Web特集
2008年06月23日
建築塗料・塗装特集2008 塗装会社の取り組み①(山本塗装・徳竹塗装)
ハウスメーカーの仕事だけで年間700~800棟、付帯的な工事も含めると1,500件にも及ぶ。大和ハウスや積水ファミエスといった大手に何のコネもなく飛び込みで営業、今や協力会社として外すことのできない存在となった。
数多くの競合がいる中で受注件数を高めるために同社が取った第一の戦術は「ついで仕事での差別化」。「下地やスペックがある程度決まっている中では塗装工事自体に差別化の要素はない。当社では養生シートや足場、ネタ置き場、車の中や駐車の仕方など現場環境の整備、美化でアピールを行った」と説明する。
例えば養生シート。毎回クリーニングを施した新品同様のシートを現場ごとに張り巡らす。「お客様の大切な家を包ませていただくもの。汚れたシートは使えない」との考えを体現したものだ。こうした気配りのひとつひとつは施主の心にも届き、評判は最上級に。当然ハウスメーカーからの仕事が集中してくるようになる。 第二の戦術はクイックレスポンスとコスト対応力を可能とした「ベルトコンベヤー方式による段取り」。同社のように現場が立て込んでくると、納期を厳守するための手配、段取りが最重要課題となる。このためカーポートのアクリル板脱着などの雑工事専門業者、洗浄、足場業者と専属契約を結び数多くの現場をベルトコンベヤー式にクイック対応できる仕組みを構築。同時にこれらの協力業者に仕事量を約束することでコストを低減、「競合他社に当社ほどの対応力を持つところはない」と言い切るまでに差別化し、現在のポジションを獲得した。
経営者になるための塗装業
「目標についてまずゴールをイメージする。そうするとなすべきことが見えてくる。課題をひとつひとつステップを踏みながらクリアしていくことで目標が近づいてくる」というのが山本氏のアプローチ手法。
子供の頃から「経営者になる」と決めていた。そのためにはどの業界が適しているか。16歳のときに出した答えは「当時、市場としての成長が期待されていたリフォーム産業」。中でも「競争が少ない」塗装業は山本氏の目に魅力的に映った。経営者になるという目標を定め、そこにアプローチする手段として塗装業を選択する。
建物の構造など基本的な部分を抑えるためボード工事会社で修行した後、いよいよ塗装会社へ。ところが「見て覚えろの世界。2年間雑用ばかりで刷毛も握れない。これでは起業どころの話ではない」と23歳のときに独立。
常用の仕事で食いつなぐ傍ら、「チラシに電話をかけてもらうための10円玉を貼り付けて配るなど、仕事を獲得するための試行錯誤」の日々が続いた。
こうした経験を続ける中でひとつのことに気付いた。「職人気質の風潮が残っているためか、塗装業者はいずれもアピールが下手」ということ。逆にこの部分をつくことで、差別化になるのではないか。では何をアピールすればよいか。出した答えが「ついで仕事での差別化」だ。
元請工事をスタート、成功を確信
「今年は売上に占める元請受注の割合を50%以上に高める」ことを目標に置く。これまで下請比率がほぼ100%の同社にとって大胆な目標設定だ。元請けでのターゲットは工場や倉庫、社屋ビルなどの法人物件。ダイレクトメール、対象物件のマーケティングの他、地元工業団地組合へも加盟し人的なネットワークを構築するなど「1年前からつくり込みを行ってきた」と、目標に対するステップを踏んできた。
また、材料に関しては他との差別化による囲い込みを図るため「アステックペイント」を選択。法人に対する実際の営業は今年の1月からスタート、にもかかわらず工場屋根の遮熱塗装など数物件を既に獲得し、施工に入った。更に今後の見込み物件で、目標である対売上高50%に対してのめども立っているという。
法人に対する営業では「1回目にあいさつを行い、2回、3回、4回と訪問しクロージングに持っていく。受注のために必要なステップを踏んでいるだけで、特別なことをしているわけではない。平凡に適うものはない」とこともなげに言う。ただいつも意識しているのは「いくらハイテクの時代になろうと人間関係は永遠にローテク。かゆいところに手が届くよう誠心誠意尽くすだけ」とシンプルに語る。
このほど、地元の世界的企業・マブチモーターの社屋シーリング工事で、清水建設と競合し勝ち取った。「マブチさんが当社のような小さな企業と直接口座を開いてくれるだけでも大変なこと。加えて清水さんに競り勝ったのは当社の誠意が通じた証」と手放しに喜ぶ。地元の大企業での施工実績は法人営業でのステップボードになることは間違いない。
塗装業に従事して24年、先代から事業を継承し社長に就任したのが6年前。「よく言われるように『生きもしなければ死にもしない』下請け主体の事業展開。企業として、また経営者としての面白味がないばかりか、始めに予算ありきの世界では工程を"消す"ことが求められる場面も。倫理的、精神的にも限界を感じ、このままでは従業員も会社も幸せになれない」(徳竹氏)との鬱屈した思いを抱えていた。
