コーティングメディア・オンライン独自のコンテンツをお届けします。新聞・雑誌の定期購読、単行本ご購入承り中!

Last Updated: 2008年10月21日 08:57  RSS 2.0
キーワードを入力してサイト内のニュースを検索できます。

Web特集

2008年07月16日

シリーズ: 揺れるライン塗装

揺れるライン塗装№146 春日井金属塗装所 6ライン・11ブースで少量多品種に対応 


春日井金属塗装所(愛知県春日井市、代表取締役社長・大久保清司氏)は少量多品種への対応に注力している。多くのユーザーを抱える同社では、1つの塗装ラインに対して複数の塗装ブースを配置し、製品や色数に柔軟に対応した塗装ラインで即納体制を整える。更に環境配慮の社会的高まりをとらえ、積極的に粉体塗装を提案している同社の塗装ラインを取材した。

20080702-6-2.JPG 
大久保清司社長

同社は溶剤焼付塗装及び粉体塗装を行っている。溶剤塗装はメラミン塗装、アクリル塗装を行い、電機機械関連の製品を主としている。一方、粉体塗装は工業用ミシン、工業用掃除機、換気扇部品、郵便受け(写真)などのエクステリア関連などを受注。粉体塗料の樹脂系はポリエステル、エポキシ/ポリエステル、エポキシを使用している。
塗装する製品数が多く使用する塗料品種や色数もさまざま。取引しているユーザーの数も「常時60‐70社はある。それでも少なくなった方で、一時期は100社ほどあった」(大久保社長)というほど多種多様だ。少量多品種体制は、大久保社長が数年前から感じていた状況から自然と形になった。


「こちらの交渉力不足もあるが、大量生産品では価格が削られていく一方になってしまう。たとえ価格対応しても、メーカーの工場内製化や生産拠点の海外移転などで受注はなくなる恐れがある。数が多くなれば、その数を失ったときのリスクも大きくなってしまう。そうしたリスクをなくすためにも5‐6年前から少量多品種受注への体制にシフトしてきた」と大久保社長は述べる。それと同時に塗装ラインにおいて自動機をなくし、職人の育成に力を注いできたという。3年前からは愛知県工業塗装協同組合にも入会し、情報収集や技術向上に役立てている。


20080702-6-3.jpg 
郵便受けを粉体塗装

複数ブースで柔軟性を持たせる同社では6つの塗装ラインを編成している。

粉体塗装専用が2ライン、溶剤塗装専用が1ラインあり、あとの3ラインは粉体と溶剤のどちらでも可能な共用ライン設計となっている。また、塗装ブースの合計は11ブース。「1つのラインに対して1つのブースだと2色の塗装が同時にできない。今は1つのラインに2‐3ブースあるが、極端なことを言えば、1つのラインに5つの独立したブースを配置したラインがあっても良い」と大久保社長。


20080702-6-4.JPG 
粉体塗装ライン、大型サイズにも対応

粉体塗装ラインの1つは塗装ブースが3つ配置されている。このラインでは平均で1日2‐3色の色替えがあり、色替え回数を減らすために複数の塗装ブースを活用。2つのブースでそれぞれの色を塗装し、残りの1つは補正塗装を行っている。
以前は自動機で塗装していたが、塗装種類が増えたため今では手吹き塗装で行っており、補正ブース以外の2ブースでは塗料の回収も行っている。焼付温度は210℃×15分の設定。また、このラインは大型物の塗装も可能で、高さ1,800㎜まで、厚みがなければ2,000㎜までのサイズに対応できる。


もう1つの粉体塗装ラインは1ライン2ブースの配置。こちらも手吹き塗装を行っており、「塗装スピードを速めたい」との思いからこうした設備にしている。1コート仕上げで吹いた粉体塗料は回収している。焼付温度は180‐200℃×20分。現在のラインスピードは1.5~2.0m/min。
一方、5月に新設した溶剤塗装ラインでは三菱重工製のロボット塗装機を使用している。このラインにはラインから離れた位置に塗装ブースを配置。流れてきたワークをいったん外して塗装する流れだ。塗装ブースは2つあり、1つがロボット塗装でもう1つが手吹き塗装を行っている。


