Web特集
2008年06月23日
建築塗料・塗装特集2008 塗装会社の取り組み③(太平堂塗装・五日市塗装工業)
「地域で最も信頼される塗装業者になるには、地域活動が重要」と佐藤社長は話す。地域のボランティア活動には積極的に参加し、塗装奉仕活動も毎年続けてきた。地元に根を張ることで会社の認知度を確立した。
その一方で企業努力として注力してきたのが社員教育。同社は戸建塗替えでは一切外注していない。すべて自社社員で施工からアフターまでを完結させる。「外注すると手抜きされるかもといった以前の問題で、『施工は太平堂に発注したのに施工は別の業者』というやり方は信頼性を損ねる」(同)というのが理由。契約には社長自らが出向き、施工について詳しく説明し、オール太平堂のスタッフで仕事をさせてもらう旨を伝えることにしている。
このためショールームを作るなどの必要性を全く感じていない。「施工の現場そのものがショールームであり、我々の売っている商品」との考えを全社員に徹底させている。
社員教育は「あいさつに始まりあいさつに終わる」を励行。施工を始めるに当たり近隣への「ご迷惑をおかけしますあいさつ」は当然のことながら、こだわっているのは整理整頓。施工中に出る残材などは毎日持ち帰る。更にできるようであまりやっていない清掃サービス。施主の周辺までの清掃を仕事に入る前に毎日実行している。
整理整頓は会社のネタ場でも行われ、清掃は同じ。取材当日は社長自らがクリーン度を自慢するほど。汚れた塗料缶や副資材を見ることはできない。スッキリと収容されたネタ場はまるで整理整頓したばかりの状態であった。
しかし一切営業なしで年間60‐70棟の実績を上げることは可能なのか、そんな疑問がわく。質問をぶつけると佐藤社長は「ターゲット顧客を絞り込むことによって口コミ効果で紹介受注につながっていく」とこともなげに言う。紹介受注なので成約率が非常に高いばかりでなく、相見積による値引き合戦に陥ることもない。
そのターゲットというのが旧・公社社員、教員を含む公務員の退職者。「こうした人たちは生活に余裕と時間を持っている。塗替えやリフォームについてもコストより安心感を求めているので、じっくりと相談しながら施工に持っていける」とメリットを強調する。更に教員などは退職後もヨコの連絡関係があり、良い工事をすれば自ずと口コミで伝わる効果があるという。
東北地域で施工できる時期は約半年と限定されるが、4月の段階で既に20件以上の受注を抱えている。施工のスケジュールは例外的なケース以外は太平堂のペースで調整。「娘が結婚するので早くリフォームしたい」といった例外は優先している。
施工でのクレーム対策は事前対策がポイント。「2‐3年でクレームが発生することが一番恐い」と佐藤氏。このため使う塗料は関西ペイント製品に限定している他、部位ごとの耐久性についての事前の説明に怠りがない。一応の目安として外壁は10年間、木部は5年間と伝える。しかし問題なのは感情的な行き違いによるクレーム。この対策は気配りしかないという。植栽を丁寧に扱う、ものの移動には常に一声かけるなど。「こちら側が気配りした分、施主も工事への理解を深めてくれる」と話す。
社員のモラルアップについても平均30‐40歳代社員のやる気を引き出す努力をしている。若くても職長に昇進させ、責任ある仕事を自覚させることが成長につながるからだ。現場は職長の能力次第との面が強い。
息子の恭平氏が大手製造業を退職し入社して5年。現在、工事課を担当し後継者の心配がなくなり、佐藤社長は「数年後にはバトンタッチしたい。若い感覚でリフォーム事業を活性化してもらいたい」と考えている。
その恭平氏は新しいチャレンジをこの春から開始した。パソコンを駆使して広報誌「太平堂ニュース」を創刊したのだ。狙いはOB顧客へのPRにある。
また同社の目指すリフォーム事業拡大のきっかけ作りをしたいとの思いもある。創刊号ではユニットバス、システムキッチンリフォームの実績紹介、断熱改修情報、お客様の声とバラエティーに富む。「もっと施主の気持ちに近づきたい。塗装の仕事を中核として周辺のリフォームまでを取り込むには信頼性がベースになる。この冊子もその一環」と恭平氏は静かな情熱を込めて語る。
「焦っても仕方がない。良い仕事にこだわる姿勢を維持していけば、先行きはそれほど心配していない」(佐藤社長)と言い切る。