そんなある日、請負い先の工務店に値段交渉に出向いた際、厳しい一言が。価格を認めてもらえないばかりか挙句の果てに『請負いとは初めから負けていること』と交渉の余地もない。このとき、「ただ屈するだけの下請けは一切やめ、直需、元請化を進める」ことを決意する。
同社が直需のターゲットとしたのは工場や倉庫などの企業物件。「直需というと一般的には住宅塗装における施主などB to Cをイメージしがちだが、当社の場合、いろいろな方から『B to Bの方が向いているのでは』とのアドバイスをいただき、企業物件に的を絞った」と説明する。
下請けで入っていたとはいえ、これまで手がけてきた数々の企業物件での実績とつながり、また青年会議所の活動を通じた異業種との交流など「当社がこれまでに構築してきた各方面へのパイプを自社特有の財産と位置付け、活用する方向」を目指した。
メインに据えたのは工場や倉庫の屋根を対象とした遮熱塗装。「企業のCSRの機運が高まる中でCO2の削減、職場環境の改善など環境を切り口としたアプローチは必ずモノになる」との目論見があったためだ。
これまでのパイプを手始めに、紹介や電話アポイントなどで企業の担当部署を訪問。「トップ営業ということもあり、とりあえず会っていただくことはできるが、この分野も今や競争が激しく、必ず他社との相見積りになる」と決して甘くはない。その中で「昨年は3,000万円クラスの物件が次々と決まり、今年もそれを上回る勢いで受注が見えている」と極めて好調な滑り出しを見せた。
キーワードは「環境」
「環境問題への深い造詣」「差別化材料の選択」「柔軟かつハイレベルな施工能力」に同社の強みは集約される。
まず環境問題への傾注。「地球環境の保全は未来を担う子どもたちに対する大人の責務」との考えから、ライフワークとして知識の吸収に努めてきた。「97年に開催された京都会議も聴きにいった」というほどの熱心さ。また最近では市内の小学校で総合学習の教壇にも立つなど、その知識は生半可ではない。
これが営業に生きた。「遮熱塗装の大きな目的は環境改善。従って環境問題全般への知識の深さをベースとしたソリューションの提案は説得力を高める。例えば環境対応専門の部門を持ち、環境問題のスペシャリストを相手にしなければならない大企業ほど得意とするところ」と自信を持つ。日本を代表する超大手企業での実績がそれを物語る。
材料に関してはオーストラリア製の「アステックペイント」を選択した。「超伸縮性による防水への信頼性、極めて広範囲な菌に対応する防カビ性など、遮熱プラスアルファの機能で幅広い業種に対して提案が行えるとともに、他社との差別化が鮮明にできる」ことが選択の理由。現在、全国で210社を数えるアステック加盟店のうち、スタートして1年足らずにも関わらず「東日本でナンバーワンの施工実績を獲得。優秀施工店に表彰された」ことを素直に喜ぶ。
そして、こうした営業面での優位性を支えるのが「なんでも屋」と表現する柔軟な施工能力だ。「設立以来、野丁場から町場までありとあらゆる仕事をこなしてきた。どのような現場にも対応できる柔軟性が当社の持ち味で、その点は職人も自信を持っている。遮熱塗装に関しても10年ほど前の黎明期に扱った経験がある。当時の材料はそれこそ"一歩進んで二歩さがる"といった難しさ(笑)。新しい材料を使いこなす吸収意欲や、現場での創意工夫が当社の強み」と誇らしげだ。
例えば、最近手がけた超大手企業の遮熱塗装でこんなケースがあった。打ち合わせの際に出された指示が『洗浄水を廃水として絶対に流すな』というもの。「雨水を使えばOKだが、水道水はNGだという。しかし対応せざるを得ない。このときは排水溝にポンプを設けて回収、また別の現場では樋に穴を開けて一箇所に集めてローリーで回収するなど臨機応変に対処した。ポイントは問題提起されたその場でアイデアと実行性をプレゼンできるかどうか。担当者が稟議を上げやすい環境を整えることが受注に直結する」と、さまざまな現場で培ってきた柔軟な対応力が発揮されたケースだ。
2次下請けや対等以下の下請けは一切やめると決め、実行した。しかし「不思議なことに仕事量は減っていない。もちろん直需案件の増加もあるが、それ以上に他からの案件が増えている」との実感がある。おそらく下請け100%の"いち塗装店"であった同社が、直需への取り組みを始めたことで企業カラーが鮮明化し、既存取引先との関係にも相乗効果をもたらしはじめたのではないか。
「元請け100%は目指さない。当社の今の陣容からいけば40%がベストバランスと考えている」と徳竹氏。そのベストの状態はそこまで近づいている。
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