Web特集
2008年06月23日
建築塗料・塗装特集2008 塗装会社の取り組み②(新栄塗装工業・戸川塗装工芸)
学業の傍ら、家業の手伝いで高校生のときから親しんでいた塗装業。平成11年、尊敬していた父親が亡くなり事業を継承することに。零細規模ながら「地域の工務店からの仕事など、父が遺してくれた仕事のつながりもあり、食べていく分には困らなかった」が、下請けという業態には疑問も。「結局、他力本願的に与えられた仕事をこなすだけ。そこに事業としての面白味はない。どうせやるからにはトコトンやりたい」との気持ちが次第に強くなっていった。
向かった先は、直需による住宅塗替え。ポスティングによる需要開発は労多くして実の少ないことを他の例で見聞していたため、同じ反響営業でもホームページによる吸引を計画、3年前に開設した。初年度は住宅や平屋の公営住宅など約500万円を受注。そして昨年はホームページからの引き合いが30件、受注金額は2,500万円にまで膨らんだ。
ホームページを作成するにあたり気をつけていることは、「私や職人の人柄、またそれを通じて映し出される会社柄みたいなものが伝わればと考えている。それと同時に、お客様にとってとかく不安の多い塗装工事について、劣化状況に応じた必要性、グレードによる価格の目安など分かりやすい解説に努めている。ある意味、消費者センター的なイメージで作成した」と顧客本位の姿勢をアピール。一方でSEO(検索エンジン最適化)にも多少のコストをかけ、ヒットしやすい環境にするなど工夫を凝らした。
ホームページは営業マンのいない同社にとって最適な初期アプローチ環境を実現したが、クロージングまではしてくれない。ここで「人柄」「会社柄」が生きてくる。
同社のホームページに寄せられた『お客様の声』を引用してみよう。『新栄塗装さんとのご縁はホームページを拝見したのがきっかけでした。数ある業者の中から決定した一番の理由は甲斐さんの『人』。その判断は初めから最後まで裏切られることはありませんでした。工事が完成し深く感じることは、塗装の技術や知識ももちろん大切ですが、何より一番大切なものは『人』だと感じています。こちらの要望に謙虚に対応していただくということが完成後の満足をもたらしてくれるものであり、それを新栄塗装の甲斐さんとスタッフの皆さんが実践してくれました』と感嘆をダイレクトに表している。
「当社の基本的な考え方はリフォーム業はサービス業だということ。この考えが徹底されていれば施工品質も現場でのマナーやお客様対応も自ずとついてくる。そして職人にとってはお客様からのダイレクトな評価がモチベーションにつながり、相乗効果を生み出す。これこそがお施主様直接受注の醍醐味」と言いきる。
トライアル&チェックを繰り返す
今年3月、ショールーム兼事務所を新たに開設した。「これまでは自宅が事務所を兼ねていたが、お客様に足を運んでいただきやすく落ち着いて打ち合わせのできるスペースが欲しかった」のが理由。それとともに、「地域商圏に対する新栄塗装の『顔』としての役割を担わせたい」との思惑がある。
ホームページよる受注は1本の柱に成長した。次のターゲットとして狙いを定めているのが地域商圏における塗替え需要の囲い込み。
まずは自社を中心とした半径500メートルの地域と、住宅が高密度に集積する飛び地を商圏として設定。「この圏内に戸建てが350軒あり、築年数やメンテナンス需要発生の可能性をデータ取りした結果、200軒ほどが対象になる。ここに対して当社の雰囲気が伝わるニュースレターをポスティングするとともに、更に細かいデータ取りを行い、家ごとにカスタマイズした提案でアプローチしていく」との戦略。
ショールームはその前線基地との役割。地域商圏で『新栄塗装ブランド』を構築するのが当面の目標だ。
甲斐氏は「いろいろと思い悩まないで、何事もまずやってみる」のが性分。トライアル&チェックを繰り返しかたちにしていくタイプだ。フッ素樹脂塗装「メイクアップショップ」への加盟、アステックペイントの取り扱い、超軽量タイル「リセラ(カルセラのシリーズ商品)」など、新規の材料やシステムを積極的に取り入れる。「当社の工事は高額スペックでの受注が多い」というように、いずれのアイテムもものにしつつある。「いろいろなセミナーや集まりに参加し、とにかく多くの知識や情報を吸収したい」が、企画、プレゼン、管理にと飛び回り「時間が取れない」のが目下の悩みだ。