「以前は営業から打ち合わせ、段取り、管理に至るまですべての業務を自分が担っていたため、社員は完全な指示待ち人間になっていた。この関係を変えていく必要があった」と晴山氏は述懐する。 下請け主体の業態ではどうしても"できる社長"に元請けからの仕事が集中しがち。しかし折からの市況の悪化で「下請けへの限界」を感じる一方で、社長一極集中から「社員の能力を高め会社全体で成長する方向を目指さなければこれからの時代を生き残れない」との危機感を強くした。 以来、「現業的な業務からは一切離れ、社員が自主的、主体的に仕事に取り組める環境づくり」に専心する。晴山氏はこのことを「社長から経営者への転身」と表現する。
同時に、将来にわたる自立的な成長を期するため、下請けから元請けへのシフトチェンジを強力に推進する。向かった先は戸建住宅の塗替えマーケット。まず始めたのが「盛岡では最初」となる塗装のパッケージ化で、屋根コース、外壁コース、まるごとコースなどをエコノミー、レギュラー、高耐久とグレード別にパック化し「ある程度リーズナブルな」価格を表示。折込チラシで1回3万部、4月‐11月の需要期に毎月配布して告知した。年間140万円ほどの予算をつぎ込むが、ここからの反響で年間20件ほどのリターンがあるという。この地域では誰もしていなかった『パック化』が市場に刺激を与え、物件の獲得、認知度の向上で大いに役立った。
もちろんこれだけで食っていけるわけではない。受注した物件を基点に近隣営業、紹介営業などに派生させてボリュームを膨らませていく戦略。ここで「総合力を高めなければならない」と傾注した社員のモチベーションアップへの取り組みが生きてくる。
社長がトイレ掃除
社長一極集中から社員への仕事分担は当初、「仕事量が増え責任も重くなるわけだから当然不満が出る」。晴山氏はここで硬軟をうまく使い分け、社員をリードする。
硬の部分は『トイレ掃除』。毎日、自ら率先して磨き上げるようにトイレを掃除。当初は「社長がすればしないわけにはいかない」と渋々であった社員もトイレ掃除を続けるうちに変化が表れてきた。「トイレ掃除は自己改善を図る効果的な方法で、5Sの基本。これを続けることでお客様へのあいさつのしかたや現場での振舞い、仕事の進め方など目に見えて変わってきた」と説明する。
一方、軟の部分はインセンティブの活用。これまで指示待ちであった職長に対して工程の打ち合わせ、資材の発注、現場管理など営業が受注した後の段取りからフィニッシュまでのすべての責任を持たせた。
代わりに提示したのがインセンティブ制度。現場ごとで利益や施主からの評価を精査し、職長を頭としたグループの評価に反映させる手法。これにより、従来は与えられた仕事をただこなすだけで「無駄の多かった」現場サイドが「発注ミスやクレームが激減し、利益が一気に向上した。また、改善を行うためのグループミーティングを頻繁に開くなど、主体性と責任感が明確に見て取れるようになった」と劇的な効果をもたらした。
会社の雰囲気が変わってきたことでアイデアも湧き出すようになってきた。例えば、危険予知や工事予定などを提示するために現場に設置する看板。営業会議の際に「現場の展示場化を進めるためにラティスを用いてはどうか」との意見が出され、即実行。施主や近隣での評判も上々だ。
こうした取り組みのひとつひとつが会社を確実に変えていった。このことは即客の評価へとつながり、地域市場での信頼に反映。紹介リピートや現場近隣からの仕事依頼が増加し、ベースを膨らませていった。また現在、ハウスメーカーの仕事も手がけているが、同社から取りにいったのではなく、すべて先方からの依頼。「きちんとした利益を確保できる条件」で請けている。
地域でブランド確立を
同社の年商は現在2億5,000万円。ピークの頃は3億円ほどを計上していたが、脱下請化を進める中で2億円を切るまで減少するなど痛みも伴った。しかし「下請けの頃に比べ利益は格段に改善された」と方向性を確信している。
晴山社長の目標は「岩手県で五日市ブランドを構築すること」と明確だ。「当社が始めた塗装のパック化をその後他社でも次々と採用。ある意味、当社がベンチマークとなっている」が、気にはかけない。「反対の見方をすると、地域市場での存在感が高まっている証であり、ブランド化を後押しすることにもつながる」と鷹揚に答える。
現在、年商5億円を目標とした中期経営計画を進めている。その柱になるのが多店舗展開。「盛岡だけでは難しいが、岩手全域を対象とすれば不可能な数字ではない。当地で確立したビジネスモデルを他地域で展開し、拡大を図っていく。そのための人選にも入っている」と前を見据える。