸建て塗替えの第1次ブームだったとするなら、今が第2次ブームではないか」と、ある業界関係者は口にする。塗装店の直接受注の動きが目立ち始めた最近の市場動向について言及したものだ。 住宅の塗替えメンテナンスがマーケットとして現出したのは今から十数年前。もちろん、塗替え工事自体は以前から行われていたが、それを"マーケット"として意識させたという意味合いにおいては訪販会社の存在が大きい。ペイントハウスや多摩塗装サービスなどの訪販会社が圧倒的な営業力を武器に一気に需要を顕在化、塗替えビジネスの市場性を露にした。
時代の趨勢で営業優先の販売スタイルは敬遠され勢いは衰えたが、「塗替えの必要性」に対する消費者の認識はそれ以前に比べ確実に高まった。加えて「品確法」「住生活基本法」など良質なストックの形成に向かう動きが加速する中で、住宅の維持メンテナンスに対する意識はますます高まっており、需要の伸張が期待されている。
このように形づくられてきた住宅塗替え市場で、塗装店による直需の動きが近年目立ってきた。しかも比較的小規模な、いわゆる町場の塗装店クラスの動きが活発だ。従来の下請けからの業態転換、あるいは当初から直需をターゲットに独立・創業するケースなど全国各地でその動きが広がっている。 こうした現象が表立ってきた背景として、下請けでの経営の限界ということももちろんあるが、それ以上にこうしたクラスの塗装店が施主に直接アプローチしやすい環境が整ってきたという点が大きい。
インターネットでの情報発信により、施主である消費者の情報網にエントリーしやすくなったのは事実。この手法で受注を伸ばしている塗装店も多い。 一方で、高度情報化社会の中で以前に比べ情報武装化している消費者の選択眼はことのほか厳しくなった。「大手ブランドであれば安心」という稚拙な消費パターンは影を潜め、「良質でリーズナブル」なものを自ら追い求めるようになってきた。塗替え工事であれば「大手に頼んでもやるのは下請け」は一般常識化し、むしろ「しっかりとした業者に直接頼みたい」との意識が根付き始めた。小規模な塗装店の直需の可能性が広がった背景には、こうした消費行動の変化が存在する。
すべての基本は現場から
今回、直需への動きを強めている塗装店を全国に取材したが、そのいずれにも共通しているのは『消費者起点』での考え方や行動。サービス業的な対応が徹底されており、従来の「ペンキ屋さん」のイメージとは一線を画している。
初期アプローチに関してはホームページによる吸引、新聞折込やチラシの配布など反響営業が主流で、特に奇抜な手法がとられているわけではない。ただし内容的には塗装情報の分かりやすさに加え信頼・安心感を得るため自社の見せ方に工夫を施す。またホームページに関して言えばSEO(検索エンジン最適化)の活用、チラシでは対象地域を詳細にリサーチし家ごとのパーソナルな情報を提供するなど、できる限りの範囲で自社アピールに努める。
とはいえ、これらの手法で飛びぬけた反響があるわけではない。営業の本番はこうして得られた数少ない現場から始まる。施主満足度の向上は基本中の基本。報告・連絡の徹底、コミュニケーション能力の向上など、施主との関係づくりにポイントを置く。
また説得力のある見積りに加え、高額スペックに導くためのストーリーを展開するしたたかさも併せ持つ。新しい材料や工法に関する知識と情報の深さは必要不可欠で、施主の財産である住宅の資産価値を高める意味合いにおいて説得力を持つ。
更に「現場は展示場」との認識から、足場、養生などの目立つ部分はもちろん、ネタ場、KY看板、喫煙場所、車の停め方など細部に至るまで近隣の目を意識した「現場パフォーマンス」を実践する。施主との信頼関係の構築は紹介リピートへ派生する可能性が高く、また現場を起点に周辺へアピールすることはエリアを深耕していく上で効果的。
豊富な営業資源を持たないこれら小規模塗装店にとって、現場こそが営業最前線であり、最大の効果を引き出すためにも消費者起点の態度を明示し、エリアとの信頼関係を醸成しておく必要があるのだ。
ハウスメーカーの塗替え戦略を探る
近年、ハウスメーカーによる塗替え需要の取り込みが鮮明化してきた。新築需要の減退から各社ともリフォーム事業を強化しているが、「塗装は差別化できる要素がない」(大手ハウスメーカー担当者)ことから、塗替えリフォームに関してはこれまであまり積極的ではなかった。
しかし自社建築ストックの生涯顧客化が重要な課題として浮上してくる中で「接触を図りやすい塗装と防蟻は入口」(同)との位置付けが鮮明化、その取り込みへと動き出した。
これまでは塗装スペックや業者は営業所など各出先の権限で決められるケースが主流であった。しかし全社的な方針として塗装リフォームが位置付けられる中で、瑕疵保証など、企業のコンプライアンスの面からも本社仕様への統一を図る動きを強めている。このため塗料メーカーを受け皿とし、全国の需要を一元的にカバーする動きが始まってきているのは周知の事実だ。
ハウスメーカーでも「自社建築物件といえどもリフォーム会社や塗装会社と相見積もりになるケースは多い。しかし図面や仕様など"家歴"を抑えているので、営業マンがよほどのヘマをしない限り落とすことはない」と絶対的な自信を持つ。加えて延長保証が担保されることから、ハウスメーカーOB顧客の切り崩しは困難さが伴う。
大手プレハブメーカー7社のストックは約260万戸。国内の戸建住宅の総ストック2,800万戸から見れば「10分の1にも満たない。工務店などが建てたその他大多数の市場が残されている」との論理をよく耳にする。しかしそう侮ってばかりはいられない。
ハウスメーカー各社がリフォーム事業を推進するに当たって「まずは自社施工物件を抑える」のは至上命題で、囲い込みを強化している。しかしそれらもいずれは飽和状態になる。当然、
自社OB客以外の一般リフォーム物件へ乗り出してくることは明らか。事実、ミサワホームグループや住友林業ハウテックなどは一般リフォームでの需要開発を積極化させている。
この構図が鮮明化してきたとき、競争のポイントとなるのは「魅力あるリフォームプラン」の提示と対応力だ。ハウスメーカーが塗装という単一リフォームだけで終わると考えるのは甘い。塗装を切り口として断熱や開口部の変更、屋根の吹き替えなど構造や躯体に絡む複合提案をしてくるのは間違いない。住宅の長寿命化がある意味国策として進められていく中で、耐震や高気密・高断熱などへのリフォーム対応が重要性を帯びてくる。従って直需対応を進めていく中で、塗装工事のみではいずれ限界がやってくる。