メーカーばかりか仲間の塗装業者からも「分からないことは戸川に聞け」が合言葉になるほど同社は常に新しい領域に貪欲なまでに取り組んできた。そのチャレンジ精神の原点を戸川社長は「社名にあえて工芸をつけたのはクラフトマンというもの創りへのこだわり。施工の立場でメーカーと一緒になって製品を立ち上げていく、そんな気持ちで仕事を始めたから」と説明する。
実際、日本特殊塗料の遮熱塗料「パラサーモ」は同社を中心としてフィールドテスト、実績立ち上げがされ、メーカーとの信頼関係は強力だ。
仕事の幅も吹付、塗装、防水、更に3年前から発泡ウレタン断熱工事を加え、戸建住宅から工場、集合住宅までを取り込んでいる。
伸びを期待しているのが断熱工事。硬質ウレタンフォームを戸建住宅に適用し、「現状でトップレベルの高断熱・高気密化できる画期性がある」(同)と強調する。過去に各種断熱材を扱ってきた同社が最高水準の折り紙をつけるほどほれ込んだシステム。3年間かけて実績が立ち上がりつつある。
同システムの評価について戸川社長は「綿状のグラスウールマットを壁にはめ込んだり天井裏に敷き詰める施工では、それ自体が水分を吸収したり断熱材との隙間ができるなど問題がある」という。発泡ウレタンによる施工は高気密を実現するため、省エネ効果ばかりかウレタンフォームの接着力と住宅構造の一体化で耐震性も向上。施工性も高い。
同社の住宅リフォーム受注は年間40戸ほど。受注方法も口コミや紹介によるもので、営業活動は一切していない。そもそも同社には施工やエンジニアリングのプロはいても、営業専任者はいない。
それだけ高品質の施工に自信を持っており、ドロ沼の受注競争とは一線を画している。こだわりは技術力。戸建住宅の塗替えには高圧洗浄を行っている他、工事レベルを3段階に分けた見積を提案。また近隣への気配りも徹底し、施主に対し飛散の少ない施工法などを詳しく説明する。「住宅の場合はコミュニケーションが勝負。技術力をもろに出しても理解されないので、説明することに手を抜かない。むしろ納得してもらえるまで話し合っていく姿勢を全社的に実行している」という。
社員教育へのこだわりはミーティングにある。定期的なミーティングに加え、雨天を利用したミーティングを実施。"おかしい"と気付いた点をテーマにとことん話し合う。そのためテーマは多彩だ。施主から見たおかしいもあるだろうし、仕事の段取りのおかしさも話題になる。「大事なことはおかしいと感じたらそのままにしておかないこと」と戸川社長は考える。おかしいを放置しておくと社員のモラルが低下するばかりか、サービスの品質が落ちるからだ。
同社は西は袋井から東は三島までのエリアを中心に活動しているが、工事の多様さにも関わらず、ゼネコンの下請けは一切していない。17年前から脱ゼネコンを実現。当然その分工事量の安定という面では厳しさもあるが、「ゼネコンの下でやっていたら今は存在していないだろう」と語る。
脱ゼネコンのメリットは「仕事の質で勝負できる」とキッパリ。仕事の量よりも質の低下を恐れる。クライアントの信頼が崩れるからだ。
しかし市場環境は厳しく、同社もここ1‐2年は業績が横ばい。収益面でもトントンの状況という。
こうした状況を突破するのも新しい分野への挑戦。他社ができない難しい工事へのチャレンジを続けている。その一例がコンクリート防食工事。特殊なプラスチックを積層させるシステムで高速道路のノリ面の防食性を高める。全国的に見ても実績例の少ないパイオニア的取り組み。施工資格者も少ない中で、同社には3名の有資格者がいる。当然責任施工工事だ。
もうひとつ工芸(クラフト)に込めた思いを突破口としたいと考えている。クラフトには色彩が絡まり「見て美しい」と感じさせる仕事をしていきたいと考えている。
技術力については社員の自覚が高く、自主的にチャレンジする風土があり、どこにも負けない自信がある。課題は技術力をもっと幅広く社会に提供できるようにしていく組織力にある。幸い息子がその辺を考えてくれているので、焦らずじっくりと仕事で勝負していく」と戸川社長は笑った。