20080702-6-5.JPG 
粉体塗装ライン、2つのブース(右と左奥)で効率化を図る

このラインではタンク、ポンプ、換気扇、ガスメーターなどを塗装。それぞれのティーチングを行っているが、「10年前からロボットを使用しており、そのときと比べればティーチングも楽になったし、本体に記憶できるので問題なく作業ができている。今後はもう1つロボットを配備してもっと流れをスムーズにしたい」として、将来的には少量多品種におけるロボット塗装での自動化を見据えている。


20<strong>080702-6-6.JPG 
塗装ロボットと手吹きを併用

前処理施設を完備

前処理は、カチオン電着は外注に出しているが、それ以外はディッピング形式の自社設備で行っている。
工程はアルカリ脱脂‐水洗‐表面調整‐リン酸亜鉛被膜処理‐水洗‐水洗‐湯洗‐熱風乾燥の流れ。現在はディッピング形式だがシャワー形式も見据える。各ラインでの磨き工程に手間がかかっており、シャワー形式であればその手間が省けるというのが理由だ。
また、水洗は水道水を使用しているが純水洗も検討している。「今のところ品質に問題はないが、バラツキがあるのも事実。優れた品質を提供するためには100個に1個もそうした不良が出てはいけない」と大久保社長。


20080702-6-7.JPG 
ディッピング式前処理設備

また、環境配慮には排水処理装置も必須設備だ。同社の排水の流れはブースの水が、反応槽、pH調整槽を通った後に高速凝集沈殿槽「スイレイシック(商品名)」でスラッジと処理水に分けられる。塗料スラッジは産廃として廃棄し、処理水は放流している。


20080702-6-8.JPG 
廃水処理装置

品質管理の徹底

品質管理も同社の注力ポイントだ。特に課題となっているのが、ゴミ・ブツ問題。そうしたゴミ・ブツ問題には人員による対策を立てている。各ラインに1人が塗装後に工程内検査を行っている。その後、出荷検査として最後に5名(社員1人+パート4人)で品質検査を行っている。不良率としては、工程内検査で約10%、出荷検査で約3%となっている。以前は出荷検査での不良率の数値が高かったが、工程内検査を厳しくしたことで、数値も減少し全体の不良率も減少してきている。


不良率を減らすためには、塗装職人のレベルを上げることや塗料・設備の扱い方を向上させることが重要との考えだが、「品質の基準をどこに置くかが課題」と大久保社長。基準を高く設定すればユーザーが喜ぶことは分かっていても現状の設備環境を踏まえる必要があるとの考え。そのため「検査に頼るしかない」(大久保社長)のが現状。
同社の従業員は35名。その内、検査は11名で行っている。各ラインの工程内検査が6名、出荷検査が5名の配置だ。「出荷検査の人員をもっと増やして管理を強化したい」(大久保社長)。もともと自動車部品を扱ったことで品質管理の徹底を実施してきたが、品質向上ニーズは高まる一方。そのため、高品質を維持できる力がそのまま企業の力となっており、同社でも品質向上は至上命題だ。


20080702-6-9.JPG 
出荷検査で品質管理を徹底

少量多品種への対応と粉体塗装への注力が同社の方向性の柱となっている。現在、粉体塗料は久保孝ペイント、大日本塗料、日本ペイントなどいくつかのメーカーのものを使用。「塗料の指定の場合も多いが、そうでない場合は色数が多いユーザーにはタイガードライラックを勧めたり、性能を説明したりして、ユーザーの要求をしっかりと見極めて提案する」との方針。同社では新規顧客には「ほぼ100%提案している」というほど、粉体塗装を積極的に勧めており、環境意識の高まりを追い風に今後も展開を強化していく。


20080702-6-10.JPG 
道路を挟んだ敷地に工場がある

大久保社長は「バブル崩壊以降は規模拡大の考えはなかった。ただこれでは従業員の士気も上がらない。そのため昨年からは増収増益という目標を明確にして事業を展開している。新規顧客を獲得するにも、コスト管理が重要になっている。利益やコストなどを明確にした上で顧客とも交渉していく。少量多品種での短納期を1つの武器として営業展開をしていく」と述べ、成長戦略は明確だ。(桜井)

20080702-6-1.JPG 

事務所外観

« 前のWeb特集Web特集一覧次のWeb特集 »

Web特集|ニュース|コラム|インタビュー|データルーム|イベント情報|セミナー情報|リンクネットワーク